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3章 第8話 魔導解放!


 無事に幕を閉じた学園祭。

 

 後日、最優秀賞を決める表彰式が行われた。

 

 表彰される者には無条件の進級が約束されるという。

 

 選ばれるのはひとチームのみ。

 

 誰が選ばれるのが、全クラスが闘技場に集められ待機している。

 

 ーーーーーー。

 

 「ボクたちかな!?ボクたちかな!?」

 

 「かなり頑張ったからな。有り得るだろう」

 

 「全員で力を合わせたからね。」

 

 「私たち、Aクラス……進級したら、どうなる?」

 

 「そりゃあ卒業じゃねえの?」

 

 「おいおい、選ばられてる前提なのかい?」

 

 「選ばれてるに決まってるじゃん!!」

 

 期待に胸を踊らせるアノン。うんうんと頷くミルク。キキとバロゼはもう選ばれてる気になっている。

 

 全員を優しく見守るテンダリア。

 

 全員が見守る中、イリスが登壇する。

 

 「では、発表します。今回、アンジュ学園祭で、最優秀賞に選ばれたのは『リベレイトアート』を行ったテンダリアチームです!!」

 

 「やったぁあああああっ!!!!」

 

 真っ先に声を上げ飛び上がるアノン。

 

 全クラスの生徒が拍手を送る。

 

 アンコールまで起きた大掛かりな展示だ。

 

 選ばれないはずもなかった。

 

 協力や力の扱い方、将来性、テーマ性、成長。

 

 全てにおいてアンジュ学園が求めていることを体現してくれた。

 

 表彰台に全員が上がると、イリスから賞状とメダルをテンダリアが受けとる。

 

 「おめでとう。これで晴れて卒業だね。」

 

 「ありがとうございます。俺たちだけじゃこんな賞はもらえなかった。あなたの弟子とミルクのおかげですよ。」

 

 「そこを含めて、評価されてるのよ。おめでとうね。」

 

 「はい!」

 

 ーーーーーー。

 

 それから早いもので1週間が過ぎ、テンダリア、キキ、バロゼは外の世界へと旅立つことになった。

 

 アンジュ学園では卒業は珍しくない。

 

 Bクラスに上がると、好きな進路先を選べる。大体の人は辞めることが多いのだ。

 

 もしくは同じクラスに滞在し続け、伸びしろがなかったものも同様に軍や部隊に編成される。

 

 「あっという間だったね。テンダリア達はどうするの?」

 

 「暫くは世界を見て歩くよ。授業で習った知識しか俺にはないからね。」

 

 「私は主について行くだけ。」

 

 「ま、俺様も同じだな。」

 

 「達者でな。ま、お前たちなら心配する必要も無いか。」

 

 「学園祭では世話になった。君の活躍なしに卒業はなかっただろう。」

 

 「早いか、遅いかだ。差異はない。元気で。」

 

 「ああ。」

 

 「ボクも直ぐに追いつくからね!!」

 

 「じゃあ、また!!」

 

 学園祭を共に過したメンツによるお別れの会。

 

 かなりあっさりと終わり、三人は結界の外へと消えていく。

 

 見送りをしたのはミルクとアノンの二人だ。

 

 「じゃあ、ボクたちも解散しよっか!」

 

 「だな。」

 

 ミルクとアノンはシルビアたちと同じBクラスにそのまま進級。

 

 あとは夏休み後の進級試験に備えるのみだ。

 

 帰路へと踵を返す二人。

 

 刹那、ドタドタと走ってくる足音に視線を向ける。

 

 「あ、あれえ!!い、行っちゃいましたか!?」

 

 「テンダリアのこと?」

 

 「は、はい!!!」

 

 現れたのは紙袋を持ったルネである。

 

 どうやらお見送りをしたかったようだ。

 

 「ほんとに何度かしかお話してませんでしたが、お世話になったので、お菓子でも渡そうかなと思ってて……!!」

 

 「ルネはやさしいね。」

 

 「君の料理、3人とも美味しそうに食べていたもんな。」

 

 「あはは、間に合いませんでしたね。」

 

 「きっと、またどこかで会えるよ。……でもそのお菓子、勿体ないからボクにちょうだーい!!」

 

 「お、私も食べたいな!」

 

 「あわわわ!こ、こら!2人とも!あげますから〜!!」

 

 ルネの紙袋を取り合う二人。

 

 ルネは困ったようにお菓子を分けて、渡した。

 

 ーーーーーー。

 

 「……主」

 

 「ん?どうした?」

 

 「ほんとに、このまま、外出るの?」

 

 「あ、ああ。そのつもりだけど?なにか、やり残したことでもあるのか?」

 

 「……ううん。」

 

 草原が広がる王都からすこし離れた場所。

 

 テンダリア達はあてもなく、歩く。

 

 キキは浮かない表情を浮かべながら、いつもより震えた様子でテンダリアの腕に抱きつく。

 

 「おいおい、不安なのか?」

 

 「主が……変わっちゃうのが、怖い。」

 

 「俺は何も変わらないよ?」

 

 「違ぇんだよ。主。きっと、変わらねえ、主が怖いんだよ、こいつは。」

 

 「バロゼまで……どうしたんだ?」

 

 いつもより神妙な面持ちのバロゼ。

 

 明らかに様子の異なる二人に困惑する。

 

 「なんだよ、少し休むか?」

 

 「いいや。行こうぜ、きっとそうすれば、答えは出る。俺様もこいつも結局、変わらない。主がどうするか次第だ。」

 

 「そ、そうか?言いたくないなら、いいけどさ。なんかあるなら早めに言えよな。」

 

 「……うん、なにがあっても、一緒にいるから。……平気。」

 

 そのまま、3人は足を止めることなく先へと進んでいくのであった。

 

 ーーーーーー。

 

 「よぉーし!せっかくだし、トレーニングしよう!!結局、3人にリベンジできなかったけど、きっと強いひとはまだまだ沢山いるからね!!」

 

 闘技場に足を運んだアノン、ルネ、ミルク。

 

 ミルクとアノンは対峙し、戦闘態勢を摂る。

 

 ルネは観客席で二人の観察をするそうだ。

 

 「いくぞ!!」

 

 「こい!!」

 

 同時にエーテルを解放する二人。激しい力がぶつかり合う。

 

 だが、その刹那。

 

 二人の間に割って入るように瘴気を纏ったライムが二人の攻撃を簡単に吹き飛ばす。

 

 「少し、待ってくれよ。アノン。」

 

 その眼差しは酷く暗く、憎しみがこもったようにアノンを見つめる。

 

 まるで、その他が目に入っていないようだ。

 

 「いっつつ、なにすんのさ!ライム!!」

 

 「トレーニングするなら、僕としようよ。そんな弱いやつとやるより、きっといい修行になるよ。」

 

 「……閃光。」

 

 ミルクに対して、失礼な物言いをするライム。

 

 考える隙もなくアノンはリベレイトを発動し、ライムの顔面を殴る。

 

 ライムは動じることなくその攻撃を受けて微笑む。

 

 「リベレイト、ホーリーの応用で加速と目くらましね。……でもこんなもんか。」

 

 「ライムは人のことを馬鹿になんかしない!!だれだ!!!お前!!!」

 

 「優しいね、アノン。……でも買い被りすぎだよ。」

 

 ライムは頬でアノンの拳を押し返すと、腕を掴み宙高く投げ飛ばす。

 

 「ぐっ!?」

 

 ーーーーーー。

 

 突然始まったライムとアノンの戦い。

 

 ミルクはライムに吹き飛ばされ気絶している。

 

 ルネが駆け寄り、ヒールをかけるが、普段の半分ほどしか力が発揮できない。

 

 「あれ!?どうして!?『ヒール!!』『ヒール!!』」

 

 「だ……大丈夫だ。ルネフィーラ。あまりその力は使うな……」

 

 必死で能力を使うルネの手をミルクが止めさせる。

 

 乱用したせいか気絶したミルクの回復に成功したらしい。

 

 だが、致命傷に変わりはない。

 

 まだ回復しきれていない様子を見て再びヒールをかけようとするルネ。

 

 「で、でも!!!」

 

 「その力は天使ビスラ様と同じ力だ。薄々勘づいているんだろう?」

 

 「命を削る力……それでも!!!」

 

 「いい。私に使う必要なんてない。それに今の君じゃ……私を回復することは出来ない。」

 

 「どういう……意味ですか」

 

 「……今はあの二人を何とかしよう。」

 

 「な、何とかって……」

 

 「死ぬぞ……アノンのやつ。」

 

 「……え?」

 

 ーーーーーーー。

 

 「ぐっ!!」

 

 何度アノンが拳を繰り出してもその全てがライムに当たることなく過ぎていく。

 

 それどころか攻撃を繰り出す度、見えないライムの拳が体の至る所に直撃し激痛が走る。

 

 明らかにウルローズの許容を超えた攻撃を受けているのだ。

 

 こんな攻撃を何発も喰らえば明らかに致命傷となる。

 

 そんなことはアノンにだって、わかっていた。

 

 「(ウルローズさんの力超えてるってこと!?それに、なんだよ、全くライムの攻撃に対応できない!!明らかに今までのライムじゃない!!まるで別人だ!!)」

 

 思考している間も何度も攻撃を喰らうアノン。

 

 「ほら、君ならもっとできるはずだよ!!アノン!!!」

 

 ついに力尽きて倒れるアノン。容赦なくライムはアノンの頭部を持ち上げ、無理やり起き上がらせる。

 

 「リベレイトにスピリット、性格の良さも、生まれ持った才能も、人を惹きつけるカリスマも、愛される魅力も、地位も名誉も。君は全部もってる。だからさ、勝利ぐらい僕にくれよ。ひとつぐらいいいだろう?僕の踏み台になってくれよ。アノン!!!!」

 

 そのまま地面に叩きつけられるアノン。

 

 「とめ……なきゃ……ボクが……」

 

 もうほとんど満身創痍のアノン。

 

 ゆらゆらと立ち上がり、ブツブツと呟く。

 

 「アクセ……」

 

 「だめだ!!罠だ!!!使うな!アノン!!!」

 

 「アクセプト……!!!」

 

 ミルクの制止を聞くことなくスピリットを解放するアノン。

 

 全身に青白いオーラが迸り、これまで受けたダメージがそのまま力となる。

 

 ゆっくり、ゆっくり。その一歩を踏み出し、ライムへと歩いていく。

 

 ライムは不敵に笑うと、呟いた。

 

 「……魔導解放」

 

 刹那、青白いオーラを掻き消すように黒い瘴気が闘技場を埋め尽くす。

 

 「うそ……これって、魔導……魔族が使うっていう……」

 

 困惑するルネ。

 

 黒い閃光が迸ると、倒れるアノン。

 

 アノンを通り過ぎるようにライムが姿が現す。

 

 「僕の勝ちだね。アノン。君の全力を僕が倒したよ。」

 

 白目を向き、息をしていないアノン。

 

 「アノンくん!!!」

 

 叫ぶようにルネが声をかけるが、反応はない。

 

 「な、なんで、どうして!!!」

 

 混乱するルネ。

 

 めちゃくちゃに能力を発動し、ヒールを我武者羅にかけまくる。

 

 「いやあっ!!!起きて!!!起きてよ!!!!」

 

 「あれ?まだ気づいていないの?ルネフィーラさん。」

 

 「……え?」

 

 「君の力はさ。人間にしか効果ないんだよ。」

 

 「……な」

 

 「魂の固定化っていう現象みたいでね。使っていくとスピリットは特になりやすいみたいだね。君は最初、生命全てを癒したい、守りたいと願った。だから、最初は僕もアノンもヒールをかける事ができたんだ。……でも気が付かないうちに君は人々を助けたいと願うようにチカラを使った。……アノンも僕も、そこにいるミルクも君の中の人間から外れているんだよ。」

 

 「そん……な」

 

 頭が真っ白になって、ヒールの力が使えなくなっていくルネ。

 

 一刻も早くアノンを回復させなれば死に至る。

 

 だが、回復させる手段はルネにはなかった。

 

 「大丈夫っすよ。」

 

 刹那、絶望するルネの肩に手を置くキク。

 

 どこから現れたかわからない少年は、アノンに手をかざすとまるでルネのヒールのような輝きを起こす。

 

 「ヒール」

 

 「えっ!?」

 

 「ああ、これ俺の力っす。『アストラル・コピー』。……どんな力も知ってるだけで、真似できちゃうんです。……まあ、あくまで俺が理解出来なきゃ使えないっすけどね。」

 

 ふぅ、と一息つくと目を覚ますアノン。

 

 「あれ……治ってる?」

 

 「なるほど。ハルも助けたわけか?その力で。」

 

 「酷いっすよね。同じチームで頑張った仲なのにあんなに痛めつけて。」

 

 「僕を裏切ったからだ!!!!」

 

 急に激昂するライム。

 

 まるで状況が理解できない。

 

 仲良くしていた5人組であったはずだ。

 

 彼らに何が起こったと言うのだろうか。

 

 「アンタがその力を悪用すると言うなら、オレは止めなきゃいけないっす。いや、俺らが。」

 

 刹那、キクがそう呟くと、キクの横に黒いフードを被った者たちが四人現れる。

 

 チョコ、ココア、イーネ、ハルの4人だ。隠す必要がなくなったのかフードを脱ぐ。

 

 そこに並ぶようにミルクも立つ。

 

 「記憶にあるぞ。お前らが『六魔人』。魔人族の長を守り、世界を魔族と人が生きれるように動くもの達……だったかな?」

 

 六人の魔人と対峙するライム。

 

 アノンの肩を支え、見守ることしか出来ないルネ。

 

 だが、アノンは立ち上がる。

 

 「まだだ!!ボクはまだ、負けてないよ!!ライム!」

 

 「……は?」

 

 「ボクは、君に二回勝ってる!!!ライムは今一回勝っただけじゃん!!!」

 

 「いいよ、そんなに言うなら二度と立ち上がれなくしてやるよ!!!」

 

 アノンの煽りに突撃するライム。

 

 『アクセプト!!!!!』

 

 『魔導解放!!!!』

 

 お互いに拳をぶつけ合い、一歩も引かない両者。

 

 回復した上でのアクセプト。

 

 完全にデメリットを克服したその力は先程のライムの魔力も力に変えている。

 

 ようやく互角にまで追いついたわけだ。

 

 「何があったか知らないけど!!!友達を傷つけたり、人に手当り次第当たったりダメだよ!!!そんなの!!!」

 

 「君に何がわかる!!!」

 

 「知らないよ!!!だから、聞いてるんだよ!!!なんだって聞くよ!!!それが友達でしょ!?何ひとりで抱えてんだよ!!!!らしくないことばっかり、やってんじゃねえ!!!!」

 

 「……誰も分かってくれないさ!!!僕の気持ちなんて!!!」

 

 激しく乱れるライムの瘴気。

 

 それは怒りと悲しみが、混じりあって、本人でも理解できないほどに大きな力を形成している。

 

 それに対抗しようと力を振り絞るが、アノンはどんどん押されていく。

 

 気付いてあげられなかった友達の想い。

 

 傍から見れば、何度も要因はあったはずだ。

 だが、どこか普段と変わらないライムの様子に安心していたのかもしれない。

 

 誰も寄り添うことの出来なかったライムの焦りと不安。

 

 それを刺激する周りの存在。

 

 自らの出生。

 

 父の苦悩。

  信じていた仲間の裏の顔。

 

 遠くに行ってしまう親友。

 

 自らの中に眠る恐怖という名の絶大な力。

 

 彼はそれに身を任せるしかなかったのかもしれない。

 

 ーーーーーー。

 

 力と力の激突。

 

 視界が晴れると、倒れているアノン。

 

 ボロボロで立っているライム。

 

 「これで2勝2敗だ。……決着は進級試験でつける。」

 

 「……望むところだ……」

 

 そのまま意識を失うアノン。

 

 やれやれというように回復させるキク。

 

 「何やってんっすか。俺らに任せていいのに。」

 

 「アノンはそういうやつだよ。」

 

 アノンと関わったことの無いキクは困惑し、ミルクは理解を示しながら微笑む。

 

 誰にも視線を合わせることなく、立ち去ろうとするライム。

 

 その足をハルが駆け寄り止める。

 

 「まってよ!!」

 

 どこにも外傷はない。

 

 キクに手当されたのだろう。

 

 「私たちのことはどう思ってもらっても構わない。でも、でもね!!リタルトは関係ないから!!!私たちみたいにあなたを調べてた訳じゃないから!!!」

 

 「キク、ハル、イーネ。3人ともだよ。お前らが手を抜いたから、学園祭で最優秀賞取れなかったんだ!!!」

 

 「ちが……私は、みんなが楽しめるようにって……ライムも応援してくれてたじゃん……」

 

 あまりにも心無い言葉にハルは涙を流す。

 

 その刹那、ライムは闘技場の端まで吹き飛ぶ。

 

 視線を送ると、キクとイーネが見たこともない怒りの表情で、殴ったと理解出来る。

 

 「行くよ。ハル。あいつはもう、ダメだ。」

 

 いつも間の抜けた話し方をするイーネだが、怒っているのか静かに話す。

 

 無言で手を引くキク。

 

 誰よりもハルに懐いているキクは優しく黙ってそばにいることを選ぶ。

 

 三人は闘技場を後にする。

 

 「ばか、ライム……!」

 

 肩を抑えながら立ち上がるアノン。

 

 今のライムには何を言っても無駄だ。

 

 アノンは何としても勝ち残り、一発ライムを殴ってやると心に誓う。

 

 暴走する力に身を任せて、駄々をこねるように暴れる今のライムにはそれしか方法はないのかもしれない。

 

 全員がその場を後にした。

 

 ーーーーーーー。

 

 夕暮れ時。

 

 夏休みだからか学園に人の気配は少ない。

 

 シルビアやレトも実家に帰省している。

 

 去年であれば、ルネとシルビア、アノン、ライムで遊んでいた。そんな時期だ。

 

 その事が酷くルネの心を締めつける。

 

 今日の一件はルネとアノン、六人の魔人しか知らない。

 

 聖堂で祈りを捧げるルネ。

 

 争いを拒むルネにとって、友人同士の争いは見るに絶えなかった。

 

 そして、自らの力の弱体化。

 

 誰よりも生命を重んじる彼女は、深く思い悩んでいた。

 

 魂の固定化。

 

 イリスに散々自分の魂の限界を決めるなと言われてきたのにこのザマだ。

 

 大切な人を守れなかったかもしれない。

 

 その恐怖がルネを襲う。

 

 どこか、安心していた。

 

 魔族なんてルネは出会ったことがない。

 

 村にたまに出る魔物がせいぜいい所。

 

 戦争だって、貴族と平民の小さな争いのみ。

 

 実際に起きていると今日初めて実感したのだ。

 

 魔族に生まれたライム。

 

 人に育てられ、人として生きてきたのだ。

 

 周りと違うともがきながら、それでも自分の力を信じてきた。

 

 その結果、魔族だと知り、世界を憎むことしか出来なかったのだろう。

 

 あくまで、想像に過ぎない。

 

 だが、一日に魔族と魔人族と遭遇したのだ。

 

 ルネの頭の中は混乱していた。

 

 刹那。聖堂の扉は開け放たれ、ベラが優しく微笑む。

 

 「まだ居たんですの?そろそろ帰りなさいまし。もうかなり遅いですことよ」

 

 「ベラ……先生!!」

 

 悩み苦しみ、涙を浮かべるルネ。

 

 気がつくと抱きついていた。

 

 「あらあら。どうなさいましたの?お話聞きましょうか?」

 

 「……はい!!お願いします!!」

 

 ーーーーー。

 

 テンダリアたちの卒業。

 

 ライムの暴走。

 

 六魔人の正体。

 

 ルネの力の弱体化。

 

 様々なことが巡った夏休みの一日。

 

 様々な想いを胸に、時間は過ぎていくのであった。

 

 

読んで頂きありがとうございます。


学園祭を終え一気に物語が加速し、シリアスで不穏になってきましたね。


六魔人やテンダリア、ライム、ようやく動きが出ましたね。微妙な伏線でしたが、ルネちゃんの能力の弱体化は2章の進級試験から起きています。気がついたでしょうか?


テンダリアたち卒業してしまいましたね。結局、敵なのか?味方なのか?といった印象でしょうか。


余談ですけど、アノンくんが登場すると解決しそうな雰囲気に展開してしまうなと思ってしまった回ですね。純粋すぎてズバズバ言っちゃうんですよね。展開を事前にプロットで練っていても細かいセリフとかは後で描くことになるので、わりと勝手に動いてしまうんですよね私の場合。そこにあとから整合性を持たせるみたいな描き方をしているので、矛盾してしまうことや展開が変わることも多々あります。


ここから色んなことがキャラクターたちに開示されて、大きく展開していきます。お楽しみに!

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