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初めてのオーダーメイド

 キーリスの街に戻った瑞希とシャオは、まずドマルが泊っているコムルカ亭に顔を出し、ドマルと合流した。


「お帰りミズキ! ウォルカの街はどうだった?」


「収穫がありすぎて凄かったよ。食材としては依頼主の実家が香辛料を扱っている店で、諸々の香辛料と、クルの根っていう俺の世界じゃ生姜っていう食材に近い食材も手に入ったよ!」


 瑞希は鞄からウォルカで手に入れた物を次々と机に出す。


「ミズキ……この皮は何?」


「これはオーガの皮だ! 魔法を使って来る変わったオーガが居て、その皮を一緒に討伐した面子から貰ったんだ」


「オーガを討伐したの!? 何で!? 料理の依頼じゃ無かったの!?」


「依頼は初日で終わったんだけど、二日目にオーガキングが現れてさ、成り行きで一緒に討伐しに行ったんだ。まぁ殆どシャオの活躍だけどな!」


 瑞希のは横に座って飲み物を飲んでいるシャオの頭を撫でる。


「ミズキは魔法を使いすぎて倒れたのじゃ。良い経験が出来たのじゃ!」


「オーガキングまで討伐したの!? ミズキは銅級冒険者だよね!?」


「ふっふっふ。そのおかげで……じゃーん! 鋼鉄級に上がりました! と言っても報酬も凄かったからしばらく冒険者の仕事はしないけどな?」


 瑞希は鋼鉄で出来た冒険者プレートをドマルに見せ、ドマルはまじまじとプレートを確認する。


「本当に鋼鉄級になってる……こんな事聞いて良いか分からないけど、報酬って幾らぐらいだったの?」


「400万コルって大金になった!」


「稼ぎ過ぎでしょ!? 料理の依頼の方は?」


「そっちは70万コルだったな……考えてみたらすごい額稼いだな……」


「銅級冒険者の稼ぎじゃないよそれ……鋼鉄級になったなら護衛の報酬も上げなくちゃ……」


「ドマルから金は貰わないって言ったろ? それに冒険者もしばらくはやらないよ。人が困ってたら助けるけど、わざわざ危ない目に遭いに行く必要もないしな!」


「そう言って貰えると助かるよ……。それはそうとウォルカの街の香辛料ってもしかしてコール商会の依頼だったの?」


「何だ知ってたのか? 依頼を出したのはキアラっていうそこの娘さんだったけど、実家は凄くでかかったな」


「でかいに決まってるよ……この辺じゃ一番の香辛料店だよ? 他の地方からじゃコール商会から直接仕入れる事ができる行商人はわずかだしね」


「ドマルも仕入れられるぞ?」


「何で!?」


 瑞希は鞄からごそごそとキアラに渡された紹介状をドマルに見せた。


「キアラが俺の料理を気に入ってくれて、友達の行商人と旅をしてるって言ったら売ってくれるって話になったんだ。そんでその日に実家に泊らせて貰ったら父親にも気に入って貰えて、香辛料の他に紹介状を貰ったんだ」


「本物だ……ミズキ! ありがとう!」


 ドマルは瑞希の手を固く握りしめる。


「よせよ。たまたまだよ」


「たまたまでもこれは嬉しいよ! コール商会から直接買い付けられるなんて行商人の中じゃ凄いんだよ!?」


「じゃあ香辛料が切れたらドマルから原価で買わせてくれよ?」


「当たり前だよ! 瑞希はこれからテオリス家に行くんだよね?」


「そうだな。馬車の中に置いてる食材とか、調理器具も持って行きたいから一度運んでくれると助かるけど……」


「その心配はないよ。毎日昼過ぎになるとアンナさんとジーニャさんが馬車で瑞希を訪ねに来てたから今日も来ると思うよ?」


「そっか……ならその時に荷物を運んで貰えば良いか」


「そう言えばアンナさん達から話しを聞いてモーム肉の煮込みを食べたよ! モーム肉のままあんなに美味しくなるんだね!」


「リーンの店に行ったのか? お店は流行ってたか?」


「僕が行ったのは瑞希と別れた日の夜だったけど、昨日通った時はそこそこお客さんが入ってたよ」


「それなら良かった! ドマルもミミカの家に一緒に行くよな?」


「ん~……今回は僕がいてもしょうがないかな? それよりミズキが仕事をしている内に僕はウォルカに行って香辛料を仕入れて来ようかと思う」


「護衛に付けないけど大丈夫か?」


「さすがにウォルカまでの道じゃ何も起きないよ。香辛料を手に入れたら次の街に向かう予定だしね!」


「そうなのか? 次はどこに行くんだ?」


「次はマリジット地方に向かおうと思うんだ。そろそろこの辺も寒くなってくるし、雪が降り始めたら動けなくなるしね」


「そっか。じゃあ俺も早めにこの皮で防具を作って貰わなきゃな……」


「じゃあテオリス家に向かう前に工房に出しておいたら? お金もあるんだし作って貰えると思うよ?」


「そうだな! それにドマルには悪いんだけど、オーガとの戦いで貰った剣がもうボロボロになって来たんだよ」


 瑞希はドマルに剣を渡し、ドマルは手に取り確認する。


「むしろこの剣で何でオーガに勝てたんだよ……気にしないで良いから新しい剣も買ってきなよ」


「じゃあ早速武具を扱ってる店に行って来る! どこにあるかわかるか?」

 瑞希はドマルに武具店の場所を聞き、シャオと手を繋ぎ歩いて向かっている。


「あったあった! さすがにココナ村よりでかいな……ごめんください!」


 瑞希が店の扉を開けると、トンカントンカンと数人の職人が武具を作っている。


「いらっしゃい。今日は何を買いに来たんだ?」


 頭に布を巻いた厳つい顔をした男が訪ねてくる。


「軽いめの剣が欲しいのと……この皮で防具を作れませんか?」


 瑞希はオーガの皮を手渡す。


「これはオーガの皮か? ……いや少し手触りが違うな? オーガキング……よりかはしっとりしてる……」


 瑞希はこのやり取りだけで、男の腕を信じれた。


「これはオーガキングでは無いのですが、オーガキングに近いそうです。おまけにこいつは魔法を使って来た個体なんです」


「オーガがか? 聞いた事ねぇな……確かに触った事の無い感触だ。兄さんの剣ってのは今はどんなのを使ってる?」


 瑞希は腰に差している剣を外し、男に渡した。


「オーガを狩った割には御粗末な剣だな……この劣化の仕方は……魔力か?」


「分かるんですか? 自覚してる訳では無いのですが、戦闘中に気持ちが昂ぶると流れているみたいで……」


「持った時に歪みを感じるんだ。……兄さん金はあるのか?」


「オーガ討伐の報酬がありますが?」


「そうか……まず皮の方は問題無く作れる。剣の方なんだが、少し値は張るが面白い金属がある」


「面白い金属ですか?」


「その金属は鉱石を食べる魔物の腹から取れる鉱石で作った物だ。これなんだが……」


 男はごとりと二人の前に金属のインゴッドを置く。


「魔力が残ってるのじゃ」


「嬢ちゃんわかるのか? 嬢ちゃんの言う通り、こいつには元々魔力が宿っているらしく、普通の金属より加工がしにくい。丈夫といえば丈夫なんだが、それなりに値が張る。但しこれなら元々魔力が宿っているから、兄さんの様な使い方も出来ると思うんだ」


「ちなみに剣と鎧を作ったらどれぐらいになりますか?」


「ざっと150万コルって所だな」


「たっか!」


「辞めとくか? 鎧だけなら10万コルで作れるぞ?」


 瑞希値段を聞いて躊躇する。

 自身の職業は自称料理人という事で、剣はそんな立派な物じゃ無くて良いのでは無いかと悩んでいるとシャオが返事を返した。


「それで良いから作るのじゃ!」


「待て待て待て! 150万って言ったらあれだぞ? 砂糖が山程買えるんだぞ!?」


「オーガ討伐の報酬は半分はわしのもんじゃろ? ならその金でミズキの装備を作るのじゃ」


「そりゃそうだけど……良いのか?」


「武具はケチると死ぬのじゃ。いざと言う時に後悔するのじゃ。もしそんな事があった時、ミズキが死ぬのは嫌なのじゃ……」


 シャオは恥ずかしそうに顔をそらしながら瑞希に言葉を伝える。


「シャオ……可愛い奴めー!」


「うぬっ、止めるのじゃ、離すのじゃ!」


 瑞希は感激のあまりシャオを抱きしめ頬擦りしていると、背後から咳払いが聞こえる。


「仲の良いのはわかったからどうするんだ?」


「じゃあお願いします! あ、調理器具とかも作れますか? 出来たらその金属で包丁を作って欲しいのと、ちょっと作って欲しいのが色々ありまして……」


「それは構わねえが、この金属で包丁をか?」


「ちゃんと魔力が扱える様になったら、硬い物でも切れる包丁って便利だと思ったんですよ!」


「兄さんは冒険者じゃないのか?」


「冒険者でもありますが、本業は料理人です!」


「それで包丁を……まぁ金を払ってくれるなら作るけどよ……そうだ! 料理人なら屋台街の先にあるモーム肉の煮込みは食ったか? 昔はたまに出てたんだが、娘に代わってから料理は不味くなって出せなくなったんだよ。けど最近また出始めてな! 昔から好きだったんだけど、最近のはそれより美味いんだ!」


 厳つめな男はその料理が本当に好きなのだろう。

 キラキラと眩しい笑顔でその料理の美味さを伝える。


「くふふ」


 シャオは男の話を聞きくすくすと笑う。


「それは楽しみですね! 一度行ってみます!」


「是非食べてみてくれ! ……っと話が逸れちまった。じゃあ先ずは採寸からしていくか。兄さんは包丁以外の欲しい調理器具ってのをそっちの弟子に伝えといてくれ!」


 瑞希はミミカの晩餐に向けて動き出すのであった――。

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