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ミタスという存在

 瑞希達が城に戻って来ると城の至る所で煙が上がっているが、城に残っていた兵士達が件の魔法使い達を集め、城の片隅に捉えていた。

 瑞希がどうするべきかを悩んでいる矢先に、通路の奥からサラン達が走って来た。


「ミズキさん! 三階の奥の部屋でアンナさん達が魔法使いの男に襲われています!」


「わかったすぐ行く! チサ、マリルと一緒にサラン達を任せても良いか!? すぐに戻る!」


「……任せて!」


「マリル! こいつらの事頼むぞ!」


「わかった。わらわ達が迷惑をかけてすま……お兄ちゃぁん!」


 マリルが喋っている途中でアリベルが姿を現し瑞希に飛びつく。

 瑞希はアリベルを抱き止める。


「こんなの襲って来る奴等が間違ってんだよ。アリベル、すぐに戻って来るから少しだけマリルに任せて良いか?」


「すぐに戻って来る……?」


「戻って来る! ごたごたが済んだら美味しい物でも作るから、怖いだろうけどもう少し頑張れるか?」


「うんっ!」


 瑞希はアリベルの頭を撫でる。


「良い子だ! シャオ、行くぞ!」


「待て、妹君のシャオと言ったか、あ奴等は人を魔力で操る。虚ろな目をした者を見つけたら魔力を放出させて欲しい。其方に出来るか?」


「誰に言っておるんじゃ? そんな事造作もないのじゃ!」


 入れ替わったマリルの言葉にシャオが即答すると、瑞希はシャオと共に再び風魔法を使い跳ねる様に駆けて行った。

 残されたマリルはくすりと笑い、瑞希の背中を見送った。


「あの者が来ただけでガラリと空気が変わった気がするな……」


「ミズキとシャオは凄いんな!」


「ミズキさん達ならどうにかしてくれます!」


「其方等の顔を見ればいかにあの者が信頼されておるかわかるな。少し不便をかけるが許してたも」


 マリルは恭しく首を垂れる。

 チサは、瑞希に任された事が嬉しかったのか、気合を入れ、ショウレイを使用する。


「……ミズキが戻って来る迄うちが何とかする」


「わらわも前世程魔法を扱えんが、降りかかる火の粉は払ってくれよう。チサと言ったか、あの者は其方の知り合いか?」


 城の兵士も急な襲撃に出払っているのか、それとも、その者だけが上手い具合に網目を掻い潜って来たのか、城に入って来る。


「……知らん。けど、あれは城の人やと見た事ない服や」


「操り人か……チサよ、わらわがあれに直接触れれば無効化できる。手助けを願えるか?」


「……ん。キアラ達はじっとしててな?」


「わかったんな!」


「チサちゃん気を付けろよ!?」


「……大丈夫。シャオの方がよっぽど怖いから」


 チサはそう言い残すと、襲撃に来たであろう賊に向け氷の飛礫を放つ。

 賊はゆらゆらと揺れながら手を翳し炎の飛礫を放つ。

 互いの飛礫がぶつかり合い消えていく中、氷の飛礫が一つ命中し、賊の体がぐらつき、それを見たマリルが賊に向け走る。

 賊はチサの魔法が効いていないのか、マリルに狙いを定め、炎の飛礫を放つ。


「……魚さん魚さん、いくつもの氷壁を!」


 チサが詠唱すると、マリルの姿が隠れる様な氷の壁が次々と突き刺さり、炎の飛礫を受け止め、消し去る。

 マリルはその氷壁に隠れながらも賊に向け走り寄って行くと、なんとか体に触れ、賊の中に蠢く魔力を抜き出す。


「チサ、ご苦労であった。これでこの者は目を覚ませば元に戻るであろう」


「……戦ってて思ったんやけど、魔法を使わせ続ければ自然と無力化できるんちゃうの?」


「……その場合、この者は死ぬであろうな。この魔法の厄介なのは利用者の魔力が正真正銘空っぽになるまで利用されてしまう所にある」


「……んん? うちも何度も魔力が無くなるまで魔法使った事あるで?」


「その時は身体がそれ以上魔力が無くならぬ様に体の機能を低下させるのだ。魔法使いはその状態を魔力の枯渇と呼んでいるが、本当に魔力が無くなれば人は死んでしまう」


「……じゃあこの人もさっきのまま魔法の打ち合いをしていたら……」


「事切れていたであろうな。わらわも魔族時代の文献を読んだ事はあるが、まさか今の時代に使用者がいるとは思わなんだ……」


 二人が話し合っている中、騒ぎが収まったのを確認したキアラ達が歩み寄って来た。


「その人は大丈夫なんな?」


「問題ない。今は寝ているだけよ。それにしても城の中に兵士はおらんのか? これだけの騒ぎを起こしても、誰一人来ないのは……」


 マリルが辺りを確認していると、城の入り口から魔法が放たれる。


「……魚さん! 大きな氷壁を!」


 チサが咄嗟に魔法を使い、全員が隠れられる様な大きな氷壁を金魚から生み出す。

 氷壁に突き刺さったのは石で出来た飛礫である。

 次々と大きな氷壁に石礫が突き刺さり、氷壁に罅が入る。


「……ぐ、魚さん! 分厚く大きな……」


 チサが詠唱をしようと矢先、入口に居た新たな賊と思われる者が倒れ、後ろにはチサの見覚えがない兵士が剣を構えて立っている。


「大丈夫ですか!?」


 兵士は剣を鞘に戻し、チサ達の元に走り寄って来る。

 チサは臨戦態勢を解き、近づく兵士に歩み寄り御礼をする。


「……助かったわ。切ったん?」


「いえ! 剣の柄で気絶させました!」


 兵士は笑いながら自身の腰に差さっている剣を指差した所で、マリルが大声を出す。


「チサっ! そやつに近づくでない! 操り人が気絶するというのはおかしい!」


「……え?」


 チサはマリルの言葉に後ろを振り返ってしまい、兵士は素早くチサを取り押さえる。


「バレましたか。貴方を城に残しているとはここの領主も迂闊ですねぇ?」


「貴様……チサを離せっ!」


 じたばたと逃れようとしているチサに、兵士は魔力を込める。

 兵士がお面の様な笑みを浮かべると、ぐったりとしたチサから手を離す。


「ある程度魔力を使っていたのを見ていましたから上手く行きましたね。さぁ、貴方はあちらの雑魚共をやりなさい。私はこちらの子供の相手をします」


「チサ!? 大丈夫なんな!? 早くこっちに来るんな!」


 チサは虚ろな目をしながらキアラ達に向け手を翳すが、ぷるぷると震え、一向に魔法は放たれない。

 マリルはその姿を見て、一目散にチサの元に駆けようとするが、兵士の風魔法に阻まれる。


「おや? 貴方少し変わりましたか? 私が探していた子とは少し違う様な……」


「黙れ! そこをどくのだ!」


「私は貴方を連れ帰れば良いのですから、どけと言われればどきますよ? その代わり私について来て貰いますけどねぇ」


 兵士の男はにんまりと不気味な笑顔を浮かべる。


「――相手の魔力を探らんから不用意に近づく事になるのじゃ」


 マリルの背中から風を感じたと思った矢先に、チサの側にはシャオが居た。

 シャオはチサに触れながら兵士に向け魔法を放つ。

 チサは魔力が枯渇したのか、シャオに体を預けぐったりとしている。


「お主の気持ち悪い魔力を返すのじゃ」


 シャオは風の刃をいくつも生み出し、兵士の男を傷つける。

 兵士の男は驚きつつも再び不気味な笑みを浮かべる。


「素晴らしい! 魔力を抜き出すだけではなく返還し、魔法を放つとは! 貴方も私の元においでなさい! 魔法使いにとって素晴らしい世を一緒に作りましょう!」


「お断りなのじゃ。人を恐れさせる様な魔法を使う奴の事なぞ信用ならんのじゃ」


「私達は人よりも優れているのですよ? 数が多いだけの愚者達がのさばっているこの世の中が理不尽ではありませんか?」


 シャオは兵士の言葉を聞き、かつて魔物と呼ばれ人々に蔑まれた事を思い出す。


「……そうじゃな。わしもそう思った時があったかもしれん」


「そうでしょう! 幸い今は魔法使いの特別視もされて来ています。魔法使いにとって素晴らしい世の中を共に作ろうではありませんか!」


 兵士は大袈裟に手を広げ、シャオに言葉を向けるが、シャオはにやりと笑みを浮かべる。


「それならわしは誰でも使える魔法を世に広める手伝いをするのじゃ。わしは今そんな魔法の使い方を学んでいる所じゃ。その魔法に触れた者は皆幸せそうな顔をするのじゃ」


「話が噛み合いませんね? 貴方にとって魔法とはなんなのでしょうか?」


 シャオはクスクスと笑いながら兵士に言葉を返す。


「くふふふ。ある男の言葉を借りるのであれば、わしにとって……いや、わし等にとって魔法とは……」


「只の調理器具だよっ!」


 瑞希はマリルを飛び越え、兵士の顔面を殴り飛ばす。


「ミタスっ! 人の妹達に何してんだこの野郎!」


 殴り飛ばされたミタスに向け瑞希は怒号を放つ。

 瑞希とシャオが来た事で一同は安心感に包まれるのであった――。

いつもブクマ、評価をして頂きありがとうございます。

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諸事情で更新が遅れています。

二、三日に一度更新はするつもりですので、落ち着くまでは暫しこのペースを御了承ください。

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