17話 蜂蜜のハンドクリーム
アイスを食べ終わった私たちは、ショッピングモール内をぶらついていた。
服屋にアクセサリーショップ、 それに靴屋や生活用品店など数多くのお店が建ち並んでおり、見て歩くだけでもそれなりに楽しい。
時々、気になるお店があると立ち寄ってみたりして長閑な時間を過ごしている。
「竜胆さん、次はあそこの雑貨屋見に行こ?」
「えぇ、良いわよ」
そんな感じで、今度は雑貨屋へと足を運ぶ。
理美容用品や文房具、スマホカバーやその他小物など、雑貨屋の名の通り日用品が揃えられている。
「何か見るの?」
「うん、ハンドクリームを見ようかなって。前までの使い切っちゃって」
そう言いながら、ハンドケア用品のコーナーに行き、多種多様のハンドクリームが陳列する棚を眺める。うーむ、色んな香りがあって悩ましい。
ちなみに前は桃の香りの物を使っていた。同じ物も棚に並んでいるが、今回は違う種類から選びたい。竜胆さんが好きな香りだとなお良い。
「竜胆さんはどれが良いと思う?」
ということで、参考にするために竜胆さんにも聞いてみた。
「そうね……」
竜胆さんは真剣な眼差しでハンドクリームを吟味し始める。
横でその様子を眺めながら、私は私で脳内で候補を絞っていく。
(前回はフルーツ系だったから、それ以外で……フローラル系とか? いや、でも、ん〜……あ! これ良いじゃん!)
私は気になったハニーの香りのハンドクリームに手を伸ばす。
しかしそれに触れる寸前、思っていたものとは異なる感触を受けた。見ると、私の指は同じく伸ばされた竜胆さんの手に触れている。
「「あっ、」」
思わず声が出てしまった。そして、互いに窺うように顔を見合わせる。
(これって漫画とかの本屋でよく起こるシチュエーションじゃん! え、めちゃくちゃキュンとするんですけど…! え、え?やばくない!!?)
私が心の中で荒ぶっていると、寸刻の沈黙の後に竜胆さんが口を開いた。
「私はこれが良いと思うのだけれど、小森さんも?」
「う、うん。この香り良さげだなって思って」
少し落ち着きを取り戻した私は、そう言ってハニーの香りのハンドクリームに目を向けた。色合いは薄い茶色で、デフォルメされた1匹の蜂がお洒落に描かれており、凄く可愛い見た目をしている。
「では、この試供品を試して見ましょうか」
「そうだね、使ってみよ」
試供品と書かれたシールが貼ってある物を手に取って使ってみる。
「お〜、凄くいい匂いだ……!」
「ふんわりと優しい香りね」
香りを嗅ぎながら裏面を見ると、そこには『生ハチミツと生クリームで、しっとりうるうるな手肌に』と書かれている。ハンドクリームを付けた所を触ると、確かにしっとり感が強い。
「うん、これを買おうかな」
蜂蜜パワーでしっかりと私を(乾燥から)守ってね……!
「竜胆さんもどう? お揃いで!」
「そうね、なら私も買おうかしら」
お揃いのハンドクリーム……。最高過ぎる。
竜胆さんと同じ香りか。これが本当の匂わせってやつかな。
お会計を済ませて、雑貨屋を出た。時間を確認すると、既に十八時を過ぎている。
「もうこんな時間か……。そろそろ帰ろっか」
楽しい時間は過ぎるのが早いなぁ〜と思いながらショッピングモールを出て家までの道を歩く。
私たちの周囲には、微かに甘い蜂蜜の匂いが漂っていた。
良かったら、下の☆☆☆☆☆から評価お願いします。
また、ブックマーク等も頂けたら嬉しいです!




