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異世界で始める飲食巡り~誰でも使える魔法の作り方~  作者: 正岡千之
第一章 瑞希の長い一日、さよならココナ村
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オオグの実とキャム

 二人が昨日行った野菜の店に着くと、元気の良い御婦人が声をかけて来た。


「お早うあんた達! うちの野菜はどうっだったね!?」


「お早うございます! 美味かったですよ!」


「お嬢ちゃんもちゃんと食べたかい?」


「ミズキの料理は美味かったのじゃ!」


「ちゃんと野菜を食べれてえらいねぇ! 今日は何を買いに来たんだい?」


 瑞希は並んでいる野菜を眺めると、ニンニクに似たオオグの実の事を思い出す。


「昨日買った野菜にオオグの実が入ってたんですが、あれって売ってますか?」


 御婦人はぎょっとした顔をして瑞希に尋ねる。


「あんたもしかしてオオグの実を食べたのかい!? 不味かったろう!?」


「あれはちゃんと調理すると美味いんですよ」


「ほんとかい? オオグの実はあるにはあるけど、あれは虫除けとかに入れとくもんで、お兄ちゃんの袋にも大量に買ってくれたから入れただけなんだけどね~」


「おかげで美味しい料理が出来ました! なぁシャオ?」


 シャオは昨日のミネストローネを思い出す。


「良い香りがして美味かったのじゃ!」


「良い香り!? この臭いのがかい?」


「生のままだと臭いんですけどね。でも中には生で使える料理もありますよ!」


「信じらんないねぇ~。でも欲しいってんなら野菜を買ってくれたらおまけでたっぷり入れてあげるよ!」


「良いんですか!? じゃあ生で食べれる葉っぱみたいなはありますか?」


「このキャムはシャキシャキと瑞々しくて美味いよ!」


 レタスよりは少し黄色っぽい葉をしているが、サラダでも食べれそうな見た目の野菜だ。


「後はポムの実も大量に欲しいのですが」


「あいよ! 他には何かあるかい?」


「じゃあ苦いと噂のモロンも下さい! それと酸っぱい果実とかはありますか?」


「あるよ! そこのシャクルがそうさ!」


 緑色をした柑橘類には違いはないが、これも大きい。

 地球にも大きい柑橘類はあるのだが、普段目にしない瑞希は呆気に取られた。


「で、でかいですね。人の頭ぐらいありそう……これってどうやって食べてるんですか?」


「このすっぱい果汁を好きな人は、酒とかに混ぜて飲んでるね! あたしはあんまり好きじゃないけどね!」


 御婦人が笑いながら説明をしてくれる。


「ならこれは三つ程頂きます! 後は……」


「お兄ちゃんこれはどうだい? マグムって言ってグムグムの仲間なんだけど、グムグムよりも甘いんだよ! 茹でてやったらお嬢ちゃんも喜ぶんじゃないかい?」


 御婦人は白っぽく、巨大なジャガイモみたいなグムグムより、二回り程小さく楕円の形をした野菜を取り出す。


「確かに甘そうなのじゃ! 食べてみたいのじゃ!」


 シャオの目利きにより、瑞希はサツマイモみたいな物かと納得し、何個か入れてもらう。


「後はこれぐらいの小さい果実はありますか?」


 瑞希はパン屋で見せてもらったブドウの様な果実を説明した。


「あぁ、それはコロンの実だね。甘酸っぱくて子供のおやつにちょうど良い果実さ。たっぷりいるかい?」


「はい! ……パルマンとグムグムとカマチは残ってるし……とりあえずはこれだけ買えば大丈夫かな?」


「これだけ買ってくれるのは嬉しいけど結構大荷物だよ? 背中に背負える籠を貸したげようか?」


「助かります! 後で返しに来るので!」


「大丈夫だよ! なら全部で2千コルで良いさね!」


「だからお姉さん安すぎますって!」


「良いんだよ! その代わりお兄ちゃんの料理を食べさせておくれよ!」


「じゃあお昼頃に籠を返しに来るのでその時にでも何かお持ちしますよ!」


「楽しみだね! でもちゃんと食べれる物にしておくれよ?」


「任せて下さい!」


 御婦人は笑顔で二人を見送ると、瑞希は八百屋を後にした。


「お、重い……」


 瑞希が野菜を背負い、シャオがパンを持っているのだが、シャオは空いている手は瑞希と繋いでいる。


「何かあった時は魔法を使うんじゃぞ!」


 シャオはそう言っているが、こんな平和そうな村で何があるのか……むしろシャオが使えば良いじゃないかと瑞希は思うが、自分が使う方が悪目立ちはしないか……と納得をする。

 実はシャオがただ手を繋ぎたいだけなのだが……。


「結構な荷物になってきたのじゃ。まだ何か買うのじゃ?」


「後はこの竹籠みたいな素材で出来た箱とか、蓋が付いてる瓶みたいなのは欲しいな。昨日の雑貨屋に有ったかな? てかこんな早朝に開いてないかな?」


 そう思った瑞希だが、八百屋のついでに雑貨屋に来てみると昨日の老婦が表で草木に水をやっていた。


「ちょうど良かった! おばあさん! お店は空いてますか!?」


「あぁ? あぁ、昨日のお兄ちゃんかい? 何か欲しいのかい?」


 昨日来た時よりもシャキっとした老婦は瑞希の事を覚えていたみたいだ。


「こういう籠の素材で出来た箱と! 蓋が出来る瓶みたいなのはありますか!?」


「あるよ~。今買うかい?」


「良いですか!? 無理を言ってすみません!!」


 そう言って店主と一緒に店に入り、弁当箱と瓶を何個か見繕ってもらい、でこぼことした亀の甲羅の様な物を見つけた。

 触ってみるとチクチクとするが、怪我をしそうなほど突起が出ている訳ではない。


「これは! なんですか!?」


「あぁ? あぁ、これはニードルタートルの甲羅だね。まだ子供の甲羅だから、盾にも武器にも出来ないからうちに流れて来たんだけど、だぁれも買わないねぇ……」


「じゃあ! 俺が! 買います!」


「良いのかい? 私が言うのもなんだけど使い道ないよ?」


「大丈夫です! あと、ブラシと櫛ももらえますか!?」


「あいよ~。じゃあ〆て2万コルだね」


「ありがとうございます!」


 店を出た瑞希はさすがの荷物の多さに、野菜を背負いながら、両手で雑貨を抱えていた。

 手を繋げなくなったシャオは仕方なく瑞希の服を摘まんで後ろを歩いている。


「ブラシとかは何に使うんじゃ?」


「何って、シャオの髪を梳かすのにいるだろ? ブラシは猫の時も使えるしな」


 シャオは自分のだとは思ってなかったので瑞希の言葉に顔を綻ばせたが、瑞希はそのシャオの顔が見えていない。


「そ、そうじゃな……くふふ、くふふふ」


 しかし、シャオの声は聞こえていたので、喜んで貰えてるのは充分に伝わったのだった――。

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