熊のご当地キャラクター
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シャキン
俺は、ポケットに入っていた熊のストラップを投げつけた。
ストラップは、上手いこと鋏の閉じるタイミングで鋏に当たった。
熊は、首と胴体が綺麗に斬られて、ぽとりと地面に落ちた。
その瞬間すっ、と鋏が消えていった。
「た、助かった?」
一気に温度が戻ってきたように感じる。
それに、何時からか聞こえなくなっていた鴉がなく声や虫の声も一斉に戻ってくる。
「やべーな。あいつ」
「ななな、なにのんきに言ってんだよ!死ぬかと思った!」
「結果、死ななかっただろ?」
「そーゆー問題だじゃない。それに、なんで急にいなくなったんだ?」
「身代りを用意してたからな」
「身代りって……これ?」
地面に落ちたストラップをつまみ上げる。
「それ。買っといてよかっただろ?」
「そういうのは、先に説明しといてくれよ」
「ははっ」
「もう!……で、この後どうすんのさ?」
「そうだなぁ」
キョロキョロっと周りを確認する水澄に釣られて俺も周りを見渡す。
そういえば、女の子ももういない。
「これ」
水澄が取り出したのは、コンビニで買ったパックの日本酒と卓上塩だった。
「料理でもすんの?」
「違う」
水澄は、酒と塩をテキトーに四隅に撒く。
その後、ボソボソっと何かを言ったと思ったら、柏手をパンと打った。
その瞬間、暗く重たくなっていた空気がもっと重くなった。
「さて、帰るか」
「は?普通、空気が軽くなるんじゃないの?」
「あんな恐ろしいもの、祓えるわけないだろ?なんと言ったって神様だぞ?結界はって閉じ込めたんだよ。なかなか入れない土地ってのがあるだろ?それと一緒」
「へー。で、どっからの依頼?」
こいつがタダ働きするはずがない。
「な・い・しょっ」
唇に人差し指を当てて笑う仕草が様になっていて腹が立つ。
帰り道もサッサと歩きだした水澄背中を見ながら、なんで俺はこの人と一緒にいるのだろうかとため息をつく。
しかし、すぐに俺がそんなことを言える立場じゃなかったと思いだし、慌てて後を追いかけたのだった。
NORMAL END「身代わり」