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2話 初めてのホームルーム


 入学式で見かけた竜胆 朱音(りんどう あかね)さんに一目惚れをした私は現在、高校に入って最初となるホームルームに参加している。

 担任の先生が私たち、一年A組の生徒へと自己紹介をしている最中だ。


「初めまして、私は五十嵐 優香(いがらし ゆうか)。新卒で、今年から先生になったので、担任を持つのも初めてです。皆さんと同じく、この学校の事には詳しくないので一緒に学んでいきたいと思います!」


 どうやら新採らしい五十嵐先生の、大変模範的で親しみやすい自己紹介である。

 だがしかし、この私、「小森 華奈(こもり かな)」の頭にはあまり入ってこなかった。とある理由があり集中出来ないのだ。というのも、私の席から見えるのである。

 そう! 愛しの! 竜胆 朱音(りんどう あかね)様が! 見えるのである!


 そんな幸福な時間に自己紹介をされて集中できるだろうか。いや出来ない。出来るはずがない。

 なにせまだ耐性が取得できていないのだ。竜胆 朱音(りんどう あかね)耐性Lv.0なのだ。しょうがない。私は悪くない……! 完全に無実である。

 ただ、あまりにも竜胆さんに気を取られていたのだろう。五十嵐先生が私の席のすぐ(そば)まで来てこちらを(うかが)っていることにも気づかなかった。


「ねぇ、小森さん。さっきから上の空でいるけど、私の話ちゃんと聞いてる?」


 そんな問い掛けをされた私の頬には、一筋(ひとすじ)の汗がたらりと流れた。


(ヤバい。凄くヤバい。全然気づかなかった。先生の話? 殆ど聞いてなかったけど……何話してたの? 好きな食べ物とか?)


 私は絶望的な状況に追い込まれていた。


(ま、まぁでも、大丈夫(震え声)。こんな時の必殺技、持ってるんだよね……という訳で)


 ニコッ!!!(スーパー笑顔)


 だいたい怒られても、この私の超絶スーパーウルトラ笑顔(盛り過ぎ)で乗り切れる!!

 少なくとも中学生の時に担任だったおじいちゃん先生は許してくれた。おじいちゃん先生、元気かなぁ…? めちゃくちゃ優しかったなぁ、アイスくれたし。


 そんな御膳上等(ごぜんじょうとう)の笑顔を浮かべる私を五十嵐先生は何も言わず見ている。


 この謎の()(つら)い……。だがしかし、ここが正念場。私も気合いを入れ直し、笑顔で先生を見つめた。


 少しの間、先生と私は見つめ合った。それは時間にして精々十秒くらいだったが、私にはそれが数分にも、数時間にも、さらに飛んで地球が自転で一周する時間相当(約二十四時間)にも感じた。

 正直、とてもキツかった。何度も目を逸らしそうになった。でも、それでも先生を見つめ続けた。私にも意地ってものがあるのだ。

 そうやって見つめ合い着実と気まずさポイントが溜まる中、先に目を逸らしたのは先生の方だった。


「はぁ……」


 よっしゃ! 勝ったっ! これは大勝利では!?

 やはり私の超絶スーパーウルトラ笑顔に敵はいないのだ!

 そう思い、私はすっかり気を抜いてしまっていた。先生からまだお許しのお言葉を授かっていないにも関わらず、だ。

 そしてその隙を先生の第六感(シックスセンス)は見逃さなかったらしい。


「小森さん。放課後、居残りで反省文ね?」


 ……どこからどう見ても私の完敗であった。どこで選択を間違えたのだろうか。

 いや、待て。そもそも五十嵐先生が強すぎただけでは無いのだろうか。きっとそうだ。そうに違いない。私は弱くない……!


 流石、高校の先生ともなると強敵である。まだまだ小娘である私とは(くぐ)ってきた戦場の数が違うのだろう。だがしかし、今は負けても、きっといつか勝てる日が来る(はず)!!

 ただ、通用しなかった︎︎"︎︎必殺技・ゼロ円スマイル(ニッコリ笑顔)"︎︎の代わりとなる攻撃はなる(はや)で習得するべきだろう。

"︎︎JKの号泣(捨て身タックル)"︎︎なんかはどうだろうか。

  そんな益体もない事を考えていると、私の机の斜め前に立つ五十嵐先生の後ろから、裁判所(私と先生の方)を向いた我が愛しの竜胆さんが目に映る。目が合う。


 そして、すぐに逸らさた。


 ……私は泣いた。高校生活早々(そうそう)に踏んだり蹴ったりである。


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