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第七部 第八話 悠馬、帰る前に、言葉にならないもの

日本編はもっと気軽になるはずでした。どうしてこうなった?うちの子たち勝手に悩むし勝手に好きなことする。。。

~帰国前夜~


ー言葉にならなかったものー


日本に来てから、ずっと妙だった。


大きな問題が起きたわけじゃない。

判断を誤ったわけでもない。

仕事は、想定の範囲で進み、

数字も、現場も、説明がつく。


なのに。


何かがずれている。


視察の合間、ノアが現場と話している横で、

自分はそれを一歩引いた位置から見ていた。


声のトーン。

間の取り方。

「大丈夫です」という言葉の使われ方。


理解はできる。

意味も分かる。


でも、どこかで引っかかる。


それが何なのか、言葉にできない。

ノアは、よく拾っていた。


雑談の中の本音。

場の空気。

笑いながらこぼれる、

半分本気の愚痴。


「ここ、いいな」


ノアはそう言った。


「ちゃんと、人がいる感じがする」


それも、正しい。


自分も同じものを見ていたはずだ。だが、自分が見ていたのは、


ーーーその声が、どこまで届いているのか。

ーーー拾われなかった声は、どこに沈んでいるのか。


ノアが前を向いて進む分、自分は、足元を見てしまう。

それは、臆病だからではない。


仕事として、当然の確認だ。


……そう思っている。


けれど、その確認が、

誰かにとっては「冷たい」らしい。


その感覚が、まだ自分には分からない。


分からないことが、今は一番、引っかかっている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


帰国前夜。


ホテルの部屋は静かで、荷物はすでにまとめ終わっていた。

窓の外には、日本の夜が広がっている。


ノアはソファに座り、スマホをいじっていた。


機嫌がいい。

それが、はっきり分かる。


「……明日だな」


自分が言うと、ノアは顔を上げた。


「ああ。早いな」


その言葉に、一瞬、引っかかる。

早い。


自分には、

早かったとも、

遅かったとも言えない。


ただ、”重かった”


「日本、どうだった?」


ノアが聞く


昼間の「楽しかった?」とは少し違う問いだった。

答えを待っている。


「……仕事としては、成立している」


慎重に言葉を選ぶ。


「市場も、現場も、予測の範囲内だ」


 ノアは、少しだけ笑った。


「相変わらずだな。俺は、結構好きだったけど」


 好き。


その言葉は、軽い。

だが、嘘ではない。


「人の距離、近いし」

「話せば返ってくるし」

「現場が、生きてる感じがした」


全部、正しい。


自分も、同じ景色を見ていた。

ただ。

同じ“受け取り方”では、なかった。


「……ノア」


名前を呼ぶ。


ノアは、すぐにこちらを見る。


「何だ」


言葉を探す。

だが、違和感はまだ、形を持たない。


輪郭がないまま、胸の奥に沈んでいる。


「……いや、、、何でもない」


ノアは一瞬こちらを見て、

それ以上は踏み込まなかった。


「そっか」


それで終わる。


今の二人の距離は、それが限界だ。

ノアは、次を見ている。


自分は、まだ“今”を処理している。


どちらが正しいかは、分からない。


分からないまま、時間だけが進む。


「兄さん」


ノアが、もう一度言った。


「俺さ」


一拍。


「また日本、来たいと思う」


その言葉は、未来を向いている。

自分は、即答できなかった。


「……そうだな」


否定はしない。

だが、同意とも言えない。


ノアは、それで満足したようだった。


部屋に、再び静けさが落ちる。


この違和感は、まだ共有されていない。


言葉にもなっていない。

だが、確実にここにある。


同じ場所に立って、違う温度で景色を見る。

それを、問題と呼ぶには、まだ早い。


だが、無視できるほど小さくもない。


明日、日本を発つ。


この言葉にならなかったものを、置いていくのか。

それとも、連れて帰るのか。


まだ、決めていなかった。



感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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