第七部 第三話 悠馬、視察初日
保管しているフォルダがごちゃごちゃ過ぎて最近アップロードのたびに頭抱えてます。整理整頓は大事ですね・・・
初日の現場は、東京の外れにある再開発地区だった。
ホテル予定地。
周囲はまだ工事中で、仮囲いと重機が並んでいる。
空気は、英国の現場よりもざらついている。
でも、嫌いではない。
「では、本日は――」
説明を始めたのは、ノアだった。
背が高く、姿勢がいい。
スーツも、日本の現場では少しだけ目立つ。
だけど、違和感はない。
むしろ。
“責任者”に見える。
それが、新鮮だった。
自分は、その半歩後ろに立つ。
資料を持ち、必要があれば補足する。
立場としては、オブザーバー。
もしくは通訳、
という扱い。
「こちらは――」
ノアが説明を続ける。
日本語は、流暢ではない。
だが、要点は押さえている。
分からない部分は、こちらを見る。
その都度、短く補足する。
「……なるほど」
現場の担当者が頷く。
視線は、ほとんどノアに向いている。
自分には、ちらりとしか来ない。
それが、少し可笑しかった。
ーーー英国では、逆だった。
名前を言えば、空気が変わる。
発言すれば、全員が黙る。
でも、ここでは違う。
誰も、自分を“佐伯悠馬”として見ていない。
ただの、付き添い。
小柄で、眼鏡をかけた、少し若く見える男。
腹が立たないかと聞かれれば、立つ。
正直に言えば。
ーーー少し、立つ。
だけど。
それ以上に、肩が軽い。
判断を急がなくていい。
全体を背負っていない。
責任の最前線に、自分はいない。
それが、不思議と楽だった。
途中、名刺交換の場面になった。
ノアが先に名乗る。
「ノア・ハミルトンです」
相手が頷き、次にこちらを見る。
「……こちらは?」
一瞬、間が空く。
「佐伯です」
そう名乗ると、相手の表情が、ほんの一瞬だけ変わった。
「あ……」
そして、少しだけ丁寧になる。
どうやら、上層部には伝わっているらしい。
名前だけは。
だが、それ以上ではない。
警戒も、過剰な期待もない。
”好意的な距離感。”
それが、今の自分にはちょうどよかった。
現場を歩く。
足元の感触。
風の向き。
音の反響。
判断したい点は、いくつもある。
だが、口を出さない。
今日は、ノアの現場だ。
自分は、見る役。
ノアが、説明の合間にこちらを見る。
確認の視線。
軽く頷く。
それだけで、十分だ。
昼休憩。
簡素な会議室で、弁当が配られる。
ノアが、少し困った顔をした。
「……これ、何て読む?」
「唐揚げだ」
「……うまいな」
素直な感想。
現場の空気が、少し和らぐ。
その様子を見ながら、思う。
ーーーここでは、自分は“判断する人間”ではない。
それが、新鮮で。
少し、悔しくて。
そして、どこか安心する。
英国では、もう戻れない立場だ。
だが、ここでは。
まだ、何者でもない。
その状態を、悪くないと思っている自分に、少し驚いた。
視察初日は、大きな問題もなく終わった。
ノアは、疲れた様子だったが、充実しているように見えた。
「……どうだった?」
帰りの車で、ノアが聞いてくる。
「悪くない」
それだけ答える。
”本音”だった。
今日は、判断しなかった。
決めなかった。
ただ、見ていた。
それができたことが、何よりだった。
日本の初日は、静かに過ぎていった。
だけど。
この“立ち位置”が、どこまで許されるのか。
それは、まだ分からない。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




