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オーガとの対決

 瑞希達がウォルカを出てから程なくして、オーガの声と思われる雄たけびがウォルカに響く。

 その声を聞いた住民は何事かと驚く者もいれば、家に籠る者もいる。

 カレーを作っていたキアラは手を止める。


「なんなんな今の声は? ミズキとシャオは大丈夫なんな?」


 キアラは二人が無事である事を祈るのであった。


◇◇◇


 三人と(シャオ)は街道から外れ、草原を走っている。

 瑞希はオーガが居るであろう場所に向かう中、自身とシャオの説明をする。


「俺達をからかってるんじゃないだろうな?」


「からかってないよ。証拠にシャオは姿を変えただろ?」


「あんたが何で男の癖に料理が上手いか分かった気がするわ……」


「とりあえずシャオはこの姿の方が魔法を使いやすいみたいだし、二人にも隠し事をしたいとは思えなくなったんだよ」


「ひどいぜ全く……でもまぁ見ず知らずの人間に話す内容じゃねぇな。それにミズキが俺達を信用してくれてるって訳だ!」


「そうね……でもこの討伐が終わったらなんか美味しい物を食べさせなさいよ!?」


「あはは。ならウォルカでしか食べれない料理を出すお店を紹介するよ!」


「にゃ~ん!」


 三人の会話が終わる頃、シャオが一鳴きしたと思えば、大地を揺るがすような雄叫びが聞こえる。

 

「ちっ! ウォルカまでこんなに近づいてやがったかよ!」


「ミズキ! オーガの相手は任せるわよ!?」


「やれるだけの事はするさ!」


 三人は声のする方に向かい、走り出す。

 途中に逃げて来たであろう動物とすれ違う。


「この先だな! ミズキはオーガ共を確認したら引き付けてくれ! 俺達はオーガキングを見つけたら隙をみて襲い掛かる!」


「分かった! じゃあ俺達は先に行ってオーガを確認して攻撃してくる!」


「にゃ~ん!」


 瑞希がそう言うと、シャオが一鳴きして瑞希の体を空中に浮かせてオーガがいる方向へ飛んでいく。


「本当に飛んでいくとかどれだけ馬鹿げた魔力なのよ……」


 瑞希とシャオは十数匹のオーガを確認する。

 オーガ達は赤い体で、額に一本角が生えており、体躯としてはカインと同等の大きさだ。

 しかし瑞希は、オーガキングと呼ばれる個体との違いが分からずにいた。


「あれがオーガか……やっぱり鬼っぽいな。とりあえずあいつらの注意を引いて、オーガキングから離そうか? シャオ、頼む」


「にゃんにゃ~ん!」


 シャオが一鳴きすると、瑞希の周りにパキパキと音を立てて氷柱が形成され、オーガに向かって放たれた。

 オーガ達は空中からの攻撃に対応できた者もいるが、数匹は深く刺さりその場で倒れる。

 避けたオーガや、傷が浅かったオーガ達は瑞希に気付くと雄叫びを上げ走って近寄ってくる。

 シャオはその光景を見ると、人の姿に戻る。


「やはり空を飛びながらじゃと威力が落ちるのじゃ! 魔力も無駄に出来んから地上に降りて戦うのじゃ!」


「マジか……危ない時はお願いしますシャオ先生……」


「今回は本来の姿で戦えるのじゃから任せるのじゃ!」


 シャオは再び猫の姿に戻ると地上に降り立ち、攻撃を受けたオーガが迫って来る。


「にゃ~ん!」


 シャオが一鳴きすれば風の刃が、近づいて来た数匹のオーガを切りつけ、倒れる。


「意外に余裕なんだな……オーガが弱いのか、シャオが凄いのか……多分後者なんだろうな~」


 倒れたオーガを見た別のオーガが瑞希を脅威と見なしたのか、先程とは違いじりじりと距離を詰める。


「にゃんにゃんにゃ!」


「何言ってるか全くわからん……距離を詰めれば良いのか?」


「にゃー!」


「めっちゃ怖いんだけど……シャオに任せるからな!?」


「にゃんにゃー!」


 瑞希は剣を手に持ち、オーガに向かって走り寄って行くのであった――。


◇◇◇


 瑞希が飛び立ち、オーガ達の雄叫びを耳にしたカインとヒアリーは、瑞希が飛んで行った方向と少しずらしながら走って行く。


「ミズキ達が向こうで戦ってるならこっちが手薄になるはずだ! 絶対倒すぞ!」


「大声出さなくてもわかってるわよ! 私に傷をつけた事を後悔させてやるわ!」


 オーガ達が瑞希と戦っている場所の奥にオーガキングは居る。

 オーガとは色が違い、青色の体に、一回り程体が大きく、額には二本の角が生えている。

 オーガキングは手に棍棒を持っており、前線で戦うオーガ達に声を荒げ鼓舞している様だ。


「いたぞ! ヒアリーまず一発頼む!」


「可憐で勇ましい火の妖精よ……我が望むは一筋の炎……彼の者に災厄なる鉄鎚を! エンドーラ!」


 ヒアリーが詠唱し、放たれた炎は太く大きな槍の様な形をしてオーガキングに向かって行く。

 オーガキングに迫り行く炎はオーガキングの頭に命中するが、体を仰け反らすぐらいにしか効いておらず、炎を放った人間を見据えると雄叫びを上げる。


「うるせぇよっ!」


 距離を詰めていたカインが大剣を振りかざし斬りかかる。


「ゴアァァッ!」


 オーガキングは左腕で大剣を受けると、右手に持つ棍棒を振り回す。


「硬ぇなチキショウ!」


 カインは振り回された棍棒を頭を下げて避けると、ヒアリーの追撃の火球が再びオーガキングの顔に命中する。

 その隙にカインが大剣を横なぎに振り、遠心力を乗せた大剣はオーガキングの腹部に命中すると、浅く斬り傷を付けた。


「この大剣はなまくらかよ!?」


 オーガキングは鬱陶しそうにカイン目掛けて棍棒を振り下ろす。

 カインは避けられないと思い大剣で受け流そうとするが、オーガキングの持つ棍棒にヒアリーの放つ火球が当たり、一瞬の間が生まれた隙にカインが棍棒を避けると、オーガキングの頭に大剣を振り下ろした。


「これならどうだ!」


 大剣はオーガキングの頭部に命中するが、頭部の硬さに大剣の刃が欠ける。

 オーガキングは頭が揺れたのか足をもつれさせながらも、再び棍棒を横なぎに振り回すと、ついにカインの体に命中する。

 カインは当たる直前に後ろに飛び、避けようとしたが間に合わず、勢いを殺しは出来たが吹っ飛ばされてしまう。


「カイン!?」


「大丈夫だ! ヒアリー! 俺が時間を稼ぐからでかい魔法を頼む!」


「死ぬんじゃないわよ!?」


「当たり前だっ!」


 カインは再びオーガキングに詰め寄りながら斬りかかるのであった――。

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