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魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした  作者: 月影みるく


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第28話 暴走

魔界の空が、ざわついていた。


風が、逆流している。

大地の奥から、嫌な震えが伝わってくる。


「……変ですね」


クロウ・フェルゼンは、足を止めた。


「結界の魔力が、不自然に揺れています」


「そう?」


隣を歩くセラフィナは、首をかしげる。


「いつもと、同じに見えるけど」


「……いえ」


クロウは、無意識に一歩、彼女の前へ出た。


「姫君は、少し下がってください」


その瞬間。


――轟音。


地面が割れ、

黒い影が、地の底から這い出した。


「……っ!」


巨大な魔獣。

歪んだ角、濁った眼。

理性のない、暴走個体。


「魔獣……!?」


セラフィナが息をのむ。


だが、次の瞬間。


魔獣の視線が――

まっすぐ、彼女を捉えた。


「……え」


空気が、重くなる。


魔獣は吠えない。

ただ、まっすぐ――セラフィナへ。


「……姫君」


クロウの声が、低くなる。


「どうやら……」


剣を抜く音。


「狙いは、あなたのようです」


「……私?」


理由は、分かっていた。


魔力。


抑えられていたはずの、

それでも溢れ続ける“核”。


魔獣は、本能で察知していた。


――最上位の魔力源。


「下がってください!」


クロウが叫び、前に出る。


次の瞬間。


魔獣が、跳んだ。


「――っ!」


剣が、受け止める。


だが。


重すぎる。


「クロウ……!」


魔獣の爪が、無理やり防御をこじ開け――


鮮血が、宙に散った。


「――っ!」


クロウが、膝をつく。


「……っ、クロウ!?」


セラフィナの目の前で、

彼が、崩れ落ちた。


赤い血。

地面に、広がる。


「……なんで」


胸が、凍る。


「なんで、前に出たの」


「……当然です」


クロウは、苦しげに笑った。


「あなたを……守るのが……」


「私の、役目ですから……」


「……やだ」


声が、震える。


「そんなの……!」


魔獣が、再び動く。


今度は――セラフィナへ。


その瞬間。


何かが、切れた。


――ドクン。


心臓が、強く鳴る。


(……いや)


(やめて)


(これ以上、奪わないで)


世界が、歪んだ。


セラフィナの足元から、

純黒の魔力が噴き上がる。


「……っ!?」


魔獣が、悲鳴を上げる。


空気が、砕ける。

大地が、ひび割れる。


「……私の……」


セラフィナの声が、重なる。


「私の人に……」


「触らないで!!!」


爆発。


魔力が、奔流となって解き放たれた。


魔獣は、

抵抗する間もなく――消えた。


跡形もなく。


だが。


止まらない。


魔力は、なおも膨張し、

空間を引き裂いていく。


「……っ」


セラフィナ自身が、震えだす。


「なに……これ……」


制限が、効かない。


怖い。


自分が、自分じゃなくなる。


「……クロウ……」


その時。


空が、裂けた。


「――セラフィナ!!」


魔王の声。


次の瞬間、

圧倒的な魔力が、上から覆い被さる。


抱きしめられた。


強く。

震えるほどに。


「……もう、大丈夫だ」


魔王は、歯を食いしばる。


「間に合った……」


封印陣が展開され、

セラフィナの魔力が、無理やり押さえ込まれる。


「……やだ……」


セラフィナは、しがみついた。


「怖い……」


「……すまない」


魔王の声が、わずかに震える。


「お前に、背負わせすぎた」


魔力が、完全に封じられ――


セラフィナの意識が、落ちる。


* * *


静寂。


クロウは、治療を受けながら、

目を覚ました。


「……姫君は……」


「無事だ」


魔王が、答える。


「お前が守った」


クロウは、ほっと息を吐いた。


「……それなら、よかったです」


魔王は、彼を見下ろし、

静かに言った。


「……次はない」


「娘を、危険に晒す世界を」


「このままにはしない」


その視線の先。


眠るセラフィナの顔は、

穏やかで――


だが。


確かに、

何かが変わっていた。


守られるだけの姫は、

もう――いない。


世界は。


彼女を中心に、

再び、大きく動き始めていた。

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