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徘徊する幽霊 #4

前回の「友達からの誘い」で「遊びに行かない」を選んだ方は、三話前の「徘徊する幽霊」へどうぞ。



「遊びに行く」を選んだ方は、「偽りの幽霊」に戻ってください。



では、どうぞ。

「……なんで?……は、……に……たの。私…あなた……なんで……」


 夢の中で、女の人が「なんで?なんで?」と泣いている声がしていた。


 それはそれは、悲しそうにさめざめと泣いていた。


 なにをそんなに泣いているんだろう?

 相手は慰めたりしないのだろうか。


 不思議に思い声のする方を見ると、そこには白いワンピースで、きれいな茶色の髪を緩く巻いた女の人がいた。


 見た瞬間、見た目は全然違うのに「あ、さっきの女の人だ」と思った。


 女の人は、両手で顔を覆いながら、ずっと泣いている。


「私……を…たの?…どこ?」


 何かをずっと問いかけていて、でも、それに俺は口を挟めなかった。

 たぶん、この人が話しかけている相手は俺じゃない。


「仕方がないわ……だったら、……に行くわ」

「え?」


 ぱっ、と女の人が顔をあげた。


 え。俺は違うよ。人違いだよ。あなたの探している人ではないよ。絶対こっちに


「あっ、起きた?」

「ふぇ?あっ、高柳さん」


 必死に「人違いですー!!」と念じていたら、目が覚めた。


 俺は、バーのソファ席に転がされていた。


「おもいっきり椅子から落ちたけど、痛いところない?」

「えっと、大丈夫、です。あの、どれくらい寝てました?」

「小一時間ぐらいかな」

「そうですか」


 そこまで話して、水澄がいないことに気がつく。


「あれ?水澄は……?」

「電話してくるって外に」


 え、幽霊がでるところに置き去りにして?


「盛り塩していってくれたよ」


 俺の不安を読んだかのように高柳さんが入り口のドアを指差して教えてくれる。


 確かにドアのすみに小皿に塩が盛られていた。


 あの塩は、食卓塩なのか、一回分 使いきりタイプなのか、この店にあったおしゃれな塩(岩塩とかそういうの)なのかがちょっと気になる……


 そんなことを考えていたら、扉の開く音がして水澄が入ってきた。

 盛り塩を律儀に回収している。


 俺が起きているのをみると、ニヤニヤと笑いながら話しかけてくる。


「おっ、起きたか。相変わらずモテモテだな」


 いや、幽霊にモテても嬉しくない。


「電話終わりました?」

「これからどうすんのさ?」

「んー。お前、彼女さんのことどう思う?」

「どうって……誰か探してる?」


 怖いとかそういう答えを求められている訳ではないことがわかりきっているため、それ以外で考える。


「なんでそう思った?」


 水澄は、楽しそうに目を細める。

 高柳さんは、意味がわからないって顔をしている。


「さっき、『ちがう』って言われたから、誰か探しているのかなって」


 夢の話はせずに答える。


「え?探してるって誰を?」

「それは知らない」


 高柳さんと一緒にくびを傾げる。


「自分を殺したやつを、だろ」

「は?」

「え?」


 いきなり物騒なことを水澄が口にする。


「だから、自分を殺したやつを探してんだよ」

「ななな、なんで?なんでわかったの?」

「話を聞いたとき、居抜きだったってって言っただろ?閉店の理由、すぐに手放したかった理由はなんだろうなって思ったんだ。で、今ちょっと確認をとったら、別に経営状態が厳しかった訳でも問題が起こったようでもなかったのに前の持ち主は逃げるように引き払ったって話だ」

「それで、なんで殺したって話になるのさ?」

「なんでって、ずっと後ろで言ってただろ?『なんで私を殺したの?あいつはどこ?』って」


 その一言に俺は、ぶるりと震える。


 夢の中で言ってたのは、その言葉だ。


「だから、教えてやればいい。探し人はここにはいないぞ。」


 後半は俺たちにいった訳ではなさそうだった。

 水澄が言った途端、何か冷たい者が移動したように感じた。


「? なにかいま……」


 高柳さんも感じたようだ。


 そして水澄が一言。


「たぶんもう出ねぇぞ。探しに行ったんだろ」


「探しにいった」が「殺しにいった」に聞こえたのは、気のせいだと思うことにした。




 NORMAL END 「幽霊の旅路」

次の話「次の依頼は……」へ進んでください。



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