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ウォルカの飲食店

 瑞希は上空からウォルカを見ると、門の位置を確認し、少し離れた所に降り立つ。

 キーリスに比べると小さいが、当然ココナ村とは比較にならない街だ。

 瑞希は門番をしている憲兵に呼び止められる。


「ウォルカの街には何をしに来られたんですか?」


「冒険者ギルドの依頼で来ました」


「依頼書とプレートを見せて頂けますか?」


 瑞希は依頼書と冒険者プレートを見せる。


「確かに……冒険者ギルドで料理の依頼ですか?」


「知人にも何でそんな依頼があるのかと驚かれましたが、やっぱり変わってますか?」


「そうですね〜料理の依頼は聞いた事ないですね。最近ではオークが頻繁に見受けられるので、オークの討伐や調査の依頼が多くあるみたいですので、キーリスからの派遣かと思いましたね。依頼書には間違いないので……ようこそウォルカの街へ!」


「一先ず冒険者ギルドに行きたいのですが、どこにありますか?」


「この通りを真っ直ぐ行けば直ぐに着きますよ!」


「ありがとうございます!」


 瑞希はウォルカに入ると冒険者ギルドに向かい歩く。


「鼻がムズムズするのじゃ」


「香辛料の香りかな? ウォルカはもしかしたら香辛料が名産かな?」


「辛いのじゃ?」


「物によるな。香り付けにも使うし、肉の臭み消しにも使うし、もちろん辛いのもあるな」


「辛いのは嫌なのじゃ……」


「でもシャオの好きなハンバーグにも甘いものにも使えるぞ?」


「何じゃと!? それは食べてみたいのじゃ!」


「俺も欲しいから帰りに買って帰ろう!」


 瑞希達は冒険者ギルドに着くと、受付に依頼の情報を聞き、依頼の有った店に到着した。

 大通りからは少し離れた路地にその料理店はあった。


「料理店なのに入口には看板も出てないけど、今日は休みかな?」


 瑞希は扉をノックし、反応がないので扉に手をかけると鍵は掛かっておらず、扉を開け中を覗く。


「すみませーん……なんか凄い匂いがしてるな」


「鼻が曲がるのじゃっ!」


 店の奥からガタゴトと物音がする。

 瑞希とシャオは鼻を押さえながら厨房の方に歩いて行き、中を覗いてみると、何やらすり鉢の様な物で食材らしき物をすり潰している小柄な女性が居た。


「ん? 誰なんな〜?」


「勝手に入ってすみません。冒険者ギルドから依頼されて来たんですが……香辛料でも作ってるんですか?」


「おぉ! そう言えば冒険者ギルドに依頼してたんな! 料理作れる人なんな?」


「ある程度は作れますよ? 依頼に合った新しい料理の開発ってのはどういう物ですか?」


「この香辛料を使った料理を作りたいんな! 冒険者だと色んな所で料理を食べてると思って依頼したんな〜」


 瑞希は依頼の理由が腑に落ちたのか、女店主に自己紹介をする。


「改めましてミズキ・キリハラと言います。銅級冒険者をしています。こっちの子はシャオと言って俺の妹です」


「シャオなのじゃ……」


 シャオは鼻を押さえているので鼻声で自己紹介をする。


「私はキアラ・コールな! 普通に喋ってくれて良いんな。ミズキは男なのに料理するんな?」


「了解。まぁ料理は好きだし、楽しいから良く作るな。キアラは香辛料を使ってどんな料理を作りたいんだ?」


「まずはこれを食べてみて欲しいんな!」


 キアラは瑞希にスープの入った器を渡すが、そのスープは見るからに辛そうな真っ赤な色をしている。

 瑞希は意を決して匙を入れると一口啜ってみた。


「だぁぁ! やっぱ辛ぇぇ!」


 シャオは瑞希の様子を見て、口を付けない事にした。


「やっぱり美味くないんな?」


「美味いとか美味く無いとかじゃなくて、辛いわ! これじゃ誰も食べれないだろ? 辛い料理が作りたいのか?」


「そういう訳ではないんな。ただ香辛料を肉に付けて焼くだけでは面白く無いからスープに入れてみたんな」


「じゃあ香辛料を使ってて、素材に直接使うんじゃなくて、辛いだけじゃない料理で良いのか?」


「そうな! でも香辛料は、普通は肉とかに付けて焼くんな。これもトッポをすり潰してそのままスープに入れて見たけど、この有様なんな……」


 瑞希は辛さが我慢出来なかったのでシャオに魔法で小さめの水球を出してもらいゴクゴクと飲む。


「こっちのちっこいのは魔法使いなんな? すごいんな〜?」


「お主もちっこいのじゃ! 瑞希の口が壊れたらどうするのじゃ!」


「大丈夫だから心配すんな。今すり潰してるのは……って見たところ色々すり潰してるんだな」


 厨房の台の上には色々な物をすり潰した形跡があり、何枚かの皿に移してあった。


「出来立ての香辛料なら美味くなると思ったんな。けどどれも変な味のスープになるだけで別に美味くならんのな」


「スープは何で取ったんだ?」


「取る?」


「骨とか、肉とかで出汁は取ってないのか?」


「野菜とモーム肉と塩、胡椒は入れたんな。素材を焼く時と大体一緒なんな」


「あぁ……まぁとりあえず俺が知ってる香辛料を使った料理があるから一度作ってみようか?」


 キアラは目を輝かせて頷く。


「食べて見たいんな! ここにある材料は好きに使って良いんな!」


「辛くないのならわしも食べてみたいのじゃ!」


「なら辛くないのも作るか」


 瑞希は食材を確認すると、キアラのすり潰していた香辛料の匂いを嗅いでみる。


「これはコリアンダー……こっちはクミン……ナツメグ……ターメリック……シナモン……この赤いのがチリペッパーだな」


「香辛料の名前なんな? 変わった呼び方をするんな?」


「俺の故郷の呼び方だな。でもこれだけあれば一先ずあれが作れるな」


「あれって何なのじゃ?」


「子供の人気をハンバーグと二分する……カレーだ!」


 キアラは聞いたことも無い料理名に首を傾げるが、シャオはハンバーグと同じくらい美味しい物と聞き、胸をときめかせるのであった――。

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