炎の誓い ― 第十五話「潜入の始まり」
炎の誓い ― 第十五話「潜入の始まり」
夜の街の外れに、ひっそりと佇む廃ビル。
そこが澪の示した「核心」への入口だった。
地下輸送路へ続く通路は、通常の道からは閉ざされている。唯一の潜入ルートは――天井の空調ダクト。
「……よりによって、ダクトかよ」雷太が頭を掻いた。
氷河は無言のまま冷たい視線をダクトへと向ける。
悠真はため息をつき、莉奈の方へ視線を送った。
そこにいたのは――
ミニスカート姿で元気いっぱいに準備運動をしている莉奈だった。
「よーしっ、潜入ミッションって感じ! 私、こういうの一度やってみたかったんだぁ♪」
「おい莉奈……なんでそんな短いスカートなんだ」悠真が呆れ顔で指摘する。
「えー? だってこの方が動きやすいし♪」くるりと回って、ひらりと裾が揺れる。
雷太の目が輝く。
「な、なんて最高なんだ……! 莉奈ちゃんっ、お前は天使か!? いや、女神か!?」
「やめろ雷太……」悠真はまた深くため息を吐いた。
氷河は咳払いし、わざとそっぽを向く。
「馬鹿か……そんな格好で潜入なんて……」
莉奈はにっこりと笑って、彼の腕にしなだれかかった。
「えへへ♡ 氷河くん、顔が赤いよ?」
「っ……!」氷河は視線を逸らし、耳まで真っ赤になった。
――潜入前から既に騒がしい。
「ほら、行くわよ」澪が呆れ混じりに声をかけ、全員が順番にダクトへ潜り込む。
先頭は隼人、続いて莉奈。四つん這いで金属の通路を進んでいく。
その直後――氷河の視界に、否応なく飛び込んできた。
ひらひらと揺れるスカートの下、真っ白な綿の布地が。
「っ――!!!」
氷河の顔が一瞬で真っ赤に染まり、慌てて視線を逸らす。
しかしダクトの狭さが仇となり、どうしても視界の端に映り込んでしまう。
「ひ、氷河くん? 後ろで顔が熱そうだけど、大丈夫?」
莉奈が振り返ってにこっと笑う。
「だっ、大丈夫だっ! 前を向け!」
「えへへ♡」
後方の雷太は大喜びで小声を漏らす。
「くぅ~~~! 最高だぜこの作戦!!でも氷河のケツしか見えねえ!」
「……黙れ雷太」悠真が低く唸り、拳を握る。
やがて全員がダクトを抜け、静かな地下通路に降り立った。
澪が囁く。
「ここから先が“核心”……組織の心臓部よ」
緊張感が走る仲間たち。
だが莉奈だけは明るく笑い、氷河の腕をぎゅっと握った。
「大丈夫。私が光で、みんなを守るから」
氷河は顔を逸らしながらも、強く息を吐いた。
「……勝手に守れると思うな。俺たちが守るのは、お前の方だ」
「……♡」莉奈の笑顔がさらに輝きを増した。
――こうして、彼らの核心潜入が始まった。