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キーリスの冒険者ギルド

 シャオと手を繋ぎながら冒険者ギルドに到着した瑞希は、ココナ村とは比較にならない建物の大きさに感心しながら、扉を開け建物の中に入る。

 夜という事もあり、冒険者の数はそこまで多くは無いが、子連れの冒険者というのは珍しいらしく、シャオと手を繋いでいる瑞希を見るとくすくすと笑い声が聞こえる。

 瑞希は気にする事なく空いている受付カウンターに向かい、話を聞く。


「すみません、ココナ村から今日到着したので、一応顔を出しに来ました」


「お疲れ様でした。ではプレートの確認をさせて頂いても宜しいでしょうか?」


 瑞希はポケットからプレートを取り出すと受付の女性に渡す。


「これはテミルの……という事はキリハラ様はココナ村で登録されたんですね?」


 子連れな上に田舎者かよ……やめろよお前聞こえちまうぞ……。


 先程から聞こえる嘲笑の様な言葉も、瑞希は気にしていなかったのだが、シャオは違った。

 瑞希を馬鹿にする声がする方に視線を向けると、睨みつけ殺気を飛ばすと、二人の男は脂汗を流すと気を失い倒れた。

 ギルド内がざわつき、職員が二人の元に駆け寄る姿を見て、シャオはふふんと得意げな顔をしながら視線を戻す。

 受付嬢と話をしている瑞希に頭をコンと叩かれた――。


「そうですか。テミルは元気にやっていますか」


「初めて会った時は村の爺さんと言い合いをしてましたね」


「あのテミルが言い合いを……それは見てみたかったです」


 受付嬢は笑いながら瑞希の話を聞いていた。


「そんな感じで、その場で登録して直ぐに宿に行ったのでギルドの説明を聞きそびれたのですが、最低限の守らなければならないルールとかはありますか?」


「そうですね……まず、一年間ギルドに来なかった場合は自動で冒険者登録は破棄されます。一年間というのはどこの支部でも構いませんので、ギルドに顔を出して、プレートを見せて頂きますとその日から数えます。本日顔を出して頂きましたので、今日から一年間は大丈夫ですね」


 瑞希はふむふむと頷く。


「依頼についてですが、こちらは依頼内容に応じて評価が変わり、ギルドからの討伐依頼等は報酬が多少少ない時も有りますが、その分ランク評価は上がりやすいです。あちらの掲示板にあるような直接依頼等は表記の金額を御支払致しますし、自分に合った依頼を探す事も出来ますので、得意な依頼ばかりをこなす事も出来ますが、やはり受ける依頼内容が偏りますので、ランクを上げるための評価は少し落ちます」


「前回の僕の様に、偶然狩った魔物を報告に来た場合はどうなるんですか?」


「話を聞く限りは、たまたま依頼が有った事と、ゴブリンは害獣指定されていますので、二重に報酬を受け取れた事になります。もしも依頼がなかった場合は害獣を駆除して頂いたという事で、ギルドから規定の報酬はお支払い致します」


「という事は依頼をこなす方がお金にはなるのか……依頼をいつまでも受けない場合のペナルティは有りますか?」


「ギルドに顔を出して、自動破棄の更新をしていた上で、依頼を一年間受けてなかった場合はギルド登録料として5万コルを頂きます。自動破棄をされた場合ランクがまた最初からになりますので、仕事をお休みしたい方は登録料を支払って、届出を出すのが普通の流れですね」


「成る程……とりあえずあちらで依頼を探してきても良いですか?」


 瑞希は掲示板を指差す。


「はい。キリハラ様は銅級冒険者ですので、依頼書に銅級以上と書かれた依頼書をこちらにお持ちください」


 瑞希は掲示板の前に立ち、依頼書を確認する。


「薬草の採取2千コル……害虫駆除3千コル……ん〜ゴブリン討伐って意外にもお金になったんだな……。おっ? これは? オーガの討伐……駄目だ鋼鉄級以上か……」


「オーガなんぞすぐに狩れるのじゃ!」


「ランクが足りてないんだよな……駄目だ、銅級だと特に良い仕事はないな。もう一回さっきの受付の人に聞いてみよう」


 瑞希は再び先程の受付に戻り、話を聞く。


「すみません、銅級向けの討伐依頼とかって少ないんですか?」


「銅級ですとゴブリンとかコボルトみたいな小さめの魔物が対象になり易いのですが、最近東の方で潰されたゴブリンの群れが発見されたので、しばらくは少ないと思います」


 瑞希はそれをやったのが自分達だというのに気付き、頭を抱える。


「キリハラさんは得意な事はありますか?」


「得意な事? 剣が使えるとか、魔法が使えるとかですか?」


「それ以外でも構いません。情報網があったり、人探しが出来たり等、自分の売りになる様な事です」


「あぁそれなら料理が出来ます! ……ってそんな依頼無いですよね」


 瑞希の言葉を聞いた受付嬢は、ピンと来たのか、カウンターにある書類をゴソゴソと探し出す。


「ありました! ウォルカの街ですが料理の開発を手伝って欲しいという依頼があります……これです」


 受付嬢は瑞希に依頼書を差し出す。


「『料理開発の手伝い。自店舗の看板料理を作りたいのだが、アイディアを出せる方。ランク条件は無し。報酬は出来高制』……これって……」


「やはり難しいですよね。報酬も本当にあるのかわからないですし……」


「いやいや! 僕向きですよ! なんで掲示板に貼らないんですか!?」


「料理ができる人なら、普通は冒険者になりませんよ……誰にも見向きもされなかった依頼です」


「でも出来高制って事はギルドに収入は無いんですか?」


「この場合ですと、依頼内容に似た規定と比べ、その金額より、少し割増した金額を依頼主からお預りしております。依頼達成についてはこちらの用紙に記入して貰って下さい。報酬はそのまま依頼主から直接受取って頂き、用紙をギルドに提出されればキリハラさんのランク評価が上がります」


「じゃあこれ受けます! 料理を作って依頼もできるなんて一石二鳥だ!」


「かしこまりました。ウォルカにはいつ向かいますか?」


「そんなに遠くは無いですよね? 今日はキーリスに泊まって、明日ウォルカに向かいます!」


「ではこちらの用紙にお名前を書いて頂き、依頼書もお渡ししておきます」


 瑞希は馬車の中でミミカに習った自分の名前を慣れない手つきで記入し、依頼書を受け取る。


「そちらの依頼書には依頼達成時に依頼主様に名前を記入して貰って下さいね」


「承知しました! では行ってきます!」


 瑞希は嬉しそうにギルドを後にするが、料理の依頼を受ける冒険者はおらず、子連れな事もあり、変わり者の冒険者として、ギルド内にいた者達から認知されるのであった――。

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