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魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした  作者: 月影みるく


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第38話 17歳、夜に咲く魔界の華

――数年後。


魔界の姫は、もう子どもではなかった。


十歳で暴走し、

恐怖に震え、

魔力を恐れていた少女は――


十七歳になった。


鏡の前に立つセラフィナ。


長く伸びた黒髪は、腰を越える。


瞳は以前よりも深く、静かで、

どこか夜の底のような光を宿していた。


可憐さは残っている。


だが。


その微笑みには、妖艶な影が差す。


纏うのは、深紅と黒を基調にしたドレス。


肩は滑らかに露わになり、

背中は大胆に開き、

腰のラインを美しく強調する仕立て。


七年の時間が、

少女を“王女”へと変えていた。


「……大人として社交界デビューか」


小さく呟く。


十歳の頃の自分なら、

きっと怯えていた。


でも今は違う。


怖さはある。


けれど、逃げない。


「姫君」


背後からの声。


クロウ・フェルゼン。


七年前は若き騎士だった彼も、

今や騎士団副団長。


身長も伸び、

鋭さを増した瞳。


だが――


今だけは、落ち着かない。


セラフィナが振り向く。


「どう?」


「……」


一瞬、言葉を失う。


「……お美しいです」


声が低い。


「……以前より、ずっと」


その視線が、どこか苦しそうで。


(……ああ)


セラフィナは理解する。


(守ってた“子ども”じゃなくなったからだ)


それが、誇らしくて。


少しだけ、切ない。


* * *


大広間。


扉が開く。


十七歳の王女が、姿を現す。


ざわめきが止まる。


「……これが」


「魔界の王女」


「七年前の少女が……?」


人間界の王子たちが立ち上がる。


カイゼル。

リュシアン。

フィオレ。


七年前は「噂の姫」。


今は違う。


“欲しい存在”。


カイゼルが最初に歩み出る。


「セラフィナ王女」


「正式に、我が国との婚姻を――」


言葉を遮るように、

別の王子が続く。


「我が国も同盟強化を望む」


一斉に、圧がかかる。


視線。


欲望。


計算。


期待。


それらすべてを受けながら、

セラフィナは微笑む。


柔らかい。


だが。


絶対に揺れない微笑み。


「皆様」


「今宵は、私のデビューの日です」


「婚姻の話は」


「私自身が、選びます」


会場が、静まり返る。


十七歳の少女の声ではない。


王女の声。


その堂々とした姿に、

誰もすぐには言葉を返せなかった。


* * *


その様子を見つめるクロウ。


胸が、締め付けられる。


(選ぶ……?)


七年間。


守り続けた。


泣いた夜も、

震えた日も、

成長の瞬間も、すべて見てきた。


だが。


彼女は王女。


婚姻は政治。


自分は騎士。


わかっている。


なのに。


王子がセラフィナの手を取ろうとした瞬間。


無意識に前に出ていた。


「姫君」


低い声。


空気が変わる。


セラフィナが振り向く。


その瞳に映るのは、

騎士ではない。


一人の男の顔。


「……どうしたの」


廊下へと導かれる。


静かな空間。


「……私は」


クロウの拳が震える。


「七年前」


「あなたを守ると誓いました」


「今も、それは変わりません」


「でも」


息が荒い。


「あなたが、誰かのものになる未来を」


「平然と見守るほど」


「私は、強くない」


沈黙。


セラフィナの心臓が跳ねる。


「……やっと言った」


小さく笑う。


「七年もかかったね」


クロウが顔を上げる。


「姫君……」


「私は、選ぶって言ったでしょ」


一歩近づく。


可憐さを残しながらも、

どこか妖艶な眼差し。


無意識の距離。


無意識の微笑み。


無意識の誘い。


「騎士じゃなくて」


「男として」


「ちゃんと、横に立てる?」


七年前、守られる少女だった存在は。


今。


選ぶ側になっていた。


そして――


その自覚は、まだ足りない。


自分がどれほど人を惑わせているか。


どれほど、心を揺らしているか。


王女の無自覚さも、七年分、増していた。


クロウの瞳が揺れる。


「……立ちます」


低く、決意の声。


「何があろうと」


「あなたの隣に」


社交界デビューは、


世界だけでなく。


恋も、動かし始めた。


そして。


遠くで――


影は、静かに笑っていた。


「……熟したな」


本当の嵐は、


ここから始まる。


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