第一回星空会議 閉会
「悪いがオレは人間となんか仲間になるつもりは無い。お前らだけで勝手にやっていろ」
諸々の話も済み、これからの行動に考えを移行していこうと思った矢先、十二星座龍の一人が俺に不服そうな顔をして宣言してきた。
「えっとお前は確かクアリだったか」
「お前が付けた名であればそうだ」
間違えないか心配だったが合っていたようだ。
まあ、一人一人が見た目からして個性的だから覚えやすいんだけどな。
「どうしてだ? お前はそんな奴じゃ 無かっただろ」
「昔がどうでも、今オレはお前らと違って簡単に気持ちに折り合いつけられてねえんだよ」
「……そうか。じゃあオレらからは何も言えないな。悪いシエル」
レオンはクアリとの問答の後、他のみんな含めて何かを察したかの様に納得し、俺に謝罪した。
どうやらこいつらにも触れてはいけない過去があるようだ。
「お前が謝ることじゃない気にすんなレオン」
他の奴らも済まなそうな顔をしてこちらを見ている。
事情を深掘りはしないがこの空気はどうにかしたい。
それに俺は色々と察した上でクアリと話さなきゃいけないことがある。
「話は分かった。クアリがそうしたいなら好きにすればいいと思う。それは止めない。けど、俺は俺で勝手にク
アリも含めて友達みたいなものだと思っている。だから気が変わればいつでも協力してくれていい」
「……オレの気が変わることは多分無い。お前がどう思っていようがそれは変わらねえ。問題はもっと根本にある
ものだからな」
思っていた以上に溝は深いみたいだ。
ならば仕方ない、強行突破だ。
「分かった。ただ、少しばかり力は貸してもらう」
「協力はしないって言ったろ」
「協力じゃない。みんなが持っている力を貸して欲しいんだ。ほら、魔力ってやつ」
「何でオレがわざわざお前に?」
「家賃ってことで」
「家賃!?」
これが俺が考えた方便だ。
協力しないのはお前の勝手だが、何もせずに人の中にただ居座っているのはどうなのかという所をついた作戦
だ。
「もちろん他のみんなからも協力とは別に魔力を家賃として貰うつもりだ」
「オレたちは別に良いが、何でまた魔力が欲しいんだ?」
「俺には戦う力が何もないからな。目的達成の為にはそのくらい貰っておかないと色々と厳しいだろう」
「全部オレたちに任せれば良いのに」
「理由は幾つかあるけど、それじゃダメなんだ」
さっきみたいな派手な戦いを毎回されてたんじゃ悪目立ちしまくって情報収集すら出来ない。
それに強大な力を持っているとバレたら四六時中誰かに狙われることになるだろう。
それこそ世界を救う際の障害になりそうな悪い奴らにな。
「でクアリ、お前はどうするんだ。払うのか? 払わないのか?」
「くっ、分かった。与えられた名と居場所と引き換えの最低限の謝礼だ。あくまで家賃だ。これ以上の協力はし
ない」
「ああ、そこは承知している。これ以上の無理強いはしない約束する」
これで俺は最低限の戦う力を得た。
使えるかどうかは知らないが無いよりはマシだろう。
やっと話し合いが終わり本格的に行動に移せそうだ。
「話も良い感じにまとまった事だ、そろそろ行動に移そうか」
「でも、具体的にどうすれば世界を救ったことになるんだ?」
「単純に世界を脅かす存在と戦い退ける事だろ」
それ以外に思いつくものも無いようなので当面はこの方針でいく事となった。
「というか、心の中から現実世界に戻るにはそうしたら良いんだ。レオン知ってるか?」
「戻りたいって思えば良いんじゃないか? 心の中だし」
「確かに、やってみる価値はあるか」
言われた通りに現実に戻って目覚める事をイメージしようとした時、良いところでレオンが止めてきた。
「ちょっと待ってくれ。このままずっと突っ立てるのも辛いから全員分の椅子とテーブルを出してくれ」
「出すってどうやって?」
「さっき言ったのと同じでイメージして思うだけだ。現実世界に戻る前の練習だと思ってやってくれ」
「うーん」
自分を含めた十三人分の椅子。
全員が話せる様なテーブル。
両方が実現できる様にイメージをする。
やがて自分の中でイメージがはっきりと輪郭を描き出したのと同時に、目の前の空間に同じものが現れたのだった。
大きな円卓に十三個の椅子。
デザインは星空を思わせる様な感じに仕上がっている。
これはみんなの印象が少し思考に入った結果だろう。
「これで良い?」
「ああ、ばっちりだ」
「じゃあ、俺はもう行くよ」
今度こそ俺は心の中から出るよう意識した。
まだまだ話せていない奴が沢山いるけど、そいつらとは後で一人づつゆっくり話そう。
やがて俺の体はゆっくりと世界に溶けていき意識も深く沈んでいった。
そして、俺の心はみんなに見送られながら現実へと向かったのだった。