2020年代のweb小説考
カクヨムの小説検索は2023年01月18日に劇的に改善、していたらしい。(今更気付く)
なろうの数字の落ち込みには触れながらも、正直まだかなり悠長な気分で構えていたな、と感じる。
以下にInternet Archiveで取得した、小説家になろうの小説閲覧数の推移を掲げる。
前提としてこれらは、小説家になろうがKASASAGIにおいて公式で出している数値だ。
2020年から2021年にかけて平日7000万超のピークを形成し、その年末頃から急落、現在平日値では6000万台を割るのが常態化しつつある。(※1)
本稿ではこの変化を考察し、web小説史理解の一助とすることを目的とする。
2020年以降に起きた小説家になろうの変化として挙げられるのが、まず急激な異世界恋愛シフト。
そしてランキングという場における、「短編」「完結済」作品の急増である。
これらはいずれも2020年03月03日に実施された、「評価フォームの機能改修」(※2)以降の現象であり、ユーザのポイントに関わる活動に極めて大きな影響を与えたものと思われる。
それ以前の小説家になろうがどんな場所だったか、ということに関して一例を示す。
2019年時点の小説家になろうを見てみると、ポイントの7割超がブックマークに由来するものであり、「ブックマークを多く集めた作品が上に行く」という、極めてシンプルなルールが支配する場所だったと言える。
一方現在はどうか。
活動している人員の規模という点に関しては、依然として「ブックマークを入れて連載中作品を読んでいく」というものが、アクティブユーザ中最も多数派の集団であるかと思われる。
しかしながら、
ポイントで見た場合、彼らの存在というのはほとんど無価値だ。
そもそも評価ポイントというのは、ブックマークに比して5倍のポイント量を送り込むことが可能なシステムであり、旧来のブックマーク型のユーザなど少数人員で圧倒できる。
それらを稼ぎやすい短編及び早期完結済(※3)作品が、総合ランキングの表紙部分に蓋をする構造が形成され、連載中作品への主要な導線が消失した状態が続いている。
その結果として進行しているのが、外のサイトへと移住する流れ。
現状のペースで推移した場合、おそらく今年を通じて小説家になろうとカクヨムの期間投稿量は横並びとなり、来年あたりには逆転するものかと思われる。(※5)
そもそもとして「連載中」作品投稿に限ってみた場合だと、昨年夏の段階ですでにカクヨムが上回ったようであった。
この移動は何も作者のみに限った話ではない。
まず新作連載作品を月間ポイントの多い順で見た場合だと、ブックマークは小説家になろうの方が多いようだ。
ジャンル別ランキングが前面に出ている関係上、太い導線が分散しており、初動に関しては出やすいのだろう。
一方でこれが年間ポイントまで行くと、両者の差はほとんど無くなる。
また表上で男主人公作品を色分けしたのだが、おそらく男性向けだろう新作連載作品の閲覧に限って言うならば、すでにカクヨムシフトが完成しつつあるように思われる。
アニメ化本数過去最多、圧倒的な商業上の知名度を有しつつも、それでなお埋め尽くせないほどに、「連載中」作品の追放が進む。
もう遅い、と宣うつもりはないが。
評価フォームの機能改修はただただブックマーク価値の毀損、読者という実態を伴わないまま、ポイントなる数値だけが空虚に膨れ上がった、と感じてならない。
(※1)2020年度値との比較。
月間値で最盛期比4億PV程度を消失し、コロナ禍以前2019年度との比較でも、1割強下回る推移を示す。
折り線グラフだと見にくくも感じたので。
最初のグラフで月曜まで除外しているのは、月≧土となりがちなことから。
(※2)https://blog.syosetu.com/?itemid=4126
(※3)平均文字数としては28,000字台。
(※4)R-18部門を含まない。
similarwebを参照するに、PVとしては2割弱ほどか。
(※5)昨年03月時点で出回った「カクヨムがなろうの投稿量を上回った」というツイートに関しては、あくまで季節性かつ一時的なものであり、適切では無かったと思われる。