幕間 比較対象が悪すぎ問題
悠馬君とノアは頭一つ違う設定です。
ハミルトン邸・廊下。
午前中。
悠馬は、資料を片手に歩いていた。
背後から、どたどたと足音。
「兄さん!」
振り向く間もなく、影が覆いかぶさる。
「……ノア」
でかい。
とにかく、でかい。
肩幅。
身長。
体格。
全部が、
悠馬の“上位互換”。
「兄さん、この資料って――」
ノアが屈む。
屈んでも、目線が同じ。
「……」
悠馬は、何も言わずに資料を指さした。
「ここ?」
「そう!」
ノアは、ぱっと顔を明るくする。
「さすが兄さん!」
その瞬間。
通りすがりの新人使用人が、ぽつりと呟いた。
「……あれ?どっちが年上?」
悠馬、無言。
ノア、即答。
「兄さんです!」
「へぇ~、、、逆かと思いました」
逆。
どこが。
悠馬は、内心で深く息を吐いた。
昼。
食堂。
向かいに座るノアが、皿を持ち上げる。
「兄さん、これ食べる?」
「……お前の皿だろ」
「俺、もうお腹いっぱい」
その皿には、悠馬の倍の量。
「……」
悠馬は、黙って受け取った。
通りすがりの職員が、また言う。
「弟さん、優しいですね」
「……弟ではない」
聞こえていない。
午後。
応接室。
ソファに並んで座る二人。
ノアが、無意識に悠馬の肩に肘を置く。
自然。
あまりにも自然。
「……降ろせ」
「え?重い?」
「重い以前の問題だ」
肘は降りない。
むしろ、寄ってくる。
遠目で見ていた凛が、ぼそっと言う。
「……体格差、完全にバグってる」
蘭が続ける。
「兄弟って言われても」
「信じない人、多そう」
「というか」
凛、真顔。
「悠馬兄さん、ノアのおさがり着てない?」
悠馬、ぴたりと止まる。
「……着ていない」
「え」
「サイズ感が」
「完全に」
「違う」
ノアが、無邪気に言った。
「兄さん、これ似合うと思って」
「……」
その瞬間。
ジェシカの声。
「悠馬」
「はい」
「一つ聞いていい?」
「何でしょう」
「あなた、自分が小柄だって自覚ある?」
即答。
「あります」
「……あるのに何でノア基準で生活してるの?」
ぐさ。
「筋トレも」
菜摘が静かに追撃。
「ノアと同じメニューやったでしょう」
「……少し」
「三日、動けなかったわよね」
「……」
拓海が、笑いを堪えながら言う。
「悠馬、人には向き不向きがある」
「……知っています」
「じゃあ何でやった」
「……悔しかった」
全員、沈黙。
その空気を、ノアが壊す。
「兄さん!」
「何だ」
「小さくても頭いいから!
俺、尊敬してる!」
満面の笑み。
悪意ゼロ。
悠馬は、天井を仰いだ。
「……比較対象が悪すぎる」
その日の夜。
悠馬は、一人で胃薬を飲みながら呟いた。
「……俺の人生」
「難易度設定」
「おかしくないか」
遠くで。
「兄さん、明日も一緒に現場行こう!」
「……」
返事は、しなかった。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




