第六部 第七話 悠馬、正しさは残り、違和感だけが増える
次、幕間です。ふぅ・・・
ノアが前に出ている。
それは、オフィス全体の空気からも分かった。
会議の進行。
現場とのやり取り。
報告の順番。
少しずつ、自分の名前が後ろに下がっている。
意図した通りだ。
だから、問題はない――はずだった。
だが。
端末に並ぶ数字を見て、ふと、首を傾げる。
改善している。
遅延は出ていない。
それなのに。
“余白”が、減っている。
以前は、途中で拾えていた小さな揺れが、
そのまま通過している。
致命的ではない。ただ、疲れる。
ノアの判断は、丁寧だ。
現場の声を拾い、確認し、合意を取る。
だから、時間がかかる。
それ自体は、悪くない。
むしろ、健全だ。
問題はーーーその後だ。
ノアが前に立つことで、判断の“意味”が少し変わる。
ノアの言葉は、彼個人のものではなく、
”佐伯体制の代弁”として受け取られる。
結果として。
同じ言葉でも、重くなる。
鋭くなる。
刃に近づく。
それを、ノア自身がどこまで自覚しているか。
分からない。
ーーーいや。
分かっていない。
だからこそ、自分は口を出さない。
ここで修正すれば、また一人になる。
それは、選ばなかった未来だ。
だから、裏で整える。
判断の速度を上げ、
詰まりそうな部分だけ
静かに削る。
ノアの進行を壊さない範囲で。
だが。
そのやり方が、現場からどう見えるか。
考えないわけではない。
ただ、
結論が出ない。
冷たい?
説明不足?
いや、説明はしている。
ただ、”全員に同じ速度で届いていない”。
それは、自分の落ち度なのか。
努力の差なのか。
考えているうちに、ふと思い出す。
ノアが、以前言っていた言葉。
> 「兄さんが見えてるものを、
> 皆が同じように見れるわけじゃない」
あの時、理解したつもりだった。
だから、ノアを前に出した。
でも。
“見えない”ということの本当の意味を、
自分はまだ掴めていないのかもしれない。
報告書を閉じ、椅子にもたれる。
これは、仕事の問題ではない。
だが、仕事から切り離すこともできない。
評価は、上がっている。
同時に、距離も生まれている。
その両方が、同時に進行している。
ーー矛盾している。
だが、現実は往々にしてそういうものだ。
ノアは、今日も現場に出ている。
きっと、
何人かを渡らせ、
何人かを
置いてくるだろう。
それを、責める気はない。
自分だって、同じことをずっとやってきた。
違うのは、それを一人で引き受けていたかどうか。
今は、二人だ。
だからこそ、見えてくるものもある。
でも。
答えは、まだない。
正しさは、ここにある。
でも、正しさだけでは足りない。
その“足りなさ”が何なのか。
それを、どう埋めればいいのか。
今の自分には、まだ分からない。
ただ一つ、確かなのは。
この違和感を無視してはいけない、ということだけだ。
ーーー並ぶとは、
きっとこういう場所に立ち続けることなのだろう。
正解のないまま。
感想をいただけると嬉しいです。
※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。
よろしければ見てください。
AIアシスト作品です。
僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。
気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。
これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。




