11話 明春フェス、その後
最初のバンドが流行アニメの映画主題歌を演奏した後も、ポップなバンドによる有名なCMソングの演奏、リズミカルでキュートなK-POPダンスなど、すごく盛り上がった。
まじで、プロ??! って思うくらい上手かった。
場を盛り上げるのも上手いのは何故だ? 実は隠れプロなのかもしれん……隠れプロってなんだ(?)
「みんな、今日はありがとー!!! そして改めて、入学おめでとう! これからよろしくね!」
しかし、楽しかったフェスもこれで終わりらしい。
消されていた照明がつけられ、窓に掛けていたカーテンも退けられた。
周囲は明るくなり、フェスの世界に飛び込んでいた意識が現実へと引き戻される。
ただいま、現実……。
隣を見ると、竜胆さんはまだ余韻に浸っているみたいだ。虚空を見つめて、ぼんやりとしていた。
そんな姿を、私は横から眺める。
(横顔も綺麗だな〜)
美術作品のように整ったご尊顔を観察し始めて間もなく、竜胆さんが急にこっちを向く。び、びっくりしたぁ……。
竜胆さんは、そのままこっちをじっと見てくる。な、なにかな? もしかして……告白っ!?
「竜胆さん、どうしたの?」
「いえ……ただ、来年も一緒に明春フェスを楽しめたら良いなって」
「え?」
それってずっと一緒に居たいってこと!? プロポーズってこと!? (違う)
「まぁ、まだまだ先の事だしその時になってみないと分からないわよね」
竜胆さんが軽く顔を伏せながら言う。
私が突然のプロポーズ(プロポーズではない)に驚いて固まってしまったので、竜胆さんは拒否されたように思ってしまったみたいだ。
(違うよ竜胆さん! 拒否なんてしないよ、する訳ないよ!)
「一年後も、そのまた次の年も、絶対に一緒に見よう! 絶対にっ!」
私が咄嗟に竜胆さんの両手を掴んでそう伝えると、竜胆さんは少しだけ驚きの表情を浮かべたが、直ぐに微笑んでくれた。ありがとう、という小さなメッセージ付きで。
やっぱ竜胆さんは笑顔が一番素敵なのよ……。
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さて、気づいたら他の人はほとんど教室に戻ったみたいで、体育館は人が疎らとなっているし、さらに言うならステージの片付けも始まっている。
「それじゃ、私達も教室に戻ろっか」
「そうね。この後はもう帰って良いのよね?」
「うん! ホームルームは無いって言ってた。帰ろ〜」
私達は教室で鞄を取ってから一緒に帰った。
帰り道、昨日よりも半歩分、お互いの距離が縮まった。フェスを経て少し仲が深まったようだ。
隣合って演奏を聞いていただけなのに、不思議だ。
これが音楽の力……。
フェスが騒がしかったせいだろうか。
帰宅中、ふと訪れる静寂をいつもより意識してしまう。
私はこの静寂を無くそうと言葉を発しようとして、止めた。
この穏やかに時が流れる空間も、風情があって悪くない。そう思ったから。
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