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魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした  作者: 月影みるく


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第23話 静かな夜、変わらない距離

舞踏会の熱が、ようやく城を離れた夜。


人間界の王城は静まり返り、

廊下に響くのは、靴音だけだった。


「……ふぅ」


セラフィナは、バルコニーに出て、夜風に当たる。


きらびやかなドレスはもう脱ぎ、

淡い色の部屋着に身を包んでいた。


(つかれた……)


楽しかった。

でも、それ以上に——


(いっぱい、見られた)


少しだけ、胸がざわつく。


「セラフィナ様」


後ろから、静かな声。


振り返らなくてもわかる。


「クロウ」


クロウ・フェルゼンは、数歩離れた場所で片膝をついた。


「お疲れではありませんか」


「ちょっとね」


セラフィナは、手すりにもたれたまま言う。


「みんな、すごかった」


「……はい」


クロウの声は、低く穏やかだった。


「姫君が注目を集めるのは、当然です」


「当然?」


「はい。美しく、気高く、そして——」


一瞬、言葉を選ぶ間。


「……お優しい方ですから」


セラフィナは、くすっと笑う。


「クロウ、真面目すぎ」


「申し訳ありません」


そう言いながら、声は柔らかい。


「ですが、本心です」


(……)


少し、照れる。


「ねえ、クロウ」


「はい」


「今日さ」


セラフィナは、夜空を見上げたまま言った。


「知らない王子たちに囲まれて」


「踊ろうって言われて」


「……ちょっと、怖かった」


クロウの手が、わずかに強く握られる。


「……そのような思いをさせてしまい、申し訳ありません」


「ちがう」


セラフィナは、首を振る。


「クロウがいたから」


「平気だった」


その言葉に。


クロウの胸が、強く鳴った。


「……それは」


「騎士として、これ以上ないお言葉です」


声が、ほんの少しだけ震えている。


セラフィナは、振り返ってクロウを見る。


「クロウ」


「はい」


「これからも、そばにいてよ」


当たり前のように。


無邪気に。


「ずっと」


クロウは、迷わなかった。


「命に代えても」


「あなた様のそばに」


その言葉は、誓いだった。


騎士として。

そして——


一人の男として。


セラフィナは、満足そうに微笑む。


「それでいい」


夜風が、二人の間をすり抜ける。


舞踏会は終わった。


だが。


世界が姫を放っておかないことを、

二人とも、もう知っている。


それでも。


この距離だけは、変わらない。


——主と騎士。

——そして、まだ名付けられない想い。


静かな夜は、

確かに、次の物語へと続いていた。

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