表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘に転生した私は、恐れられるどころか世界一の美貌で恋愛ルート確定でした  作者: 月影みるく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/39

第15話 それぞれの「守りたい」

――ルシアス・ヴァルディオス視点


扉を閉めたあとも、

胸の奥が、うるさかった。


(……まずいな)


檻の向こう。

小さな背中。


泣いていない。

怯えてもいない。


ただ、不思議そうに

世界を見ている。


(五歳だぞ)


そう、頭では分かっている。


なのに。


(……欲しい)


魔力でも、血でも、価値でもない。


――彼女、そのもの。


「……愚かだ」


誰に向けた言葉かも、分からない。


俺は、王だった。


かつては。


国を失い、名を失い、

世界に居場所を失った。


そんな俺が――


(恋、か)


はっきりと、そう思った瞬間、

笑ってしまった。


「……世界を敵に回す覚悟は、

もうあるつもりだったが」


それ以上のものを、

望んでしまったらしい。


部下が、膝をつく。


「捜索が、始まりました」


「当然だ」


「魔界全域が、動いています」


「……魔王は?」


「激怒しています」


ルシアスは、目を伏せた。


(だろうな)


「人間界も?」


「王子と勇者が、独自に動いていると」


「……ふふ」


知らず、口元が緩む。


「全員、本気か」


檻の方へ、もう一度だけ視線を向ける。


(君は、どれだけ愛されているんだ)


そして――


(それでも、俺は手を放さない)


「隠匿結界を、三重に」


「彼女の気配は、

俺以外、誰にも辿らせるな」


「……了解」


命令を出す声は、冷静だった。


* * *


――魔界。


空が、怒っていた。


黒雲が渦を巻き、

雷が、大地を裂く。


「――見つけろ」


魔王の声は、

怒りそのものだった。


「娘に、触れた者」


「逃げ場は、ない」


近衛騎士団が、走る。


「クロウ・フェルゼン!」


「はっ!」


「先行を許可する」


「必ず――」


クロウは、答えなかった。


答えられなかった。


剣を握る手が、

震えていたからだ。


(……俺の、せいだ)


(守ると、誓ったのに)


彼は、誰よりも早く

血の気配を追った。


「……待っていろ」


誰にともなく、呟く。


「必ず、迎えに行く」


* * *


――人間界。


「……じっとしていられるか」


アルトが、剣を握る。


「同感だ」


ノエルは、静かに言った。


「協定だの、立場だの」


「関係ない」


二人は、目を合わせる。


「彼女は――」


「守られるべきだ」


勇者と王子。


十歳と十二歳の少年は、

初めて同じ覚悟を持った。


* * *


――檻の中。


セラフィナは、

くまのぬいぐるみを抱いて、

静かに眠っていた。


何も知らず。


自分を巡って、

世界が裂けかけていることも。


そして。


ルシアス・ヴァルディオスは、

確信していた。


――この小さな姫は、

いずれ、

世界そのものになる。


それでも。


(……それでも、離せない)


愛は、

ときに、守護よりも

残酷だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ