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嫉妬の目

 ウォルカに到着した一行は冒険者ギルドの前で馬車を止める。


「一応バランさんから書状を預かってるからギルドに話を通しておこう。ランク考査にも影響あるだろうしな」


「わかったわ。魔力薬とかは必要経費で購入しても良いのかしら?」


「大丈夫だろ? カインは必要な物はないのか?」


「食糧なんかはミズキ持ちだし、お前等が居れば水なんかもいらないんだろ? 武器もあるし、剥ぎ取り用のナイフなんかもあるしな……ミズキは何か買うのか?」


「保存用のムルの葉を買っとこうかな。オークの群れが居れば肉の回収もしたいし、他の美味そうな魔物がいるかもしれないし……」


「あんた、ちゃんと美味しい物を作りなさいよ!?」


「大丈夫大丈夫! 基本的には美味しく作るから! なぁサラン?」


 ミズキは側に居るかつて一緒に旅をしたサランに話しかける。


「そうですね……工程は気にせず料理だけを楽しむならまず美味しいです!」


「それってどういう事よ!?」


「……サラン姉の言う事は間違ってないで。慣れは必要やけど……」


 サランの言葉に普段から共に居るチサが乗っかる。


「ちょっと……急に不安になって来たんだけど……」


「大丈夫なんな! ミズキが料理で失敗する事はないんな!」


「……あるで? ……にへへ」


「キアラちゃん、それがあるらしいんだよ……。チサちゃんしか食べた事ないんだけどね」


 キアラが驚きながらチサを見ると、ニマニマと嬉しそうな表情をしている。


「シャオも食べた事ないんな!?」


「ぐぬぬ……ミズキが作る物は何でも美味しいのじゃ……」


「……にへへへ! うちだけ失敗作を食べた事あるねん」


「「ずるいのじゃ(んな)っ!」」


 三人の少女がギャアギャアと姦しく騒いでる姿を見て、何故かヒアリーが安心する。


「形はどうあれ、よっぽどの事がない限り美味しい物が出てくるのね?」


「それは大丈夫だと思います! 唐揚げとか美味しいですよ! ビッグフロッグの……」


 サランがぼそりと最後に食材名を告げると、ヒアリーの顔色が変わる。


「ミズキっ!? あんた何て物をこの子達に食べさせたのよ!?」


「ビッグフロッグかぁ! 久々に食べたいな!」


「くふふふ! あれは美味いのじゃ!」


「……うちも食べたい」


「正直言うと私ももう一度食べたいです……」


「嘘でしょうっ!? 私は食べないわよっ!?」


「まぁまぁまぁ! 新たな食材が見つかるかもしれないし頑張って調査しような!」


 ミズキがヒアリーを宥めていると、ミズキの腰元に重みがかかる。


「ん?」


 ミズキが自身の後ろを覗くと、ミズキの背中にキアラが顔をうずめている。


「……う~!」


「あらあらあら。ミズキってば女たらしねぇ?」


「あほ。キアラもいい加減慣れろって。今生の別れじゃないだろ?」


 瑞希がキアラにそう言うと、何故かシャオとチサもミズキに抱き着く。


「キアラばっかりずるいのじゃ!」


「……右に同じく!」


「お前等はこの後も一緒に行動だろ……いい加減変な目で見られるから離れろって!」


 瑞希がじたばたとするが、三人は離れようとしない。

 遠目から見ていたサランは羨ましく思うが、大人として我慢している。

 それを知ってかクルルがサランの背後に忍び寄り、瑞希に向かって押し出した。


「ええぇっ!?」


「にひひひひっ! 偶には素直になれってサランちゃん」


 瑞希が倒れ込んで来たサランを抱き止めると、サランはわたわたと体を起こそうとする。


「ごごごごっごめんなさいミズキさん!?」


「大丈夫か? クルルも悪戯ばっかしてないで料理も頑張れよ!」


「わかってるって! それより兄ちゃんそろそろ本当に離れた方が良いかも……」


 ふと気付くと、瑞希の腰元には三人の美少女達が群がり、サランを抱き止めている体勢に、周囲のもてそうにない男性冒険者達が凄い形相で睨んでいる。

 その男性冒険者達は近くに居るカインに同情の目を向けるのだが、カインは見目麗しく、おまけにグラマラスなヒアリーに先程の料理の事について迫られている最中である。

 その姿を見た男性冒険者達は、二人に向け一斉に舌打ちをするのであった――。


◇◇◇

 キアラ達と別れた瑞希達五人は、以前オーガキングを討伐した森にやって来ていた。

 特に荒れている様な事もなかったので、瑞希が腰を下ろし地図を確認する中、シャオとチサは魔法で水を出し、一息をついていた。


「なぁミズキ、やっぱりこの辺は関係ねぇんじゃねぇか?」


「ならオーガはどこから来たんだ? カイン達はウォルカから北西に向かってオークの群れを討伐してたんだよな?」


「私達が最初にオーガを見たのはここよりもさらに北西ね……この辺りかしら?」


 ヒアリーが指し示す地図は森を抜けた平原を指差していた。


「となるとこの位置よりも更に移動するのか……この川って下流はこっちか?」


「そうだ。こっちの方が標高が高い山だ。川なんて関係あんのか?」


「ここから南西に向かった山間にサランの故郷がある。その村の湖に川の水が流れ込んでるとしたら、少し気になる魔物が居るんだ」


 瑞希の言葉にシャオが反応する。


「シームカじゃな?」


「そう。サランの親父さん達が言うにはシームカなんて居なかったって話だろ? この川から流れて来たのなら……」


 瑞希は地図の川をを指差し上流へと進めて行く。


「カイン、ギルドの調査はこの辺りまでやったのか?」


「さすがに遠いからここまではやってねぇはずだ。行くのか? この辺からだと明日までかかるぞ?」


「それぐらいの距離なら行って帰って丁度三日ぐらいだし行こうか。この辺はどんな魔物が出るんだ?」


「鳥系の魔物ね。草原を抜けたら岩山地帯なのよ。すばしっこい鳥が襲って来るわ」


「後はリザードだな。キーリスの近くでもストーンワームって出ただろ? あれに似たストーンリザードなんかが出るな。後は人型のリザードマンなんかもこの辺りか」


「トカゲと鳥か~……どっちも食えそうだし肉は確保な!」


「「嘘だろ(でしょ)!?」」


 良い顔で親指を立てるミズキにカインとヒアリーが突っ込む。


「鳥は分かるけどトカゲ迄食べるつもり!?」


「肉は現地調達できると思って持ってきてないからな。途中でオークを狩るつもりだったし」


「モーム肉も持ってきてないのじゃ!?」


「それは持ってきたぞ? シャオのハンバーグ用に」


「なら良いのじゃ。くふふふ。新しい肉が楽しみじゃなチサ?」


「……きっと美味しい料理になる」


 二人の少女は嬉しそうに瑞希の作る食事を話題にする。


「ミズキっ! こんな可愛い子達に本当に食べさせるつもり!?」


「俺達は料理人だからな。食べれる物ならまず味見。不味かったらわざわざ使わないし、確かめないと分からないだろ?」


「チサはシャオの魔法の弟子でしょ!?」


「俺の料理の弟子でもあるぞ? なぁチサ?」


「……にへへへ。照れる」


 チサは瑞希に弟子だと言われ、照れ照れと頭を搔く。


「カインとヒアリーも先入観なしで食べてみたら意外に好物になるかもしれないぞ?」


「リザードなんか絶対に食べないから!」


 ヒアリーはぷいっとそっぽを向く。


「カイン達って遠征する時は何を食べてたんだ?」


「携帯食が多いな。後は鳥とか捕まえたりしたら焼いて食うし、適当に野菜を煮込んだスープなんかも多いな」


「携帯食はぱさぱさして不味いのじゃ!」


「……あれは最後の手段」


 一度携帯食を食べた事のある少女達から非難の声が上がる。


「カパ粉とかは持って行かないのか?」


「俺達は料理らしいのが出来ねぇからな。だから今回はミズキの料理を期待してんだが……」


「大丈夫大丈夫! 普段カイン達が食ってる物より絶対に美味い物作るからさ! じゃあとりあえず休憩も終わったしそろそろ行こうか!」


「絶対に美味しいのを作りなさいよ!? 絶対よ!?」


 野営の食事の事を話しながら瑞希達を乗せた馬車は走り出す。

 ヒアリーは馬車の中から食べた事のある魔物が出ないか探し続けるのであった――。

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二、三日に一度更新はするつもりですので、暫しこのペースを御了承ください。

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