友達からの誘い
あの後家に帰ってきたときには、日付がかわっていた。
それから風呂に入って寝ようとしたのだがなかなか寝付けず、仕方なく学校の宿題をすることにした。
集中していれば、ちょっとした物音も、誰かに見られているような錯覚も紛らわすことができた。
サクサクと宿題がはかどるが、寝れない。
「予習もするか」
鞄から教科書も取り出し、勉強を続ける。
そして気づけば寝落ち。
机で教科書を枕にしながらすやすやと眠りに落ちた。
「おーい。そろそろ起きないと遅刻するぞ!」
水澄の声にばっ、と起き上がり机の上のデジタル時計をみると、後十五分で家をでないと遅刻決定な時間だった。
「は?起こすならもうちょい早く起こしてくれよ!」
「ばーか。そんなんじゃ、気を付けようってきにならんだろ」
「あー、もう!!」
俺は急いで制服に着替えると教科書を鞄に突っ込み、部屋を飛び出した。
食卓に用意されたパンを牛乳で流し込み、玄関へ急ぐ。
そして俺は家を出たのだった。
「間に合ったぁー」
学校についてみれば、それほどギリギリではなく、少しだけ余裕があるくらいにつくことができた。
ついて早々、俺が机に突っ伏すのをみて、声をかてくるやつがいる。
「おはよー、伊織。なに?寝坊?」
「珠ちゃん、おはよ。ちょっと昨日、寝付けなくてな」
珠川 優弥、通称珠ちゃんが話しかけてきた。
「なんで?悩みごと?」
「まぁ、色々と」
「そうだ。英語の訳、やった?今日、当たりそうなんだよね」
「やってきたけど……自分でやらなきゃ意味ないよ」
「えー、お願い!」
「しょうがないなぁ」
鞄からノートを取り出そうとして、ぽろっとなにかがこぼれ落ちる。
「あれ?なんか落ちたぞ?」
「ん?」
言われて視線を下げれば、首と胴体が切り離された熊のストラップが落ちていた。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は叫びながらそれを回収する。
「お、おい。どうした?大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。なんでもないから」
「もしかして、それ…誰かに嫌がらせとか……」
「されてないから。大丈夫だから」
まさか鞄にストラップが紛れているとは思わなかった。
朝慌てて鞄に教科書を入れたときに、入ったのだろう。
「何かあったら言えよ」
明らかに心配され、肩をぽん、と叩かれる。
「だから、たいしたことじゃ」
どうにか心配はいらないと説明しようとするが、先生が来てしまって話が出来なかった。
そして、あっと言う間に時間が過ぎ、お昼になった。
「えー、今日は先生たちの研修があるため、お昼からは休みだ。呼び出されたくないから、問題おこすなよ。じゃ、解散」
雑な挨拶で担任が教室をでていく。
さて、帰るかと鞄の用意をしていると。
「なぁ、伊織。この後予定ある?」
珠ちゃんがなんだか深刻そうな顔をして話しかけてくる。
「? なんで?」
「いゃ、ちょっと……」
「なになにー?言いたいことははっきり言わなきゃわかんないよ~」
話に割って入ってきたのは、くろっちこと黒崎 鷹だった。
珠ちゃんとくろっちは、小学校からの付き合いらしい。
俺たちのなかでは、四月生まれの一番お兄さんなのだが、ちょっとぬけてて世話のやけるやつである。
「だから、俺は……」
「なんか、悩みがあるの?」
「そうなの?相談に乗るよ」
「いやいや、悩みがあるのは俺じゃなくて……」
あ、もしかして朝の話?
「ホントに朝のはなんでもないから」
「本当に?」
心配そうに眉を下げる珠ちゃんに笑って見せる。
「大丈夫だって」
「そ、そうか」
「なんか、よくわかんないけどさ。せっかくの半日だし、遊びに行かない?」
空気を読んだのか、読まなかったのか、くろっちが朗らかにランチに誘ってきた。
選択肢は、
「遊びにいく」
「遊びに行かない」
です。
「遊びにいく」を選んだ方は、そのままお進みください(「偽りの幽霊」)
「遊びに行かない」を選んだ方は、「偽りの幽霊」を飛ばして、「徘徊する幽霊」にお進みください。