トンネルの向こう側
「……昔から、あの山には、縁切りの神様が住んでいると言われているのです。あの山を越えると悪縁が絶ちきれると言われていました。そのうち、山の中腹に縁切り神社を建てて奉っています。この話を知っている地元の人は奥まで入りません。しかし、知らない人、度胸試しをしようとする若者、縁切りを願いにいった方などが神社まで行ってしまうようで……行方不明の話が後を絶たないのです」
「立ち入り禁止にすればいいのでは?」
「気持ちの弱っているやつがはいると魅入られるんだよ。普通の人間は普通に出てこれるだろ」
「えぇ、縁切り神社としては……言葉は悪いかもしれませんが、よく効きます」
「ははぁ」
縁切りがよく効く神様…強そう。
一通り話を聞いて、トンネルまで移動することになった。
トンネルにつく頃には、黄昏時になっていた。
トンネルには、蔦が這っていて、トンネル内部は真っ暗である。
「雰囲気ありすぎじゃね?」
途中で寄ったコンビニ(地元の野菜なども売っていて、コンビニなのか怪しかったが)で買ったミネラルウォーターを危うく落としてしまうところだった。
「びびった?」
「びびってねーし!!」
「じゃ、行くぞー」
「まっ、待てよっ」
俺は、さっさと歩きだす水澄を慌てて追いかけた。
自分達の足音が反響して返ってくるのか、二人以上の足音に聞こえる。
キョロキョロと回りを見ながら水澄の後ろをついていく。
「ね、ねぇ」
「なんだ?」
「足音、多くない?」
「気のせいだ」
「だ、だよな」
トンネルは中で少し曲がっていて、それで出口が見辛く、暗く見えていたらしい。
出口が見えてほっとしたのも束の間、トンネルから出たらまたしても嫌な予感がする。
「これ、道?」
「行くぞ」
たぶん一車線ぐらいの幅があったであろう道は、草や木に覆われて半分ぐらいの幅になっている。
ザッザッ、と草を踏みしめながら進んでいくと、急に開けた場所にでる。
「おぉ!」
そこには色がハゲ始めてはいるが立派な鳥居があった。
奥には石段が続いている。