1話 生誕
【第一部第一章】幼少期編ー無能の価値はー
とある王城の一室での出来事。
マルドリウス王国と隣国のルシエダ共和国との3ヶ月にも及ぶ戦争の合間にて。
「でかしたぞマルチナ!!」
バタンとドアを開き勢いさながらに部屋へと入って来た人物がいた。
頭には派手な装飾が施された冠、背中には真紅のマントを羽織り、首から下には黄金の甲冑を身に着けた身長2mほどあろう大柄な男が部屋に入るなり大声を出しそう言い放った。
マルチナと呼ばれた女性はベッドから身を起こした。
女性のほうは金髪碧眼で穏和そうな見た目をしており、
とても美しい女性である。
「そんなに大きな声を出してはこの子がびっくりしてしまいます。
それにそのお姿、戦場から帰還したばかりなのでは?」
「我が子にそのような小者はおるまいて」
男はフハハと笑いマルチナにそう告げ、産まれて一ヶ月ばかりの赤子をベビーベッドから抱き上げる。
「余にとっては第三子とはいえお前には一人目の子なのだ。身体は大事ないか?」
「ええ、この子が無事に産まれてきてくれて一安心しました」
「そうか、このところ少し咳が出ていたと侍女長から私の所まで連絡が来ていたので少々心配であったが杞憂だったようだな」
「身体の方はもうすっかりよくなりました。それよりこの子の名前を考えて下さいましたか?」
「ああ、それならばもう決まっている。お前はジルフレッドと名付けようぞ」
「この子の名前を用意していてくださったのですね」
「ああ、産まれる前から戦場でもそのことで頭を悩ませていたぞ。
我が子のため隣国のルシエダ共和国の腰抜け共との戦争を中断してまで帰還してきたのだ。
余とお前の子なのだ、きっと優秀な魔法の使い手となるであろう!」
土龍暦1044年 4月3日
第16代皇帝ガンドルフ=マーガス王と正室にして魔法の才女と呼ばれた魔法大国の女性マルチナ=マーガスの子ジルフレッド=マーガスが誕生した。