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第六部 第三話 ノア、橋を架けたつもりで、落とした日

ノアの失言はもはや仕様。

正直に言えば、今回はうまくいくと思っていた。

前に一度、現場の空気が少し軽くなった感触があった。


声を拾って、位置を確認して、

「今どこにいるか」を一緒に見る。


それだけで、皆、少し安心した。


だから。


今回も同じようにすればいい。そう考えた。

現場の小さな会議室。人数は多くない。


ノアは、いつもよりゆっくり話した。


「……佐伯の判断、正しいかどうかで言えば、正しいです」


最初にそれを置く。


反発が出ないように。

空気が荒れないように。


「でも」


続ける。


「速い」


何人かが、視線を上げた。


「だから、追いつけないって感じるのは普通だと思います」


ここまでは、悪くなかった。

頷く人もいた。


「だから」


ノアは、続ける。


「分からないところは、止めていいし、聞いていい、

聞かないまま進む方が、後で困る」


ーーー言い切った。


その瞬間だった。


「……それはさ」


一人が、ぽつりと言った。


「分からない方が悪いって聞こえるんだけど」


ノアは、一瞬、言葉に詰まった。


「え……」


「いや、そう言ってるわけじゃないのは分かるけど」


別の声が続く。


「でもさ」


「“分からないなら止めろ”って、結局、

ついてこれない人は自己責任ってことだろ」


空気が、一段、重くなる。


ノアは、慌てて首を振った。


「違います!そういう意味じゃ……」


だが、言葉が追いつかない。


「じゃあ、どういう意味なんだ?」


聞かれる。

ノアは、答えを探す。


自分が感じていた“正しさ”を、そのまま言葉にしようとする。


「……分からないなら…

分かるようになる努力は、必要だと思うんです」


言った瞬間、しまった、と思った。


だが、もう遅い。


沈黙。


そして。


「ほら」


誰かが、小さく笑った。


「結局、そういうことじゃん」


ノアの胸が、きし、と鳴る。


違う。そうじゃない。


言いたかったのは、責めることじゃない。

守ることだ。


でも。


”守り方を、間違えた。”


会議は、そのまま終わった。


誰も怒鳴らなかった。

誰も反論しなかった。


それが、一番きつかった。


ノアは、廊下を歩きながら拳を握った。


ーーーやってしまった。


自分は、橋を架けたつもりだった。

でも、足場を確認しないまま板を置いた。


結果、人は渡らなかった。


落ちた。


戻る途中、悠馬の姿が見えた。


端末を見ながら、何かを処理している。

いつも通り。静かで、迷いがない。

ノアは、声をかけられなかった。


今、言えば。


きっと、兄はこう言う。


「次は、言い方を変えよう」


正しい。でも。

それだけじゃ、足りない。


自分は、“分かる側”の言葉をそのまま使ってしまった。


それが、どれだけ刃になるかを、理解しきれていなかった。


ノアは、壁にもたれ、深く息を吐く。


ーーー兄さんは、これをずっと一人で背負ってたーーー


正しさを、誰にも翻訳されないまま。


胸の奥に、重たいものが沈む。


橋は、架けただけでは意味がない。

渡り方を、一緒に歩かなければ。


そのことを、身をもって知った日だった。



感想をいただけると嬉しいです。

※一応完結分までは完了してますので都度載せる予定です。

よろしければ見てください。


AIアシスト作品です。


僕はまだ、ただの学生だったはずなのに。

気づいたら、伯爵家と組織と、大人たちの胃を一手に引き受けていた。

これは「有能すぎたせいで詰んだ男」の話。

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