偽りの幽霊 #3
前回「友達からの誘い」で、「遊びに行く」を選んだ方は二話前の「偽りの幽霊」からどうぞ。
「遊びに行かない」を選んだ方は、「偽りの幽霊」を飛ばして「徘徊する幽霊」に進んでください。
では、どうぞ。
昼御飯のあとは、ゲーセンにいった。
くろっちがユーフォーキャッチャーで米俵を担いだ熊のぬいぐるみをげっとしていた。
それから、店のすみにあったレトロなアーケードゲーム珠ちゃんとした。
楽しかった。
楽しかったのだが、あの人の形をした黒い影が気になって仕方がなかった。
あれは、普通じゃなかった。
まぁ、普通は見えないから普通じゃないんだけど。
それでも見た目が違うというだけで不安になる。
家に帰ると水澄がすぐに話しかけてきた。
「何かあったのか?」
「なんで?」
「面白い顔がもっと面白いことになってる」
ニヤニヤと笑いながら言う水澄に抗議しようと一度は口を開いたが、何も言わず口を閉じた。
「……先に晩飯食うか」
「うん」
俺の様子を見て、すぐに切り替えてくれるあたりが腹が立つのだが、今回はありがたい。
晩飯は、サバの味噌煮に豆腐のすまし汁、それにほうれん草のお浸しだった。
ぐっ。めっちゃうまい。
腹が一杯になると気持ちに余裕がでてきて、水澄に話す気になってきて、勢いで話してしまおうと口を開く。
「今日さ、友達と遊びにいったんだけど、そこで変なの見た」
「ほー、どんな?」
水澄にファミレスから見た交差点の様子と見えた黒い影、それに店員さんの話、ネットでヒットする事故はなかったようだったことを説明した。
話を聞いた水澄は、思いた当たることがあるようで、ひとつ頷いて口を開く。
「それは、あれだな」
「わかんの?」
「そりゃぁまぁ、当たりはついてる」
「知りたい!!」
「お前、怖がりの癖に知りたがるな」
「知らない方が怖いだろ」
「ふーん……それはたぶん思念だ」
「思念?」
「店員の話だけだが、それを前提に考えると、そこで事故は起こってない。」
え?起こってない?
俺の頭には、はてながいっぱい浮かぶ。
「事故は起こってないのに、事故が起こったようなお供えをするの?なんで?」
「事故が起こってなくても、そういった物が置いてあれば、地元の人は起きてないことは知っていてめ、余所者は違う。通りかかった人も『あぁ、誰か事故にあったんだな』と思うだろ?」
確かにその通りだ。俺たちも思った。
「そして、毎月同じような日にお供えがしてあれば、地元の人も『自分が知らないだけで誰かが事故にあったのかもしれない』と思うかもしれない」
「うん」
「そうなれば、見知らぬ誰かに『かわいそうに』と思ったり、手を合わせたりお供えをする人もいるかもしれない」
「死んでないのに?」
「死んでなくても状況的にそう思うだろ?経験で知ってるからな。で、次にそこで事故があって誰かが死んだとなれば、幽霊がでるかもしれない、と思うやつもいるよな。ほら、よくあるだろ?事故が起こったところではま事故が起こるとか。引きずられるとか」
なるほど。で?
「全ては勘違い、思い込みだが……その思いは、行き場がないから、その場に留まって形になる」
「それがあの黒い影?」
「だろうな」
「だ、大丈夫なの?」
「自分たちで幽霊話を作ったとは思ってないし、噂が立ちゃぁ、もっと思いが集まるな。そいつにとっては餌がドンドン集まってウハウハだろう」
「ダメじゃん!!どうすればいいの?ってか、今の話でいけば、始めた人がいるって事だよね?!誰がそんなこと……」
「さあな。暇なやつか発信者になりたかったんじゃねぇの?」
水澄は、つまらなさそうに頬肘をつく。
「噂話なんて、そうなもんだろ?俺的にはその影がどれくらい成長するか見てみたいがな」
「何とかしようとか思わないわけ?」
「依頼がない限りはな」
ん゛゛ー。俺が依頼するわけにもいかず、結局あの交差点に近づかないようにすると心に決めることしか出来なかった。
NORMAL END 「交差点の幽霊」
「徘徊する幽霊」を飛ばして次の話「次の依頼は……」へ進んでください。