28話 校外学習で水族館へ②
見渡す限りが水で包まれた通路を歩く。
水中には色鮮やかな小魚たちが泳ぎ回っていて、まるで私まで魚の群れを構成するうちの一匹になってしまったかのようだ。
そんな感覚を抱くほどに、ここは水の世界であった。
その造られた自然で満ちた空間を、竜胆さんと手を繋ぎながら堪能する。
こんな素敵なロケーションで竜胆さんと過ごせて、もう既に私の心は満ち足りた。水族館、最高だ…。
しかし校外学習は始まったばかり。まだまだお楽しみスポットはたくさんある。
その一つとして、通路を抜けるとそこには大きな水槽があった。
そこではジンベイザメのような巨大な魚から、イワシのような小さな群魚、タコやカニ、エイなど、多様な海の生物が姿を見せている。
「すごーい! 竜胆さん、見て、凄いよ!」
「そうね、凄い……。色々な魚がいるわ」
私たちは水槽の前で、その壮大さに圧倒されていた。
いや、水槽まじででかいし、魚いっぱいだしまじでやばい(やばい)
「あ、亀が来たよ」
「あら、本当ね。可愛いわ」
亀は私たちの方を向いて軽く首を傾げている。
ほほーん。君、さては竜胆さんの可愛さに困惑しているな? 愛いやつめ。
「竜胆さんこっち向いて」
「どうしたの?」
「写真撮ろ?」
「あぁ、了解よ」
折角の亀さんのファンサービスだからね!
ということで亀を真ん中にして自撮りをする。
撮った写真を見ると、亀はしっかりとカメラ目線をくれていた。やるじゃん。
満足した私と竜胆さんは、亀に手を振ってお別れをし、有咲ちゃんたちと合流するためにシャチのパフォーマンスショーが行われている会場へと向かう。
というのも、有咲ちゃんは「私はシャチ見に行ってくるのであります!」と言い残して先に行ってしまったのだ。
ちなみに奈緒ちゃんも有咲ちゃんに付いて行ったけど多分お目当てはシャチじゃなくて、会場で売っているアイスだと思う。ずっとアイス食べたいって言ってたし。
君たち班行動って言葉、知ってる……?
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さて、シャチのパフォーマンスショーが行われる会場にやってきたが、どうやらちょうど始まるところみたいだ。
「ラッキー、丁度じゃん! 一番上で立ち見しよ」
「そうね、了解よ」
ショーには間に合ったが席は同じ高校の人たちも多く、ほぼ埋まっていた。
なかなか良い感じに見える立ち見ポジションに移動して一息つくと、後ろから声を掛けられた。
「あ〜! 華奈ちゃんと朱音ちゃんだ〜!」
このふわふわオーラは……奈緒ちゃん!
振り向くと、アイスを両手に持った奈緒ちゃんがいた。……お腹壊しちゃうよ?
「やっほー、奈緒ちゃん。有咲ちゃんは?」
「有咲ちゃんはあそこだよ〜。私はアイスのおかわりを買いに来たの」
そのアイスおかわりなんかい、と思いながらも、差された指を辿ると最前列に座る有咲ちゃんがいた。……さ、最前列!?
「最前列って濡れちゃうんじゃ……?」
張り紙にびしょ濡れ注意の文字があったはずだ。
「そうだよ〜。私も言ったんだけど聞かなくて。まぁ大丈夫、何とかなるでしょ〜!」
「えぇ、何とかなるかなぁ?」
最前列はびしょ濡れ不可避じゃない?何とかならなくない?
「でも、もう手遅れみたいよ」
竜胆さんのその言葉を聞いてショーに意識を向けると、シャチが大ジャンプをするところだった。
え! 有咲ちゃん、危ないよ! 逃げてー!
しかしそんな私の思いは届かず、シャチの着地の衝撃で大きく波打ち宙へと投げ出された大量の水が客席へと降り注いだ。
うわぁーお、大迫力。
これは無事な帰還は絶望的なようだ……。
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「みんなー! シャチ見た!? やっぱシャチ、強すぎるくない? まじ最強!」
ショーが終わり、奈緒ちゃんがアイスのおかわりを買うのを待っていると(全種類制覇したいらしい)、有咲ちゃんの声がした。
「有咲ちゃん! 大丈夫だった!?」
そう聞きつつ声の方を振り向くと、そこには全然濡れていない有咲ちゃんの姿があった。
……あれぇ?
「ん? 大丈夫って何が?」
「え、有咲ちゃん、濡れなかったの?」
「あ、うん! 何かあたしの上を水が飛んでった!」
どうやら最前列にいた事が功を奏したらしい。
恐らく後ろから撥ねてきたであろう水飛沫が背中に少しかかったくらいで無事だったみたいだ。
幸運だなぁ……。まぁ、何はともあれ濡れなかったなら良かった!
さて、この後は流れのまま海獣を見に行くのだ。
そこには愛しのアザラシちゃんが待っている!
アゴヒゲアザラシとかハイイロアザラシとかバイカルアザラシとか、色々なアザラシがいるけど(アザラシガチ勢)、皆はどれが一番好き?
ちなみに私はゴマフアザラシ派です!
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