4話 魔力とエーテルの授業
土龍暦1054年 4月10日 春の季節
マルドリウス王城の一室にて
「さて皆さん、本日は魔法とエーテルについての授業になります」
『この女性はエスメロード=ヘンリエッテ先生だ。
エスメロード先生は茶色の癖がある髪の毛をしており、自分の身長と同じくらいの高さの杖を片手に持っている。
王城に勤める前は冒険者として魔物を討伐したりして、国を跨いで旅していたという経歴を持っている。
先生の持っている杖の先端部分には緑色の宝玉が取り付けられている。
エスメロード先生の見た目は30代だが実は40才という、童顔の持ち主であり、話す口調も穏和な喋り方をしているため生徒に人気がある。
その童顔とは裏腹に魔力の使い方に無駄がなく、必要最低限の魔力で的確に魔物を仕留める凄腕の魔法使いなんだそうだ』
「最年少のジルフレッド君!主な魔法の属性を全て答えなさい」
「はいっ!属性は火、水、風、土、光、闇、石、雷、氷、の9属性です」
『その通りです、良くできました。この他にも未確認の属性を持ったものがあると考えられていますが、今挙げられた属性以外の物は未発見になっていますね。
では次に属性魔石や、火属性のカイロ(使い捨て道具で属性のエーテルを含んでい魔法の発動に使えるようにした物)(以下〜属性のカイロ)のこの国での主な生活での使用用途について簡単に解説していきます』
「火属性の小さな魔石の使い方は皆さんも知っての通り冬の季節に暖炉に入れ、ほんの少しの魔力があれば誰でも火属性魔法を発動して火を点けたりします。
それでは水の魔石についてはどうでしょうか?
ヤルバルさん答えなさい」
ヤルバルさんはジルフレッドより4つ年上で魔法研究所に配属している女の子だ。
身体はとても細いが身長はジルフレッドより少し高く肩まで緑色の髪の毛を伸ばしている。
少しそばかすがあるがそれがとても可愛い
ヤルバルさんは答えた。
「はいっ、井戸に放り込んだ後カイロに魔力を送ることで井戸水を溜めて民の生活に役立てています」
「はい正解です。ヤルバルさんにはこの問題は簡単すぎましたね」
『エスメロード先生は、わからないところがあれば丁寧に解説してくれる』
とても面倒見が良く冒険者として旅をしていた先生なのでジルフレッドは王城の外へ出たことがないため、外の世界へと興味が湧きエスメロード先生を師と仰ぎ旅の話を何度か授業以外で聞かせてもらったことがある。
午前中にハインツや騎士達との剣術、盾術の訓練の後で昼食を食べ、午後からはエーテルに関しての使い方や魔法防御の仕方をエスメロード先生から教わる。
『まだ未熟だから座学だけだけれども』
と内心ジルフレッドは早く実技の魔法訓練もしたいなと思いながら授業を受けていた。
この授業にはジルフレッド以外にも見込みのある訓練兵やエーテルを攻撃や回復魔法に使用する他の生徒も参加している。
ジルフレッドを除いて約30人ほどだ。
王城の一室で教えるのは魔法の素質が高い者や研究者、はたまた将来的に将軍になるものを選んでいるということ。
普通の貴族や騎士、魔法兵にはそれぞれ騎士学校や魔法学校に通う。
「ではヤルバルさん、続けて現在確認されているクローシュ(無尽蔵のエーテルを有する物)を答えなさい」
「エスメロード先生の持っている杖に埋め込まれた宝玉がクローシュであり、杖の名を【疾風】、魔剣士ハインツ様の魔宝槍の柄【迅雷】、魔法大国の水の鉱石【命水】、ルシエダ共和国の土の城【霊土】の4つが確認されています」
『エスメロード先生の持っている宝玉はマルドリウス王国内に魔物がはびこる古い遺跡から発見し、命からがら持ち帰ったそうだ』
「これまた正解ですね。世界に9つしかないと言われているクローシュの内2つは王国にあります。共和国との戦争で私が破れたらルシエダ共和国にクローシュが奪われてしまいます。共和国に2つのクローシュが集まってしまうとパワーバランスが崩れて、帝国と共和国の戦争は今より激化してしまうと国王様は考えておられます。ですので私は戦争に介入しないのでこの杖は活躍する可能性は低いでしょう。
魔法大国のクローシュ【命水】も水を生み出すクローシュだそうなので生活に欠かせない財源となる水のクローシュを戦争に持ち出すとは思えません。
ルシエダ共和国のクローシュ【土霊】は基本的には城として動かせませんので帝国の方から敵城に攻めこまない限りは脅威にならないでしょう」