炎の誓い ― 第十九話「新たな拠点、交わる想い」
炎の誓い ― 第十九話「新たな拠点、交わる想い」
組織の要塞「核心」は、かつて闇に覆われていたが、今は莉奈の光と仲間たちの手によって少しずつ姿を変えつつあった。
瓦礫は片付けられ、破壊された壁や床も莉奈の修復能力で次々と甦っていく。
「ふふっ、どう? 新品みたいでしょ!」
光を指先から広げながら莉奈が胸を張る。
氷河は冷静に頷いた。
「……悪くないな」
「もうっ、“すごい”って素直に言えばいいのに〜」
莉奈は氷河の腕に抱きつき、頬をすり寄せる。
「や、やめろ! 仕事中だろ!」
氷河は真っ赤になり、顔を逸らした。
雷太はその様子を見て大喜びで爆笑する。
「氷河〜、お前顔真っ赤だぞ! 莉奈ちゃんにメロメロじゃねぇか!」
「黙れ、雷太!」
悠真は工具を片付けながら、呆れ顔で小さくため息をついた。
廊下では澪と隼人が資料を並べ、作戦会議用の部屋を整えていた。
澪がふと立ち止まり、汗を拭おうとした瞬間、隼人がさりげなくハンカチを差し出す。
「……ありがとう」
「気にするな。俺が傍にいる」
澪は一瞬だけ彼の瞳を見つめ、少し照れたように微笑んだ。
「ほんとに……いつも支えてくれるのね」
「お前の強さに、俺が惹かれてるんだ」
低く真っ直ぐな声。澪の胸が熱くなる。
広間に戻ると、莉奈は修復した床に座り込み、氷河にスカートをひらひらさせて挑発していた。
「ねぇねぇ、短いほうが可愛いでしょ? 氷河くん♡」
「ばっ……! 動きにくいだろうが!」
「動きやすいもんっ!」
わざとくるりと回転し、氷河の視線が思わず下がる――慌てて顔を逸らし、耳まで真っ赤にする。
「……お前ってやつは……」
莉奈はくすくす笑い、さらに腕に絡みつく。
「えへへ、照れてる氷河くんも好き〜」
雷太はテーブルを叩いて大はしゃぎ。
「おぉー! ラブコメだ! 最高だな!」
悠真は再びため息をつき、手帳を閉じる。
「……まったく、落ち着く暇がない」
それでも、不思議な温かさがあった。
闇の残滓が漂う核心に、人の声と笑顔が戻ってきたのだ。
黒木は遠くからその様子を静かに見ていた。
「……光と炎……こいつらが、この時代を変えるのかもしれんな」
その声は誰に聞かせるでもなく、かすかに響いた。
そして――束の間の平穏の中で、彼らは再び迫り来る嵐を知る由もなかった。