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3章 第6話 学園祭・前編!


 学園祭当日。

 

 アノン達は出し物の時間まで学園祭を楽しむことにした。

 

 「いやあ、それにしてもよく間に合ったなあ!坊主!!!」

 

 「えっへへ!みんなが特訓に付き合ってくれたおかげだよ!!!」

 

 「光のリベレイト……君によくあっていると思う。」

 

 アノンは特訓の甲斐あってか、リベレイトの習得を終えた。

 

 身につけた力は光。

 

 師匠であるイリスと全く同じ力である。

 

 明るく太陽のような性格のアノンには、ピッタリの能力と言えるだろう。

 

 「負けない。あなたの光でも私の闇は負けない。」

 

 「どうかな〜?やってみる?」

 「望むところ」

 

 「こらこら、ふたりとも。どうせ進級試験で戦えるんだから。」

 

 光の性質と闇の性質を持つ二人。

 

 キキはプクッと頬を膨らませてアノンに言い放つ。

 

 アノンも負ける気がしないのか、受けて立とうとする。

 

 そんなふたりを静止するテンダリア。

 

 「……まあまあ。これで無事成功出来そうだね。」

 

 「だね!!それで?どうする!!どこからまわる!?」

 

 学園の前に集合した5人。

 

 一緒に学園祭を回るようだ。

 

 アノンは外に出ている屋台や展示に胸を踊ろせている。

 

 「主!!あれ、あれ食べたい!!!」

 

 先程までアノンに宣戦布告していたキキも、屋台が目に入るとはしゃいでいる。

 

 「うん、いいよ。買ってあげよう。」

 

 「やった……!」

 

 「おめえはなんか食うのか?」

 

 「お前ほどは食べないな。」

 

 「んだよ、たまには付き合えよ。」

 

 「ふっ、それもそうだな。」

 

 キキに手を引かれ、ついて行くテンダリア。

 

 やれやれと言った様子でついて行くバロゼとミルク。

 

 バロゼの両手には串焼きが既に数本握られている。

 

 アノンはあちこち走り回り、屋台や展示を回っている。

 

 キキはテンダリアにわたあめを買ってもらうと、瞳を輝かせる。

 

 「主……かってくれた!」

 

 「今はこんなものが売っているのか。」

 

 キキは美味しそうにかじりつくと、口の周りいっぱいに砂糖をつける。

 

 その様子を不思議そうに見つめるミルク。どうやら見るのは初めてのようだ。

 

 「おん?見るの初めてか?」

 

 「ああ、田舎に住んでいるものでな。」

 

 「魔力によって文明が発達したが、それは人間に扱えるものでは無かった。人間は躍起になって科学技術を発展させたんだ。そのひとつに食べ物の加工や天然に依存しない物を作り出したんだ。」

 

 「ま、街や国に結界張ってんだ。外は魔物や魔族が沢山いる。金のねえ、村人や平民が栽培してた天然物は手に入れづらくなったからな。」

 

 ミルクの疑問に対し、テンダリアとバロゼが解説してみせる。

 

 「なるほど……」

 

 興味深そうに頷くミルク。

 

 「あげない……!」

 

 「とらないよ。」

 

 口いっぱいにわたあめを入れると、渡さないという姿勢を強く見せる。

 

 ミルクは微笑ましそうに取らないことを誓う。

 

 顔がわたあめでベトベトになったキキの顔を、テンダリアがハンカチで拭く。

 

 「ほら、キキ。欲張らない。顔汚れてしまったじゃないか。」

 

 「ご、ごめんなさい……」

 

 テンダリアに注意を受けると、しょんぼりして落ち込むキキ。

 

 「綺麗な顔をしているんだ。勿体ないよ。」

 

 「主……!」

 

 だが、すぐにテンダリアが微笑むとキキも笑顔になる。

 

 「むぅ、テンダリアには笑うよね。キキってさ。」

 

 やや不貞腐れたように話すアノン。

 

 「湿気たツラすんな!ほら、これ食え!!」

 

 不貞腐れるアノンの口に串焼きを突っ込むバロゼ。

 

 「むぐっ!」という声とともに咀嚼すると、「う、うま!!!!」と喜んでみせる。

 

 「馬じゃねえぞ?」

 

 「わかってるよ!」

 

 ミルクは先行する4人に微笑みながらついて行く。

 

 傍目からは分かりづらいが、かなり楽しそうだ。

 

 ーーーーーー。

 

 「そ、それでは!午前の部、始めます!!あ、あくまで、私たちの解釈ですが、楽しんで貰えたら幸いです!!……それでは、『天使が夢見た世界』です!どうぞ!!」

 

 教室の一角。

 

 催し用のステージにはリタルトが立っていた。

 

 拍手が湧くと、リタルトは下がり教室の明かりは消え暗闇に包まれる。

 

 ーーーーーーー。

 

 『天使が夢見た世界』

 

 ''世界は人と魔族の争いの最中。

 各地を癒し手と勇者、剣士が巡っていた。人は彼らを『救済の天使』と呼んでいた。

 世界を救済する旅。その道中、勇者ルキは一人の魔族と出会う。''

 

 ナレーションが終わると、スポットライトが少年と少女に当たる。

 

 「追い詰めたよ。もう、人を殺すのはやめるんだ。」

 

 「ちがう!!違う違う!!私は人間よ!!魔族なんかじゃない!!」

 

 「でも君は魔力を使って、人を殺したよね。」

 

 「それは……襲ってきたから!!誰も信じてくれない!!私は人間よ!!」

 

 「そっか。それは大変だったね。」

 

 「……え?信じてくれるの?」

 

 「うん。だって、人間なんでしょ?事情も仕方ないとわかった。」

 

 「は?……あなたどういうつもり?」

 

 「でも、強い力を持ってるのに、殺してしまうのはいけないね。」

 

 「なら、どうしろと!?黙って殺されろって言うの!?」

 

 「うーん。ならさ、一緒に来なよ。君が人間だって、人は傷つけないって証明すればいいんだよ。どうかな?」

 

 「……え?」

 

 「俺はさ、夢見てるんだよ。誰も悲しまないそんな世界を。きっと世界は美しいからさ。」

 

 「なによ、それ。変なの。」

 

 困惑する少女。

 

 微笑む少年。

 

 "この日、勇者ルキは一人の魔族『メア・ギャビー』と出会う。"

 

 メアは最初こそ、困惑していたものの仲間と楽しい時間を過ごしていく。

 

 その様子が軽快な音楽とともに流れていく。

 

 曲調は2転3転し、リズムや演出は変わっていく。

 

 買い物やお茶会で、女の子同士で仲良くなっていくメアとウル。

 

 日々の戦いの中で、友情を強めていくルキとビスラ。

 

 いくつもの街を楽しく歩き、人々を救っていく。

 

 それは時折々、状況や場面に合わせて協力していく4人。

 

 時にはビスラの癒しの力で。

 

 勇者の優しさで。

 

 剣士の強さで。

 

 悲しい表情しか浮かべてこなかったメアも仲間と時間を過ごすうちに柔らかい表情をするように変化していく。

 

 合間合間に挟まれるダンスはどんどん息があっていく。

 

 次第にルキとメアは支え合い、寄り添うようになっていく。

 

 そして、ついに魔族の王を説得し、争いは一度収まる。

 

 その報告をしに王国へ戻る中、人間の兵士に囲まれるという自体に襲われる。

 

 「なに、どういうこと?」

 

 「なんのつもりだ!!我らは魔族との交渉を終えた勇者一行であるぞ!!」

 

 「癒しのビスラ、剣士ウルローズ、勇者ルキファー。貴様らには国家反逆罪の嫌疑が掛けられている!!そこにいる『メア・ギャビー』は魔族であり、多くの兵士を殺している!!大人しく渡すが良い!!」

 

 「なっ!?ふざけているのか!!!世界を救った天使だとさんざん祭り上げて、この仕打ちか!!」

 

 「問答無用!!!」

 

 「メアっ!?」

 

 兵士の一人が容赦なく、メアに斬りかかる。

  その斬撃からメアを守ろうと、ウルが間に入る。

 

 「え……」

 

 何も反応することが出来ず、命を落とすウル。

 

 メアは目の前で大切な友人を殺される。

 

 「くっ!……逃げるよ、みんな。」

 

 涙と怒りを堪えて、メアとビスラを引っ張り逃げるルキ。

 

 「離してっ!!離してくれ!!ルキ!!僕の力なら、ウルを助けられる!!だから!!!」

 

 「ダメだ!!お前の命を削る力だ!!命の再生なんてしたら、お前は死ぬんだぞっ!!!」


 

 「でもっ!!!! 」 

 

 泣きじゃくるメア。歯を食いしばるビスラ。怒りをこらえるルキ。

 

 "彼らは再び、争いの世界を目の当たりにする。貴族や兵士から魔族を守る戦いが始まり、メアとともに逃げる旅が始まった。

 世界全体が、ルキ達に襲いかかる。理由は簡単だ。多くの魔族を倒すだけの力。王国側はその力を恐れた。

 メアが魔族であるということを口実に危険因子の排除に動いたのだ。

 世界を救った天使たちは間違いなく、王国側の魔族攻撃と結界展開に意義を立てると踏んだからだ。"

 

 床に手を付き跪くルキ。泣きじゃくるメア。

 

 傍らには倒れるビスラの姿。

 

 流石の天使と言えど、連日連夜襲われては力が持たなかった。

 

 ルキが力尽きると、ビスラは惜しみなくその命を使った。

 

 「良かった。今度は……守れた……」

 

 「また……守れなかった!!」

 

 「そんな顔しないで……君のせいじゃない。」

 

 「俺のせいだ……俺のせいだよ!!俺が、理想を語ったから!!」

 

 「なら、もういいじゃん。……自分のために、力を使えよ、親友。もう、苦しまなくていいんだよ。」

 

 「くっ……大好きだよ、ビスラ。永遠に俺の親友はお前だけだ。」

 

 「ああ、最後に聞けて……よか……た」

 

 力無く微笑み、息絶えるビスラ。

 

 「クソっ!!!クソっ!!!」

 

 怒りのまま地面に拳を打つけ、何度も言葉を繰り返す。

 

 涙が止まらず、何度も拳を打ち付けていく。

 

 「もうやめて!!!」

 

 「うるさい!!!」

 

 見かねて、メアが止めに入るがルキに吹き飛ばされる。

 

 「……メア。俺はもう、疲れたんだ。勝手に滅びてしまえばいい。こんな世界……」

 

 「まって!!!まってよ!!!ルキ!!」

 

 憎しみが消えないルキ。

 

 去っていく背中を止めようと追いかけるメア。

 

 だが、たどり着くことは出来ない。

 

 ルキはそのままどこかへと去っていく。

 

 「いつか……必ず。迎えに行くから。あなたが夢見た世界を実現させてみせるから。」

 

 涙を堪えるメア。

 

 強い想いを胸に立ち上がる。

 

 そして再び暗転。

 

 場面が変わると、幼い少女が泣いている。

 

 転がる魔族と人間の死体。

 

 「すまない。助けられなかった。」

 

 「いいえ。もういいんです。私も殺してください。」

 

 「それはできない。」

 

 「どうして?」

 

 「両親の犠牲を無駄にするつもりか?君を守ったのだろう。」

 

 「でもっ……でも!!!こんな世界で生きていても!!!パパもママも居ない……!!魔物や魔族も沢山いる!!こんな世界生きていても意味なんてないよ!!!」

 

 「私もそう思う。だからこそ、変えたいんだ。」

 

 「変える……?」

 

 「そう。魔族も人も笑えて、大切な人を失うことなんてないそんな世界に。」

 

 手を差し出すメア。

 

 「そんなの無理ですよ」

 

 「なら、一緒に来てくれないか?……君に見届けて欲しい。」

 

 

 「こんな世界はもう嫌です。世界を救えると言うなら、救ってください。……私に見せてくださいよ。」

 

 「ああ、そのつもりだよ。……一緒に来てくれるか?」

 

 「はい。……私はイリス。イリス・グレイス。あなたは?」

 

 「私はメア・ギャビー。かつて、天使と呼ばれていたよ。」

 

 

 

 差し出された手をイリスが握ると再び暗転。

 

 場面が変わって再び、スポットライトが当たる。

 

 派手な戦闘シーンが挟まれ、回転したり飛んだり剣を振り回す少年が登場する。

 

 一度暗転するとメアとイリスが少年の元へと現れ、ライトに照らされる。

 

 「俺を仲間にしたい?俺の剣は人殺しの剣だ。あんたらみたいに大義名分がある訳じゃねえ。」

 

 「それでも、君はこの世界が間違っている。そう思っているはずだ。その想いに私たちの夢を重ねさせてくれないか?」

 

 「復讐の剣じゃない。正義のための剣です。」

 

 「俺なんかでいいのか?」

 

 「君がいいんだ。だめか?」

 

 「ったく、しょうがねえな!!」

 

 後ろめたさがあるようだが、快諾してみせる少年。

 

 「俺はクバーツよろしくな!」

 

 切り替えるように自己紹介を終えると、再び暗転。

 

 曲が流れ三人は歩き続ける。

 

 魔物を倒し、人々を救う。

 

 それは魔族、人を問わず命を救う冒険だ。

 

 どんな偏見に晒されても、たとえ助けた人に白い目で見られてもメアは進む。

 

 そんな後ろ姿に黙って着いていく二人。

 

 激闘の末、魔王を封印し、世界を救ってみせる。

 

 そこにはもう、メアの姿はなく、あとを託されたイリスとクバーツは手を取り合い進んでいく。

 

 かつての師匠のように。

 

 天使と呼ばれた少女が夢見た世界を作るために。

 

 再び暗転し明るくなると、白い空間が広がる。

  どこか分からないその場所に1人の少年少女。

 

 明るくなったおかげでルキとメアを誰が演じていたのか分かる。

 

 ライムとリタルトの2人だ。

 

 二人は微笑みあうと、キスをする。

 

 会場は大きな拍手に包まれ、「ヒューヒュー」と声が上がる。

 

 ーーーーーーー。

 

 やまない拍手。どうやら、大成功で終わることが出来たらしい。

 

 観客席を見ると、号泣するキキとアノン。

 

 「うわあああん!!よかったね、メア、ルキ〜!!」

 

 「素敵すぎます……!!」

 

 ーーーーーー。

 

 美化された自分たちに赤面するクバーツとイリス。

 

 「お前あんなに素直じゃなかったろ。」

 

 「う、うるさいな。ところで?オタクの息子さんキスしてましたけど〜?」

 

 「ばっ、あれは演技だよ。うん、きっと。」

 

 ーーーーーーー。

 

 「ワタクシが出てませんわ?!」

 

 「まあまあ、私も出てないから〜」

 

 自分たちが出ていないと少々ガッカリしつつ、拍手を送る。

 

 ーーーーーー。

 

 「主、途中で抜けて良かったのか?結構面白かったぜ?」

 

 「ああ、少し御手洗に行っててね。盛り上がってたから外から見てたよ。」

 

 「……そうか。……キキ、号泣してたぜ?」

 

 「茶化すなよ。きっと、彼女の心に刺さったんだよ。素敵でいいじゃないか。」

 

 「そんなもんか?」

 

 「ああ。大事なことだ。」

 

 教室の外から観客席を見つめるテンダリアとバロゼ。

 

 「こんなところにいたのか。2人とも、アノンとキキが泣いて大変なんだ。来てくれ。」

 

 教室から早足で出てくるミルク。ふたりを見つけると、安心したように話しかける。

 

 どうやらミルクでは対処出来なかったようで、少し焦ったように話す。

 

 「あははは、しょうがないなあ。」

 

 

読んで頂きありがとうございます!


学園祭の話と絡めて過去のお話も絡めてみましたが、いかがだったでしょうか。(あくまで、リタ達の解釈ですが)


かなり尺を取っている学園祭ですが、着実に人間関係の変化が起こせているかなと思っております。


楽しんで頂ければ、幸いです!では、また明日読んで頂けると嬉しいです!

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