心霊スポット
「伊織ー、起きてるか?」
自室の扉の向こうから呼び掛けられる声に起こされて、目をシパシパさせる。
「うーん」
「起きろ!」
あれ?声が近くなってない?と目を擦れば、覗き込む水澄と目があった。
アイドルだと紹介されたら納得してしまいそうなイケメンがいる。
「おはよ」
「……はよ」
「また夜更かししたんだろ?ちゃんと寝ないと背ぇ伸びねぇぞ」
「うっせ。それに高校生にもなったらそんなに背は伸びねぇんだよ!!」
「牛乳飲め。ほら、早く起きろ。出掛けんぞ」
「は?せっかくの休みなのに」
「ほら、朝飯食え。準備をしろ」
「ふぁい」
返事を返すと水澄は、部屋から出ていった。
俺はノロノロとベットから降りるとクローゼットから服を取り出す。
手に触ったシャツとジーパンでいっか。
着替えて食卓につけば、フレンチトーストが用意されていた。
チーズトーストがよかったなぁ。
「ほい」
「ん」
水澄が牛乳を出しきたので、仕方なく食べ始める。
「んで、どこ行くの?」
「これ」
水澄に渡された紙をみると、ネットの掲示板のスレッドをそのままコピーに出してあるようだ。
内容は、心霊スポットの紹介みたいだった。
「心霊スポット?」
「おう。蛍光ペンで印つけてある所」
優雅にコーヒーを飲んでいる水澄に訊ねれば、簡潔な答えが返ってくる。
文字を追っていくと、「〇〇トンネル。超コエーよ」の所にマーカーが引いてある。
「〇〇トンネルってどこにあんの?」
「ん?ここから車で二時間ぐらいかな」
「今から行くの?」
「その前に寄るところがあるけどな」
「ふーん」
「よし。食べたな?行くぞ?」
「早ない?食休みとかは?」
「お前が暗ーくなってからトンネルに行くってんなら、全然まちますよ?」
「行きましょう、直ぐに」
「よし」
水澄の運転する車に乗り込み、窓からそとを眺めながら、質問タイム。
「でさ、そのトンネルなにがあるの?心霊スポットって言うくらいだから、何かしらあるんでしょ?噂とか」
「そのトンネルは、もう使われてないトンネルでな。今は通るのは山に入る地元民ぐらいだ。それが心霊スポットで噂になって、いろいろあって、呼び込みトンネルって呼ばれてる」
「……今の説明色々とはしょったよな?」
聞き流していたけど、要領を得ない解答に水澄の方をみる。
水澄は、チラリと俺をみると楽しそうに笑っていた。
「気になる?」
「そらなるだろ。ちゃんと説明しろよ。色々あったってとこが一番重要だろ?」
「夜寝れなくなっても知らねぇよ?」
「うっせ」
ふんっ、とそっぽを向く俺に我慢の限界がきたのか笑い声をあげる水澄。
腹のたつやつ。