第二話 ナイスなバディの女神様
真っ白な空間でキョロキョロ辺りを見回してると、いつの間にか昨日のおねーさんがいた。
さっきまでいなかったのにね。
それにしても、ほんっとナイスバディだよね。肌も白いから髪と目もキラキラして見えるし。
うん。でもやっぱ胸見ちゃうよね。
あんなボリューミーなもの、ペラッペラのうっすい服で隠れそうにないもん。見えそうだもん。目がいくよね。
……いいなぁ、あの胸。羨ましい。
わたしはママ似でツルペタだったもんね。
マヨネはわたしより胸あるけど、ここの世界の人たちって皆胸大きめだから、結局平均より小さいんだよね。
どうせ転生するんだったらおねーさんみたいなナイスバディになりたかったなぁ。
そんな事考えながらじっと見てたら、なんか手で隠された。
「……少しは落ち着いたようですね」
両腕を組んで胸元を隠しながら、おねーさんが話しかけてくる。
「えっと……どちらさまですか?」
「私はこの世界の女神です」
女神様だったんだ! なら美人なのもなんか納得。
一人うんうん頷くわたしに、女神様はちょっと不思議そうな顔をしてた。
「わたし、この世界に転生してきたってことですよね?」
まぁ間違いないだろうけど一応確認すると、女神様はすっと表情を最初の澄ました顔に戻して頷いた。
「そうです。あなたは百万人目の転生者になります」
「ひゃくまんにんめ??」
転生ってそんなにたくさんするもんだっけ??
びっくりしてるわたしに、女神様は涼しい顔でそうですって返してくる。
「あなたには百万人目の転生者として、他の転生者たちやこの世界の人々を導くために必要な能力を授けることができます」
「そんなの無理だって!」
導く? わたしが?
わたしフツーの……正直言うとフツーよりちょっぴりできない女子高生だよ?
マヨネだって普通の学生だし。
誰かと間違えてるんじゃないの??
「っていうか、それってわたしより他の人の方が……」
「百万人目という名目がなければ授けられないのです」
女神様、ものすっっっごく仕方なさそうに私を見るけど。
そんなの宝くじみたいに前の人とか次の人とかに前後賞とか適当に理由つけてあげたらいいじゃない!!
「そりゃあね、私だってもうちょっと、なんていうの? 安心して任せられる人がいいわよ」
真っ白な空間にピンクのもふもふの絨毯とローテーブル。いつの間にかド真っ青のジャージの上を着込んで前をぴっちり閉めた女神様と向かい合って座るわたしの前には、紅茶の入ったティーカップと美味しそうないちごのショートケーキ。
女神様の前には細長いグラス。白ワインっぽいけど、少し泡が上がってるからシャンペンだかシャンパンだかいうやつなのかもしれない。
話が長くなりそうだからって、女神様が用意してくれたんだけど。
世界観おかしいってば。
女神様はグラスの細いとこをつまんで優雅にひと口飲んでから、おっきな溜息をついてそんなことを言うんだけど。
何気にひどいこと言われてない?
「急いで多くの魂を受け入れる必要があったから。浄化せずに生まれ変わらせると、大抵何年かで記憶を取り戻すのよね」
「それが転生者……?」
「そういうことになるわね」
それが百万人……。って、なんでそんなことに。
そう思ったのが顔に出てたのか、女神様はこれでも少ない方なのよ、と笑う。
「あなたたちの世界が滅亡しちゃって。浄化が追いつかないから、他の世界で手分けして受け入れたのよね」
滅亡? 他の世界?
なんだか頭が追いつかないよ。
女神様、聞き流していいわよって言ってくれた。
……うん、忘れよう。必要ないもん。その方がいいよね、きっと。
頑張って頭から追い出そうとしてると、とたんに女神様が残念そうな顔をしてわたしを見てくる。
「……少しでもこっちの混乱を抑えるために、なんにも突出してない人を選んだっていってもねぇ……」
「突出?」
「簡単に言うと凡人ってことね」
ひっど!!!
そうなんだけどなんかひどいよ!!
ふくれるわたしに気付いて、女神様はふふっと笑う。
「この世界は今の状態でちゃんと成り立っているから、過ぎた技術も知識もいらないのよ」
そう言う女神様は、ものすごく優しい顔をしてた。
……ジャージ姿だけどね。
マヨネの記憶があるから、わたしだってこの世界の事はわかってる。
よくある転生モノみたいに隣国や魔物が攻めてきてとかもないし、勇者も聖女も魔族もいない。
元の世界ほど色々便利でもないけど、皆穏やかに暮らしてる。
……あれ? それじゃあなんでわたしに能力を授ける必要があるんだろ?
「じゃあわたしは何をすればいいの?」
人々を導けとか言われたけど。
必要なくない?