第七部 第四話 悠馬、視察二日目/好意的な誤解
結局こうなるというね。/(^o^)\
二日目の現場は、前日よりも人が多かった。
関連会社。
設計側。
運営予定の管理部門。
立場も、年齢も、ばらばらだ。
中心に立つのは、今日もノアだった。
「こちらが想定動線です」
図面を示しながら、英語と日本語を交えて説明する。
完璧ではない。だが、誠実だ。
質問が出る。
「この部分、コスト的に――」
ノアが一瞬こちらを見る。
確認の視線。
軽く頷く。
それだけで、ノアは続きを話す。
自分は、何も言わない。
今日は、言う役ではない。
それを、現場はどう受け取ったのだろう。
「……佐伯さん」
休憩中、声をかけられた。
年配の男性。現地調整を長くやってきた人間だ。
「はい」
「落ち着いてますね」
一瞬、意味を測る。
「現場を、ちゃんと信頼してくださっている」
好意だ。
否定する理由は、ない。
「ありがとうございます」
それだけ返す。
相手は満足そうに頷いた。
「ハミルトングループの方って、もっと口を出すのかと思っていました」
「……そうですか」
「いえ、今の方がずっとやりやすい」
その言葉に、小さな違和感が残る。
やりやすい、という評価。
それは、判断していないから、だ。
だが、その説明をする場ではない。
ノアが戻ってくる。
「兄さん、さっきの件だけど」
「後で」
「分かった」
短い会話。
それを見ていた別の人間が、小声で言う。
「……ああいう距離感、いいですよね」
「ですよね」
「トップが前に出過ぎない」
「現場任せ」
評価は、どんどん固まっていく。
自分は、訂正しない。
なぜなら、今は間違っていないからだ。
でも。
『常にそうだと、思われるのは違う』
その境界を、誰も測ろうとしない。
昼過ぎ。
簡単なまとめが行われる。
ノアが締める。
拍手。
評価。
「若いのに、しっかりしてる」
「判断が早い」
「柔軟だ」
ノアは少し照れたように、頭を下げた。
自分は、その少し後ろに立っている。
視線が、こちらにも向く。
だが、それは、
“補佐役”を見る目だ。
穏やかで、物分かりのいい。
”判断しない人間”を見る目。
それが、好意的であればあるほど、胸の奥に引っかかる。
視察が終わり、車に乗る。
ノアが、少し考え込んだ顔で言った。
「……兄さん」
「何だ」
「今日の評価、どう思う?」
即答しなかった。
「……悪くはない」
「でも?」
ノアは、ちゃんと続きを待つ。
「誤解が含まれている」
「……どの辺?」
「全部だ」
ノアは、言葉に詰まった。
「……」
車内が静かになる。
「問題は」
続ける。
「悪意がないことだ。だから、誰も修正しようとしない」
ノアは、少し視線を落とした。
「……俺が、拾うべき声?」
「拾え」
即答した。
「ただし。今じゃない」
ノアは、小さく頷いた。
その表情に、少しだけ不安が混じっている。
誤解は、善意から生まれる。
だから、切れない。
説明すれば、壊れる。
黙れば、固まる。
今日生まれたのは、その“固まり始め”だった。
まだ、誰も困っていない。
だから、誰も気づかない。
しかし。
このまま進めば、必ずどこかで、”噛み合わなくなる。”
それだけは、はっきりしていた。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




