6話 竜胆さんとの約束
初日にして、もう友達と言えるほどの関係を築いた私と竜胆さんは現在、とある儀式を行っていた。
向かい合って座った状態のまま、お互いテーブルの上に少し身を乗り出し、手を動かす。
「ここをこうして、こう」
「これで合ってる?」
「そうそう……で、これで完了! 完璧!」
「そうなの……ありがとう、小森さん」
「いえいえ! 操作を教えるくらい全然!」
竜胆さんにLIMEでの友達の追加方法を伝授していたのだ。そう……これは小森一族秘伝の技(違う)
驚いたんだけど、実は竜胆さん、家族以外のLIMEは持っていないらしい。ってことで、私が一番最初の友達……そんなの私が貰って良いのか!? 特別感がやばい。
「それだけじゃなくて、その、友達になってくれたことも……感謝しているわ」
……っ!? きゅんです。キュンキュンです!!
「それを言うならこちらこそありがとうっていうか……いや、むしろ私と出会ってくれてありがとう、みたいな?」
てか、産まれてきてくれてありがとう、って感じ。
「それで良かったらなのだけど……これからも……一緒に帰らない?」
「帰ります。もちろん」
私は脳で言葉を理解する前に、反射で答えていた。つまり、私の遺伝子に刻まれた本能が姿を現したということだ。
竜胆さんの前では理性など吹き飛んでいってしまうというのか……恐ろしい。
「でも私は登校も一緒がいいけどな……」
まだ理性は戻ってきていなかったようだ。思ったことがすぐに口から出てしまった。
会話をする時はちゃんと脳で考える過程を経由ほしい。でないと脊髄反射で会話する浅い女になってしまう。
私には優秀な脳があるのだからしっかり深く思考しながら会話したい。思慮深く、知性あふれる女を目指すのだ。
「登校も一緒に? 良いわね、実は私もそうしたいと思っていたの」
「え!? いいんですか!!?」
「えぇ。こちらからお願いしたいくらいよ」
「やった! じゃあ明日からよろしくね!!」
「こちらこそ、よろしく」
今日はなんて素晴らしい日なのだろう。全てが良い方向へと進んでいる。(反省文なんて私は知らない)
竜胆さんと一緒に登下校……大丈夫かな? 竜胆さんファンクラブの人とかに刺されたりしないかな? 心配になってきた。歩く時は常に背後に気を付けておこう。
「竜胆さんの部屋は何階なの?」
「二階の角部屋よ」
「なるほど……私は五階なんだよね。だから、朝はエントランスに行く途中で竜胆さんのお部屋に寄るね。そこで集合してそのまま学校に行く感じでどう?」
「えぇ、それで大丈夫」
「了解。時間合わなそうな時はメッセージ送るからね!」
「分かったわ。私もそうするわね」
「はーい!」
今ここに、一緒に登下校しよう同盟が発足致しました。ありがとうございます。ありがとうございます。
「明日も学校あるし、そろそろ帰る?」
「そうね、帰りましょうか」
帰り支度を済ませ、会計をしてマンションへと戻る。
もちろん、隣には竜胆さん。幸せ過ぎるぅ!
だが、その幸せはとても儚かった。直ぐに家に着いちゃったからね!(血涙)
「それじゃあね、竜胆さん!」
「さようなら。また明日ね」
二階でエレベーターを降りる竜胆さんとは、ここでお別れだ。
少し寂しいけれど、明日も朝から会えるんだから我慢しよう……!
いや〜、それにしても今日は非常に素晴らしい一日であった。今までの私の人生で一番と言っても過言ではない。忘れないようにしっかり日記に書いておこう。きっと1ページではとても書ききれないだろうけど。
それほど濃密な時間が、今日という日に詰まっていた。
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