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48話 球技大会前夜、クラスTシャツを手に取って【竜胆 朱音 視点】


 その夜。(竜胆 朱音)は明日の球技大会に向けての準備を進めていた。

 球技大会は学校の近くにある区営のスポーツセンターで行われるのだが、集合時間が少し早いので今日のうちに準備を終わらせておくのだ。

 日焼け止めとタオル、そしてフローラルの香りの制汗剤をバッグに入れ、一通りの作業が終わったところで手を止める。


(これで今日やることは全部終わらせたわね)


 手元にあるTo-Doリストの項目が全て実行済みになっていることを確認し、覚えるのは少しの達成感。


「んーっ、んぅ〜」


 座っての作業で凝り固まった体をほぐすために伸びをする。そんな私の視界に、それが入ってきた。

 ウォールハンガーに掛かった、赤と黒のストライプ柄のTシャツ。今は前面しか見えないが、サッカーユニフォーム風のその後ろ身頃には数字の01、そしてその上にはAKANEの文字がプリントされている。

 そう、期末試験前にクラスの皆でデザインを決めたクラスTシャツだ。

 ちなみに、01という数字は小森さんが決めてくれた。早口だったのであまり聞き取れなかったが、「竜胆さんはナンバーワンでオンリーワンだから絶対これが良いよ!」みたいな事を言っていたと思う。うん、よく分からない。


(小森さん……)


 高校からの友達である小森さんは不思議な女の子だ。いや、もちろん良い意味でなのだけど。


 彼女は色々な表情を見せてくれるので、付き合いが深くなっていく程にどんどん魅力が溢れ出してくる。

 というか、そもそもこんなにも彼女の事を考えてしまう時点でその存在感の大きさも分かるというもの。

 これがカリスマ性というものなのだろう。小森さんと行動を共にしている時に多くの視線を感じるのは、恐らく気のせいではないはずだ。そこにいるだけで場の雰囲気を支配する彼女は、常に注目の的であるのだ。


 小森さんと一緒に人に見られる機会が増えたから、隣に居ても恥ずかしくないように小森さんにメイクについて教わったり、ファッション誌を買って洋服にもこだわるようになった。

 どちらも奥が深く、色々調べるにつれて素敵な商品との出会いが多くなっていく。小森さんが『欲しいのいっぱいあってお金足りなーい!』と言っていたのも今なら分かる。

 

 そうやって彼女に思いを馳せていると、携帯が鳴った。

 気付かぬうちに手に取っていたクラスTシャツをウォールハンガーに掛け直し、携帯を確認する。通知の内容は、小森さんからのメッセージだった。


『明日、楽しみだね(* 'ᵕ' )☆』


 たった一文。でも、それだけで友情を感じて高揚してしまう。寝る前なのに困った。


『有咲ちゃん達、特訓したみたいだよ。私たちもする? 今から』


 続いて届いたのはそんなメッセージ。

 小森さんと出会ってから約三ヶ月半。こういう時のノリも結構分かってきた。


『そうね、しましょうか』


『え!? 冗談だよもう夜だよ!』


『夢の中で頑張るわ』


『(´・ε・`)』



「ふふっ」


 返ってきた可愛い絵文字に思わず笑ってしまった。だって小森さんに似てるんだもの。


 その後もメッセージでの会話は続き、気が付くとなんだかんだで二十分くらい経っていた。


『もうそろそろ寝るわ』


『私も寝る〜! おやすみ!』


『おやすみ』


 そう返してベッドに横になる。


 携帯を枕元に置いて。


 照明をオフにして。


 目を閉じて思い浮かぶのは小森さんの顔だった。


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