22話 定期試験を乗り越えました
竜胆さんとの勉強会、その三日後から始まった試験も今日でついに最終日である。
本日の試験科目は現代文・英語表現・数学 I の三科目で、今は三限目。最後である数学 I の試験を受けている。
勉強の成果が出たのか、すらすらと問題が解けたので、試験時間はあと半分も残っているが早くも最後の一問に取り掛かる。
最終問題は難しい応用問題であった。
しかし、私は焦らない。何故なら細かい数値は違えど、その問題文には見覚えがあったからだ。
(ここ、勉強会で竜胆さんに教えて貰ったところだ!)
そう。試験が始まる三日前に、勉強会で解き方を教わった問題とほぼ同じ問いである。
私はあの時の記憶を引きずり出して計算を進めていく。……記憶九割が竜胆さんの事で埋まってしまっているが、なんとか解けた。これで合ってるはず……!
試験問題を全て解き終わった私は、一問目から見直しをする。あまりにも完璧な出来だったので、自分で自分が恐ろしくなった。
見直しを終えたので、試験用紙とペンを揃えて机に置く。
(さて、何もすることが無いな)
暇を持て余したので、今回の試験を振り返る。
(それにしても、試験勉強を頑張ったおかげで今回の試験は良い感じに出来たなぁ。全教科で手応えがあったし、総合順位で結構上位に入れている……気がする!)
全教科を通して手応えが良かったので、思わずにやにやとしてしまう。
そんな感じで口許を緩ませ達成感に浸っていると、視線を感じた。気になって顔を上げると、こちらを不審そうに見る監督の先生と目が合う。
(……あ、やば)
一瞬だけ時が止まるが、私は慌てて視線を逸らした。そして、特に理由もなく問題用紙をじっと見続ける。しっかりと真顔で!
やばい。この状況、恥ずかし過ぎるぞ……!
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試験中特有の静けさが場を支配する教室で、終業の鐘と同時に先生の声が教室に響き渡る。
「試験終了です。ペンを置いて下さい。」
その掛け声に倣って、周りからカチャっとペンを置く音が聞こてくる。
先生が解答用紙を集め、軽い確認を終えた。
長かった試験にようやく終止符が打たれる。
「これで試験は終了となります。ホームルームは無いので帰宅して結構です、お疲れ様でした。」
そう言い残し、試験用紙を持って教室から去って行った。
その、数刻後……。
「「「ふぅ〜、終わったぁ!」」」
クラスが過去一で団結した瞬間だった。
やはり共通の敵がいると仲間意識が強くなるのだろう。皆、手を取り合って試験の終わりを喜んでいる。
さらに、中には興奮のあまり雄叫びを上げている者さえいて(おい、女子力)、試験の時の静けさが嘘みたいだ。
そんな騒がしい空間の中、私は素早く筆箱と問題用紙を鞄に入れ、速攻で竜胆さんの元へ向かった。
「竜胆さん、お疲れ様!」
「えぇ、小森さんもお疲れ様」
開口一番、お互いに労りの言葉を掛け合う。
「勉強会で竜胆さんに教えて貰った問題あったね!」
「あったわね。ちゃんと解けた?」
「うん! 凡ミスが無ければ数学は満点の自信があるよ!」
「そう、良かったわ」
そう言って自分の事のように喜んでくれた。まじで女神過ぎる。全人類(私含む)、竜胆さんを見習った方が良いよ。
最近、竜胆さんが完璧過ぎて私の妄想なんじゃないかと密かに疑っている。イマジナリーなフレンド説が浮上中だ。
……だとしたら私、相当やべぇ奴だけどね。
「この後はどこか寄るの?」
「んー、そうだな〜」
あ、そうだ!確か、妹がショッピングモールの近くに美味しいパンケーキ屋さんが出来たと言っていた。
そこのパスタが絶品らしい(パンケーキ屋……?)
ともかく、美味しいのは間違いなさそうなので提案してみる。
「竜胆さん、ショッピングモールの近くに出来たパンケーキ屋って分かる? そこ、パスタもあって美味しいらしいんだよね。どうかな?」
「いえ、初めて聞いたわ。良いと思うわよ」
「じゃあ、そのお店行こう!」
ちなみにそのお店、雰囲気が良くて、早くもデートスポットと化しているらしい。つまりこれはデートと言っても過言ではないだろう。異論反論は認めない。
「どうする? 今日はパンケーキだけ食べる? それとも適当に時間潰してから行って、夕飯にする感じでパスタとかも頼む?」
「折角だし、小森さんが良ければパスタも食べてみたいわ」
「おっけー! 私も食べてみたいし全然良いよ! むしろウェルカム!」
という事で夕飯を一緒に食べに行くことが決定した。
妹にLINEで『今日は友達と食べるから夕飯いらないってお母さんに伝えといて!』と送ってから、竜胆さんと一緒にショッピングモールへと向かう。
夕飯にちょうど良い時間になるまで買い物とかして時間を潰すのだ。
ショッピングモールへは、途中まで下校時と同じ道を通る。あの桜トンネルの道だ。
しかし、もう五月なので綺麗だった満開の桜は既に姿を消してしまっている。
(来年も竜胆さんと一緒に桜を見れるかな)
桜の木を見て侘寂を感じたからか、柄にも無く、そんな感傷的な気分の私であった。
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