神隠しを信じますか
「昔はな、山越えに使われていたトンネルらしい。需要があってちゃんと整備されたらしいがそのうち山越えでなく、山菜とりとかで使われる用になったらしい」
「ふーん」
「でも山だからな。行ったまま帰ってこないなんて話しもあって噂が独り歩きして心霊スポットになったって話だ」
「へー」
相づちを打ちながら、水澄の顔を盗み見る。
真面目に運転しながら話す横顔は、男の俺からみてもカッコいい。
俺の視線に気づいたのか水澄がちらっとこっちに視線を寄越す。
あわてて前を向いたが遅い。
「ん?なんだ?」
「いやっ。あれだ!ただの心霊スポットにあんたが首を突っ込むわけないよな。他に何かあるんだろ?」
「まぁ、そうだな。普通の心霊スポットにお前をつれて行くってのも楽しそうだがな」
「ぜってー嫌だかんな!」
そんなことを話しながら、途中お昼休憩を挟みつつ高速を飛ばし、二時間ちょっとで目的地についた。
休憩に立ち寄ったサービスエリアで水澄がご当地キャラのストラップを買って、「お前に似てる」と渡してきた。
熊の形で、米が名産品なのだろう、米俵を担いでいた。目が棒線を引いただけのようなやつだった。
どこら辺が似てるのかさっぱりわからず、水澄に聞けば、「みた感じ?っていうか雰囲気?」と要領を得ないかんじだった。
いらないと断ったのにポケットにねじ込まれた。
そんな感じの道中だったが、着いたところは、
「お寺?」
確かにトンネルに行く前に寄るところがあるとは言っていたが。
「おう。ちょっと話を聞きにな」
アポは取ってあったようで、住職はすぐに俺らを中に入れてくれた。
「〇〇トンネルの話でしたな」
「えぇ、帰ってこない人がいるって噂がありますよね」
水澄が住職に訊ねると、住職は口ごもりながらも答えてくれる。
「……神隠しに合ったと言われています」
「山の、神様にですか?」
俺の質問にも難しい顔をしている。