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すれ違いの思惑

 リーンの店で調理を終え、ドマルの言っていたコムルカ亭に到着した瑞希達はドマルと合流し、部屋でくつろいでいた。


「いつまでも宿に来ないから心配したよ。何かあったの?」


「屋台街の先にあった飲食店で料理をする事になってな、時間のかかる料理だったからそのまま長居しちまったんだよ」


「僕も食べてみたかったな~。シャオちゃん、美味しかった?」


「無論美味かったのじゃ! こう、モーム肉なのにホロホロと柔らかくな……」


 シャオは先程食べた料理を嬉しそうにドマルに説明する。


「モーム肉のまま柔らかくするなんて本当に魔法みたいな事するね」


「でもそこの元居た女将さんも作ってたみたいだから、有名では無いにしろ、作ってた人は居たって事だよ」


「僕は宿で食事をしたけど、最近はミズキの料理ばっかり食べてたからなんか物足りなく感じたよ」


 ドマルは苦笑しながら話す。


「ところでミズキは冒険者ギルドに顔を出したかい?」


「いや行ってないな……行かないと不味かったか?」


「一応どの冒険者がここにいるって証明は必要かもしれないかな? ココナ村ではバタバタしてたからその辺の説明がうやむやになってたね」


「ついでに簡単な依頼でも探して来ようかな……ミミカやドマルにある程度の資金は貰えたけど、色々買っちまって心許なくなってきたし」


「僕は数日この街で仕入れの商談をしてるから良いんじゃない?」


「ていうか俺はドマルに付いて行って良いのか?」


「僕は全然大歓迎だよ! ミズキと一緒に入れると安心だし、美味しい物も食べれるしね! でもミズキも冒険者や料理人の仕事が入ったら遠慮せずに言ってよ?」


「俺も色々この世界を回りたいからそう言って貰えると助かる! でもこれからは依頼料とかいらないからな!」


「わかったよ! じゃあ宿泊代は出すけど、食事代はミズキ持ちでどう?」


「良いな! それで行こう! じゃあ俺は今日の内に冒険者ギルドに顔出してくるよ。シャオも行くか?」


「ミズキが行くなら行くのじゃ!」


「ギルド迄の道はね……」


 ドマルに冒険者ギルドの道程を聞き、瑞希はまた出かけて行くのであった――。


◇◇◇


 リーンの店を出たアンナとジーニャは近くの宿を訪ね歩いていた。


「ここも違ったか。後は大通りの先にコムルカ亭という所があるらしいからそこに行ってみるか」


「そこにも居なかったらまたやり直しっすね……」


「嘆いてもしょうがない。まずはコムルカ亭に行ってみよう」


 ――二人はコムルカ亭に到着し、宿の主人に尋ねる。


「夜分にすみませんっす。ここに、ドマル・ウェンナーという方か、ミズキ・キリハラという方は泊ってないっすか?」


 主人は二人をじろじろと見ると、急に訪ねて来た事と、冒険者の風貌をしている事で怪しんでいた。


「客の情報を誰とも知らない奴に教える事は出来ないね」


「失礼しました。実は私達はテオリス家から使いに出された者で……」


 アンナは懐からミミカに渡されていた、テオリス家の紋章を主人に見せる。


「こ、これは失礼しました! おぉいドマル! お前に客だ!」


 主人は慌てた様子で、二階に居るであろうドマルを大声で呼んだ。

 その声が聞こえたドマルは、二階から降りて来ると、二人の姿を確認し様々な妄想を働かせ、一人焦っていた。


「アンナさんとジーニャさん!? な、何でこんな所に!?」


「こんな所とはなんだ! お前何かしたのか!?」


 ドマルは瑞希がバランに取った行動で、何か処罰が下されるのかと思って焦る。

 その焦り方を見た主人がドマルが何かをしたのかと焦る。


「落ち着くっす! 何もしないっす! ミズキさんもいるっすか!?」


 やはり二人は瑞希を探している。

 そう思ったドマルは、自分が想像した通りかと思い、瑞希を守るため嘘をつく。


「ミ、ミズキとはあの後すぐ別れたんだ! どこに行ったかは知らないな~……」


 バレバレな誤魔化しである。

 しかし、その言葉を聞いた主人が一言口を挟む。


「ミズキってのはあれか!? さっき出て行った……「わぁー! 誰も出てってないでしょ!?」」


 ドマルは思わず主人の言葉をかき消す大声を張り、主人の言葉をかき消そうとした。


「ドマル殿……何か誤解していませんか?」


「……へ?」

「という訳で、ミズキ殿にミミカ様達の食事を作って欲しいんです」


 ドマルはアンナから事情を聞き、勝手な妄想をして暴走をしていた事に恥ずかしくなる。


「本当に焦ったよ……ミズキがあんな事をしたから、処罰でも下されるのかと思った!」


「それにしてもドマルさんも嘘が下手っすよ! バレバレじゃないっすか!」


「でもミズキ殿を守ろうとした行動なのだから、良き友人なのでしょうね」


 アンナはふふっと微笑みながら言葉を溢す。


「ミズキがあんな事をして、こんな時間にわざわざ二人がここまで探しに来たと知ったらそりゃ焦るよ! でもミミカ様達が仲直り出来たみたいで良かったね!」


「そうですね。ところでミズキ殿はどちらに?」


「それがついさっき冒険者ギルドに顔出しだけ済ましに行くって出て行ったんだ。さっき出た所だから直に帰ってくるよ」


「入れ違いになったっすね……ここで待ってても良いっすか?」


「それは構わないけど、二人はもう食事は済ませたの? 良かったらここでもまだ食事は出来ると思うけど……」


「御心配なく。先程ここへ着く前に香りに釣られて別の店で食事を済ませて来ました」


「香りに釣られて? そんなに美味しそうな匂いだったの?」


「そりゃそうっすよ! 食べてみて驚いたのに、それを作ったのはミズキさんだったんすよ!」


 ジーニャは嬉しそうにルク酒煮込みの素晴らしさをドマルに説明した――。


「シャオちゃんにも聞いてたけど、本当に美味しそうだね! 僕も食べたかったな!」


「多分ドマルさんも好きっすよ! ポムの実の感じもしたっすから!」


「それにモーム肉があんなに柔らかく食べれるなんて初めて知りましたよ!」


 二人は興奮冷めやらぬ様な話ぶりを微笑みながら聞いていたドマルは、柔らかいモーム肉という事に反応した。


「柔らかいモーム肉と言えば、ミズキの料理を初めて食べた時のはんばーぐも美味しかったな~。シャオちゃんがものすごく気に入ってて、ミズキから分けて貰ってたよ」


「なんすかそれ! うちらも食べたいっす!」


「ミズキ殿はどれだけ美味い料理の知識があるんだ……」


「本当にミズキは魔法使いより、魔法みたいな料理を作るよね!」


 ドマルが笑いながら瑞希の事を話していると、アンナとジーニャはその言葉にただ頷くのであった――。



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