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鷹と真珠の門  作者: paiちゃん
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J-075 難易度が高まった


 クラウスさんから作戦計画を聞かされて、12日目のことだった。

 反乱軍の潜航艇の全てが帰ってこなかったらしい。


「6隻と聞いたにゃ。若い連中が大勢死んでしまったにゃ」


 潜航艇の乗員は30人程らしい。決死の覚悟で出航したに違いないけど……。攻撃されて沈んだということなんだろう。


「最後の通信では7隻に打撃を与えたということらしいにゃ。無駄死にではなかったにゃ」


「後は、私達が引き受けましょう。それで、艦隊は王都の港に到着したんですか?」


「到着の連絡はまだにゃ。でも近日中になることは間違いないにゃ」


 イオニアさんの言葉に、リトネンさんが答えてくれた。

 まだ正式な作戦決行日が決まらないのか。

 輸送艦隊が入港してから5日後ということだったからね。


「それで、随行する2台と乗員の決定は?」


「カレン達にゃ。ブンカーでしばらく過ごしたから気心が知れているのが良いにゃ。それぞれ1人を率いての参加にゃ。今は自動車の訓練をしてるにゃ。

 それと、やはり6輪車は無理みたいにゃ。初期の4輪駆動車とエンジンを強化した新しい車にゃ。古い方は噴進弾発射機を4基搭載してるにゃ。新型は2基にゃ。でも4イルム噴進弾を発射できるにゃ。

 古いのが調子悪い時には、ハンズの車で引くことになるにゃ。追いかけて来る時には切り離して爆破するにゃ」


 最初から、障害物を作るつもりで持って行くってことだな。

 座席の下に爆薬をあらかじめ仕掛けておくのかもしれない。乗っていく2人は、切り離した後はもう1台に搭乗するのだろう。


「燃料問題は解決できたのでしょうか?」


「予備燃料槽を付けたみたいにゃ。それだけで40パイン(20ℓ)にゃ。それ以外に30パインの容器が3つにゃ。それと尾根を抜ける前に、同行する自動車が燃料槽にたっぷりと補給してくれるにゃ」


 エミルさんが地図の上に定規で線を引いて行きながら、メモを取っている。

 必要な燃料の量を再計算しているのだろう。


「なるほど……。30パイン容器が1つ半余裕ですね。4輪駆動車の方も考えているのでしょう」


 搭載する燃料容器の数を増やせば済むことではあるんだけどね。

 あまり搭載したくはないな。銃弾が当たったらと思うと、ちょっと心配になってしまう。


 改装した自動車は鉄板で囲まれているから、テントは積まないらしい。

 大きな帆布を2枚積んであるそうだから、必要に応じて車の脇に屋根を作れそうだ。


「一斉砲撃で12発……。2射で足りますか?」


「4斉射分を搭載するにゃ。新型の方は5斉射分にゃ」


 上手く行けば36発が放たれるということになる。前回の攻撃では3イルム砲弾を10発だったからなぁ。その3倍を上回るなら倉庫群はかなりの被害を受けるだろう。

 そうなると、反撃が怖くなりそうだ。地雷は仕掛けるとしても、かなりの部隊が追い掛けて来るに違いない。


「たっぷりと手榴弾を持って行くにゃ。グレネード弾もにゃ」


「ばら撒きながら逃走するということですね。了解です」


 弾薬の搭載はイオニアさんに任せよう。ヒドラⅡの砲弾は、1ケース余分に貰っておいても良さそうだ。木箱に6発入っているから足元に置けるだろう。

 

 翌日は、カレンさんとオルガさんがやって来て、それぞれの相棒を紹介してくれた。

 新型にカレンさん、旧型はオルガさん運転していくらしい。


「新型の4イルム噴進弾発射装置は、結構手早く撃てる。4連装の方は少し面倒だから、一斉砲撃の後は単独発射になってしまいそうだ。車の間隔を空けておかないと周囲が煙で見えなくなってしまうだろうな」


「当日の風向きも大事だということか……。一応マスクは準備してあるようだが」


 マスクはかなり良くなった。革の面体に埃を通さない綿のフィルターが横に1つ付いている。回すと外れるからフィルターは使い捨てになるんだろうな。噴進弾の噴き出す煙は多量に吸うと有害らしく、フィルターの中に有害物質を吸収する薬剤が2重に挟んであるらしい。

 

「旧型は乗り捨てることが前提だから、乗り捨てた後はカレンの車に乗るつもりだ」


「こっちの6輪車に乗って欲しいにゃ。後部席の銃眼を使って追撃車に攻撃して欲しいにゃ」


「その方が安全か……。よろしく頼む」


 手榴弾を落とすぐらいならミザリーにも出来るだろう。

 後席でフェンリルを撃つよりは安心できるし、俺に砲弾を手渡してくれるだけでもありがたい。

 砲弾数発をマガジンに入れて、半自動で射撃できるヒドラⅢはまだ試作中とのことだ。完成は来春ということだから、楽しみに待っていよう。


 そろそろ解散しようかと話をしている時だった。

 部屋の電話が鳴りだし、リトネンさんが電話を取って話を始める。


「了解にゃ。5日後の夜で良いにゃ? ……可能ならやってみるにゃ。あまり期待しないで欲しいにゃ」


 ん! 俺達葉互いに顔を見合わせる。

 当初の作戦が輸送艦隊野到着の遅れで遅延するのはしょうがない話だ。だが、可能ならやってみるというのは、全く別の作戦が加わったということになるんだろう?

 リトネンさんが可能ならやってみるというぐらいなら、かなり難度の高い作戦ということに違いない。

 一体どんな作戦が加わったんだ?


「テレーザ、地図を広げるにゃ!」


 電話の受話器を手で押さえて、リトネンさんが俺達に向かって指示してきた。

 直ぐにテレーザさんが地図を広げる。


「王都の直ぐ北に漁港が書かれてるかにゃ? テムズと言う町にゃ」


「ありました。30ミラルほど王都から離れてますね」


 テレーザさんの答えに軽く頷くと再び、電話で話を始めた。

 どうやら攻撃目標が増えたということらしい。

 

「王都の港だけでは足りないってことか? 短期間で荷を下ろすのにテムズの漁港を使うってことだろうが、そんなに大きな港ではないと思うんだがなぁ」


「いや、そうでもないですよ。かなり大きな入り江を持ってます。入り江に停泊すれば漁船を動員して荷揚げができそうです」


 結構考えてるなぁ。港は入り江の一番奥だし、北西方向に半島が延びているから風が吹いてもそれほど波が出ないはずだ。

 時間は掛かっても、王都の港でに亜gの順番を待つよりは早いんじゃないかな。


「了解にゃ。明日から準備を始めるにゃ」


 どうやら、話が終わったようだ。

 リトネンさんが席に着くと、テレーザさんがテムズの町の位置を教えている。


「やはりにゃあ……。道が1本にゃ。攻撃したら挟撃されそうにゃ」


 リトネンさんが難色を示したのはそういうことか……。

 さすがに湿地帯を走るのは無理なようだ。堤防の西は池と沼が広がっているらしい。


「1撃して逃げ帰るしかなさそうですね」

「出来れば2回は一斉射撃をしたいにゃ。それに、最初の追っ手を振り切るから、4連装の噴進弾発射機が使えないにゃ」


 3台で、合計8門ということになる。さすがに一斉射撃1回では、物足りないだろう。


「試作砲弾が使えるにゃ。飛距離を4ミラル近くに伸ばしたと言ってたにゃ。でも3ミラル程度で放ちたいにゃ」


「正確に狙いたいということですね。でも、漁港に倉庫は無いんじゃありませんか?」


「会っても小さいものだろう。となると、仮倉庫を作ったはずだ。荷揚げが楽で、蒸気自動車が入れるところとなると……、市場だな」


「王都の地図を持って来るにゃ!」


 テレーザさんが再び地図をテーブルに広げる。

 王都周辺だけの地図だけど、周辺の町や村も記載されている。その町並みはかなり詳しいらしい。


「市場はこれだな。街道から真っ直ぐだ。 周辺の街並みから独立しているから、警備も容易だろうし、この広場のおかげで輸送車を待機させることも可能だろう」


「市場から3ミラルは……、この円ですね。北は湿地帯になってます」


「そうなると、この辺りが狙い目にゃ」


 リトネンさんの指先は、南側の半島の付け根付近だ。3ミラルより少し離れているけど、飛距離は4ミラルということだからそれなりに狙えるんじゃないかな。


「地図記号では砂地ですね。私達の車なら問題はありません。ですが攻撃終了時に街道を使うと東西から挟撃されかねませんよ」


「強行突破にゃ。カレン達の車を6輪車で挟んで突っ切るにゃ。東に向かって、この街道を通り荒れ地に入れば追い掛けてこれないにゃ」


 王都への街道を東に進んで、堤防沿いの街道のある三叉路を北に向かうということになる。

 堤防の東の湿地なら、この季節の走行は可能だろう。

 側面の3イルム噴進弾発射機に残った砲弾を入れておけば、強行突破も容易だと判断したに違いない。

 市場に全弾発射するのではなく、2発は残しておきたいところだ。


「この作戦では、燃料不足になりそうです。更に2つほど搭載しておきたいですね」


「仕方がないにゃ。カレン達の方はだいじょうぶかにゃ?」


「40パインの大型を1個持って行く予定でしたが、2個搭載すれば問題ないでしょう。リトネンさん達も40パインを使ったらどうですか?」


 燃料容器の後部に付ける装甲板が動かせないからなぁ……。この際だから、バンパーの上に乗せていくか。

 少なくとも王都の倉庫群を攻撃する前に戦闘することは無いだろう。


「前のバンパーの上なら2つ乗るんじゃないですか? 燃料補給した後は、捨ててくるほかありませんけど……」


「その手があるか! 明日確かめてみよう」


 イオニアさんがポン! と手を打って頷いている。

 これで100イルムほど余分に走れるはずだ。


 夕食時になったので慌てて、リトネンさんが解散を告げる。

 母さんが待ってるかもしれないな。急いでミザリーと俺達の部屋に向かった。


「そう、5日後ね。でも前日に発つんでしょう?」


「そうなるかな。たぶん夜明け前に攻撃して、その場を去ることになるだろうから、ここを朝方出て、尾根の先端付近で夜になるのを待つことになると思う。

 今度の車は、鉄板で囲いがあるし、暖房装置も付いてるんだ」


「冬は良いんだけど、夏はどうなるのかしら? あちこち小窓があるんだけど、結構暑いかもしれないよ」


 たぶん暑いだろうな。だけど、少しは我慢しないといけないだろう。外にマットを乗せて、水を含ませれば少しはマシになりそうだけどね。


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