表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした  作者: 月影みるく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/39

第33話 学びの始まり、選ぶ覚悟

翌朝。


魔界城に、久しぶりに澄んだ空気が流れていた。


セラフィナは、自分の部屋の窓を開け、深く息を吸う。


「……よし」


まだ少し、胸の奥がざわつく。

でも、昨日よりは――立っていられる。


(逃げたままは、嫌だ)


* * *


執務室。


魔王は書類に目を落としていたが、

扉が開いた気配に、すぐ顔を上げた。


「セラフィナ?」


「うん」


セラフィナは、まっすぐ父を見た。


「お願いがある」


魔王の表情が、一瞬で引き締まる。


「……何だ」


「剣と、魔法」


はっきりと言う。


「ちゃんと、習いたい」


沈黙。


魔王の魔力が、微かに揺れた。


「……却下だ」


即答だった。


「危険すぎる」


「お前は、もう十分――」


「十分“守られた”」


セラフィナは、言葉を遮る。


「でも、私は」


一歩、前に出る。


「守られるだけじゃ、いられない」


「クロウが怪我して」


声が、少しだけ震える。


「みんなが、私を庇って」


「……それで、何もできないのは、嫌」


魔王は、娘を見つめた。


怒りではない。

恐怖だ。


「……お前が、傷つく可能性がある」


「あるよ」


即答。


「でも、何もしなくても、誰かは傷つく」


「それなら」


「私は、選びたい」


魔王は、目を伏せた。


その時。


「失礼いたします」


控えめな声。


クロウ・フェルゼンが、扉の脇に立っていた。


「姫君」


「本気ですか」


「うん」


迷いはなかった。


クロウは、一拍置いてから、魔王を見る。


「……魔王様」


「姫君の意思は、明確です」


「私は」


「その選択を、尊重すべきだと考えます」


魔王は、深く息を吐いた。


「……条件がある」


セラフィナが、顔を上げる。


「剣は、基礎のみ」


「魔術は、制御のみ」


「危険を感じたら、即中止だ」


「……いい」


セラフィナは、うなずいた。


「ありがとう、パパ」


* * *


訓練場。


朝の光が、白い石床に反射する。


「では、姫君」


クロウは木剣を差し出した。


「まずは、構えからです」


「……重い」


正直な感想。


「はい」


「ですが、剣とは」


「重さを、預けるものです」


セラフィナは、真似して構える。


腕が、少し震える。


(……怖い)


一瞬、魔獣の影が脳裏をよぎる。


「……っ」


「姫君」


クロウの声は、静かだった。


「力を、入れすぎておられます」


「……わかってる」


「だけど、体が言うこときかない」


「それで、結構です」


クロウは、距離を保ったまま言う。


「剣を振る前に」


「立っているだけで、十分です」


セラフィナは、ゆっくり息を吐いた。


「……こう?」


「はい」


初めて、クロウが小さく微笑んだ。


「今のは、とても綺麗です」


少し、頬が熱くなる。


「……褒めすぎ」


「事実です」


* * *


次は、魔術訓練。


広い魔導陣の中央に立つ。


「今日は、出す練習ではない」


魔王が、はっきり告げる。


「“止める”練習だ」


「……止める?」


「魔力を、灯して」


「自分の意思で、消せ」


セラフィナは、目を閉じる。


胸の奥。


あの、巨大な力。


(……怖い)


指先に、光が集まる。


空気が、歪む。


「……っ」


一瞬、制御が揺らぐ。


床が、軋んだ。


「セラフィナ!」


「……だいじょうぶ」


歯を食いしばる。


(私が、止める)


光が、強くなり――


次の瞬間。


すっと、消えた。


静寂。


「……できた」


小さな声。


魔王は、目を見開いた。


クロウは、息を止めていたのを、ようやく吐く。


「……よく、抑えました」


「……こわかった」


正直な言葉。


「でも」


セラフィナは、ゆっくり顔を上げる。


「逃げなかった」


クロウは、片膝をついた。


「姫君」


「本日は、ここまでにしましょう」


「……うん」


疲れた。


でも。


胸の奥に、確かなものがある。


(……一歩)


(ちゃんと、進めた)


* * *


訓練場を出るとき。


セラフィナは、ふと立ち止まる。


「ねえ、クロウ」


「はい」


「私さ」


「強くなりたい」


「でも」


少しだけ、笑う。


「一人で立つ勇気は、ないから」


クロウの表情が、揺れた。


「……承知しました」


低く、真剣に。


「では私は」


「姫君が倒れぬよう」


「隣に、立ち続けます」


セラフィナは、うなずいた。


「それでいい」


こうして。


恐怖から逃げていた姫は、

剣を取り、力と向き合い始めた。


まだ、小さな一歩。


だがそれは――

確かに、“自分で選んだ道”だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ