縁切り神社
なんの躊躇いもなく登っていく水澄に舌打ちを打ちながら続く。
だって、言わば敵陣だぞ?
なんでそんなあっさりしてんだよ。
階段はそれほど長いわけでなく、すぐに上まで登りきる。
「着いた……」
「へぇ、思ったより綺麗にしてあんだな」
その言葉に見渡せば、参道に空き缶やごみがちらほらあるが荒れているという印象ではなかった。
左手に絵馬が飾ってあるのを見つけて近寄ってみる。
何気に目を通して、戦慄する。
『あいつとの縁が切れますように』
『両親が死にますように』
『彼があの娘と別れますように』
『早く死にたい』
うわぁ。絵馬にそんな願いごと書いちゃうの?
心なしか絵馬たちの纏う空気が澱んでいる気がする。
「き、気のせいだよな」
そっと絵馬から離れて少し早足で水澄のそばに戻る。
「なぁ、願い事が……」
そこまで言いかけて、ちょっと先にある賽銭箱の前に人影を見つける。
「あれ?女の子?」
「どれ?」
あれ、と指を指すと水澄が眉間にシワを寄せた。
俺の指の先を辿っていけば、朱地に金色にも見える黄色の大輪の花柄の着物を着て、赤い毛糸玉のようなボールを持ったおかっぱの女の子がいる。
水澄に説明をすれば……
「へー、お前は女の子に見えるんだ」
「は?」
ぽそり、と発せられたその言葉が聞き取れなくて聞き返す。
「第一、こんな夕暮れ時に女の子が一人でいるか?親はどうした。着物で?足場の悪い道をその格好であがって来たのか?」
水澄の言葉を聴きながら、背中に冷たい汗が落ちていく。
「お前はそれを不思議に思わなかったのか?」
その一言に持っていたペットボトルを取り落とす。
空気が一気に冷える。
「え」
女の子のおかっぱだと思っていた頭がマジックで塗りつぶされたかのように黒くなる。
手に持っていたボールだと思っていたものは、赤黒いナニかで、着物だって地が赤色な訳ではなく、赤いなにかを浴びた感じで……
「ややや、やばくね?」
シャキン
鉄かなにかが擦れ合うような音がしたような気がして、水澄の服の裾を引っ張る。
シャキン
音がだんだんと近づいてきてる……
シャキン
耳元で音がしたと思った瞬間に、服を思い切り後ろに引っ張られた。
「うわっ」
尻餅をついたとき視界に入ったのは、裁ち鋏よりもっとでかいハサミだった。
「は?」
それは、俺が今まで立っていたところ、ちょうど首の辺りで刃を閉じていた。
今、首を斬られるところだった?
いやいやいや。
死にたくない。
まだ生と縁を斬りたくはない。
そう思ってあせる俺をハサミは狙ってくるのかと思ったのだが。
ハサミはそのまま刃を開いて、水澄の方へと進んでいく。
「み、水澄!!」
慌てて水澄を呼ぶが、水澄は動くことなくハサミを見ていた。
「伊織!投げろ!!」
え?投げる?
何を?
えぇい!!
どうにかしないとと手元にあるものをハサミに向かって投げつける。
選択肢は、
「水のペットボトル」
「熊のご当地キャラクター」
の二種です。
「ペットボトル」だと思う方は、そのままお進みください。
「キャラクター」だと思う方は、一ページ飛んでその次を読んでください。