炎の誓い ― 第十七話「光、闇を照らす」
炎の誓い ― 第十七話「光、闇を照らす」
ホールに満ちる闇と光。
黒木龍一郎の放つ影は、触れるものすべてを飲み込むかのように蠢き、
莉奈の放つ光は、その闇を溶かすように広がっていく。
「――ふっ、面白い」
黒木の声は低く響き渡った。
「この俺の闇を正面から打ち破ろうとするとは……だが、光ごと呑み込んでやろう」
影が巨大な波となって押し寄せる。
悠真たちは一歩も引かず、それぞれの力で支援に回る。
炎が影を焼き、雷が貫き、氷が防ぎ、風が切り裂く。
だが決定打を放つのは――莉奈の光だ。
「みんなを守る! そして……あなたの心の中の闇も、絶対に!」
莉奈の声に呼応するように、光が一層強く輝いた。
柔らかなのに鋭い、温かいのに揺るぎない――人を救うための光。
黒木の闇がひび割れを起こし、亀裂から眩い光が染み込んでいく。
「ぐっ……!? この力……ただの光ではない……!」
黒木の膝が沈み、漆黒のコートが淡く白に照らされる。
その瞬間、莉奈は一歩踏み込み、両手を差し伸べた。
「黒木さん……もう、闇に縛られないで!」
光が奔流となり、黒木の全身を包み込む。
影は悲鳴のように揺らめき、やがて霧散した。
――静寂。
光が収束すると、そこには片膝をついた黒木がいた。
力尽きたように肩で息をしながらも、その瞳は穏やかに澄んでいた。
「……馬鹿な……俺が……敗れるとは……」
だがその声には、怒りも憎しみもなく、どこか晴れやかさがあった。
莉奈は微笑み、彼に手を差し伸べた。
「ううん、負けたんじゃないよ。ようやく自由になったんだよ」
黒木はしばし黙し、やがて小さく笑った。
「……小娘の言葉に救われるとはな。
俺は……ずっと闇に囚われ、組織の道具に成り下がっていた。
だが……お前たちと共に戦うなら……まだ俺にも、戦う理由があるかもしれん」
悠真が一歩前に出る。
「……本気で言ってるのか、黒木」
「俺はもう、あの闇に戻るつもりはない」
黒木の瞳には、確かな決意が宿っていた。
雷太が目を丸くする。
「マジかよ!? あんだけ暴れてたやつが、今度は味方って……」
氷河は静かに答える。
「……敵だからこそ分かるものもある。彼の力は、これから必要になる」
澪も頷いた。
「黒木さん。あなたが核心の情報を持つなら……一緒に来て」
黒木は立ち上がり、深く頷いた。
「いいだろう。俺の知る限りの全てを教える。……だが覚悟しておけ。お前たちの想像を超える“裏の支配者”が存在する」
その言葉に場が張り詰める。
――組織のさらに奥に潜む存在。
すべての能力をコピーできるという、恐るべき“本当のボス”。
悠真は炎を握りしめ、莉奈は光を強く放った。
「姉さんの残した真実を……必ず暴く。そのために」
「うん。私も一緒に戦うよ!」
黒木は新たな仲間として、その場に立った。
こうして、炎と光と闇を抱えた新たなチームが誕生したのだった。