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14話 身体計測


 今、私は一歩を踏み出した。

 一寸先は闇。その言葉が示す通り、この行動がどのような結果を(もたら)すのか私には予測できない。しかし、そんな未来への不安を持ちながらも、私は勇気を出して確かに一歩、踏み出したのだ。


 踏み出した先で私は立ち止まった。(おそ)れからか、足が(すく)んでしまいそうだ。

 しかし、それでも私はそこに立ち続けた。ここで逃げてしまえば、もう自分に自信が持てなくなってしまう気がするからだ。


「はい、もう降りて良いですよ」


「あ、はい」


 そう、私は身体計測で体重を量っていた。


 その後は澄まし顔で記録用紙を受け取って、次に量る竜胆さんを待つために少し離れる。

 そうして目立たない位置へと移動した瞬間、私は迅速に、そして秘密裏に、体重が書かれた欄を確認した。



(なん、だと……? 太っている!?)


 そこに書かれた数値を見て私は驚愕した。おかしい、太るような事など特にしていないのに。


 ……ちなみに痩せるような事もしていないのは内緒だ。


 でもあれだな。成長期で背とか胸とかが大きくなった分かもしれないしな。うん、全然有り得るね。てか、それしか無いまである。それ以外の理由なんて思いつかないねっ!

 そんな言い訳を脳内でしている間に、竜胆さんも量り終わったらしい。体重が記入された記録用紙を手に此方(こちら)へやって来た。


「おまたせ、次は身長測定ね。行きましょう」


「はーい!」


 そうして次は身長を計る列に並んだ。

 しかし、未だに私は体重が増えてたことを気にしてしまっている。


 だって女の子だもん!


 なので、この悩みを竜胆さんに相談してみることにした。スタイル良いし、凄く効果のあるダイエット法とか知ってそうだからね。


「私ちょっと太ってたんだよね……」


「そうなの……でも心配無いわ。私も体重増えていたし」


「え、まじ!? そんなに細いのに…?」


「だから気にしなくても大丈夫よ。小森さん、多分BMIで見たら痩せ型の分類だと思うし」


「そうかな〜? でも、そう言われると少し体重増えたくらい誤差に思えてきた……!」


「ちなみにどのくらい増えていたの?」


「さ、三キロくらい」


「……それだけ? 私は五キロも増えていたけれど」


「……え」


 その細さでも五キロ増えてるの……? 普通に信じられないけど。


「まぁ、理由は何となく分かるわ」


 竜胆さんの体重が増えた理由……なんだろう、気になる。


「恐らく最近筋トレを始めたから、ね。筋肉が増えたから体重も増加したのだと思うわ」


 いや、その体重の増加めちゃくちゃプラスの意味じゃん。名誉の増加じゃん……。

 私に付いたぷよぷよの脂肪とは違って努力の結晶(筋肉)だよ。


 うーん……私も筋トレ始めようかな。軽い腹筋運動くらいなら続けられる気がする。


 そんな決意をしていると、私たちの順番が回ってきたようだ。今回も私から先に測定する。

 竜胆さん、お先に失礼いたします。


「はい、どうぞ」


「よろしくお願いしまーす」


 担当の先生に促されて身長計の上に乗る。


 さて、身長測定か。私は今の身長くらいで丁度良いかなと思っている。

 私って可愛い系だからね、あんまり高過ぎてもって感じ。過ぎたるは及ばざるが如しってね。程々が最良なのだ。


 自分の身長の数値は特に気にせず、次に計る竜胆さんに注目する。

 身長計に乗る竜胆さんは、いつも綺麗な姿勢が更に強調されていて、背筋が完璧に真っ直ぐになっている。

 まるでアンドロイドのように精緻(せいち)であり、人形のように愛らしい。控えめに言って神懸(かみが)かった美しさである。誠に素晴らしい。


 さて、見入っている間に竜胆さんが計り終わったようなので、次は聴力検査だ。視聴覚室で行うようなので体育館を出て移動する。


「視聴覚室は三階だよね?」


「そうよ、階段登って右奥ね」


「了解!」


 視聴覚室に着くと、空いていたので待つこと無く検査を受けることが出来た。ヘッドフォンを耳に当てて、左右で低音から高音までしっかりと聞こえるか調査する。

 部屋が静かだったから少し緊張したが、特に問題なく検査を終えれたので、最後に教室で行われる視力検査を受けに行こう。



━━━━━━━━━━━━━━━



 教室へ戻って来ると担任の五十嵐先生がいた。どうやら視力検査は各クラスの担任が行うらしい。


「あれ、もうほかの検査受け終わったの? 早いね。」


 全然気にしていなかったが、どうやら私たちは早い方だったらしい。この感じだと私たちが最初に戻ってきたのかな?


「それで、どっちから検査する?」


 記録用紙を二人分受け取りながらそう聞いてきた。

 竜胆さんと顔を見合わせて確認する。別にどっちからでもいいよね。


「じゃあ私からで。良いよね、竜胆さん?」


「えぇ、問題ないわ」


「小森さんからね。二人とも矯正無しで大丈夫?」


「「大丈夫です」」

 

 ということで、壁に貼られた視力検査用シートを使って検査を受ける。


 右、上、左、上……。


 指先を使ってCの穴の方向を示す。

 最後の方は結構ぎりぎりだったが、何とか見えた。

まだまだ私の目は衰えていないらしい。

 竜胆さんを明瞭に目に映したいから、これからも視力には気をつけよう。


 検査後は、そのまま記録用紙を提出するようだ。

 この機密情報(体重)が先生に見られるのか……。誰にも知られず墓まで持って行きたかったのに。

 

 私の次は竜胆さんが検査を受ける。


 竜胆さんが(たお)やかに、綺麗な指を動かす。

 それはまるで魔女の持つ杖のような存在感があり、私は魔法で猫になってしまったかのように、動く指を目で追っていた。



━━━━━━━━━━━━━━━



「これで検査は終わりです、お疲れ様。早いけれど学食に行っても良いよ」


 身体計測を終えた私たちは、そう言われたので学食に向かうことにした。

 朝食を抜いてきたのでお腹がぺこぺこなのだ。今日は、お母さん作のお弁当も持ってきたけど追加で何か買おうかな。


 ……だから太るんだよとか言うな。禁句だぞ。


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