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嫌な知らせ

 カインとヒアリーを知る面々は久しぶりの再会を懐かしがり、知らない面々には瑞希が二人を紹介する。

 瑞希とシャオがオーガキングを討伐したという話は聞いていたが、その話に登場する冒険者という事を知ったチサが思いの外に懐き、オーガキングの話をカインから楽しそうに聞いている。

 瑞希達四名、キアラ達三名、ミミカ達四名にリーンとカイン達二名を加えた、計十四名は、食事も中盤に差し掛かり、大人連中は酒も入り賑やかに騒いでいた。


「がっはっは! そこで俺が最後の一撃を加えたらオーガキングがバラバラになったってわけよっ!」


「……すごいっ!」


「それよりオーガキングを凍らせた瑞希の方が凄いわよっ! どうなの? 最近はちゃんと魔法を使える様になったわけ?」


「魔法はまだ使えないな~。相変わらずシャオに頼りっきりだ」


「なっさけないわね~! 早く自分の魔力を感じなさいよ!」


「そのかわりにミズキは最近剣を振ってるだろ? 肉の付き方も振る舞いも前とは少し変わったな?」


「カイン、良くわかるな? 最近テオリス城の競技会に参加してたんだよ。剣の勝負はこっちのグランに負けたけどな!」


「ふんっ! 魔法を使ったミズキに勝つまでは俺の勝ちとは言えん!」


「おぉっ! そっちの兄ちゃんは兵士か!? 良いガタイしてるとは思ったけど、俺には負けるな! がっはっは!」


 カインは冗談交じりに自らの肉体を見せつけるが、グランも黙ってはいなかった。


「誰が負けてるって?」


 グランもカインに対抗して自身の肉体を強調する。

 そしてカインも立ち上がりもう一度ポージングをし返す。


「わははは! 止めろ暑苦しいっ!」


「兄さん、座らないと唐揚げを没収するぞ?」


「ぐぬぬ……わかった」


 アンナが声を掛けた事により、グランはストンと椅子に腰を下ろし、食事を続ける。


「くふふ。グランの弱さは妹なのじゃ」


「それを言ったらミズキの強さも妹なんなっ!」


「くふふふ。怒ったミズキは怖いのじゃ!」


 シャオの言葉に瑞希の怒った姿を知っている者が頷く。

 クルルは瑞希が怒るという事を想像できないため困惑している。


「え? え? 兄ちゃんが怒るの?」


「グランもシャオちゃんの手を払った時に問答無用でミズキ様に気絶させられたわよね?」


「あ、あれは不意を突かれたからですっ!」


「でも、ゴブリンメイジを斬った時もミズキ様はすっごく怒ってたのよ?」


「くふふ! 瑞希は心配性なのじゃ!」


「グランだってアンナが傷ついたら怒るよな? 身内が傷つけられたら誰でも怒るって!」


「当たり前だっ! アンナに傷を付けたらただじゃおかんっ!」


「ほらな? 誰だって妹は可愛いもんさ!」


「シャオは守ってくれるミズキが居て良いんなぁ?」


「くふふふ! わしもミズキを守るのじゃ!」


 瑞希とシャオの惚気を聞いていたヒアリーが呆れながら酒を口にする。


「あんた達は本当に仲良しね?」


「そういうヒアリーだってカインと仲良くやってるんな!」


「こ、こいつとは腐れ縁ってだけよっ!」


「顔が赤くなってるんな~?」


「お酒を飲んでるんだから当たり前じゃないっ! それよりミズキっ! 今日は甘い物は無いの!?」

 

 ヒアリーはやや強引に話を脱線させる。

 瑞希は鞄の中からチョコレートを取り出す。


「今日は甘い物は無いからこれはどうだ? 新作の甘い物で、チョコレートって言うんだけど、キツ目の酒にも合うぞ?」


 瑞希はポイっとヒアリーに何個かチョコレートを投げると、ヒアリーは包み紙を開けチョコレートを取り出し口に運ぶ。


「――っ!? ミズキっ! あんた何て物を作ってんのよ!? もっと頂戴よっ!?」


「わははは! 独り占めは良くないぞヒアリー? ほら、キアラ達にも分けてやるから。鞄にでも仕舞っときな? 早くしないとあっちの怖いお姉さんが奪いに来るぞ?」


 瑞希は鞄からチョコレートを取り出し、全員に配る。

 大事に取って置く者、その場で食べる者、様々な反応をしながらチョコレートを受け取って行く。


「全く……ミズキは早く自分の店を出せば良いのよ!」


「そこまでの金はまだ無いって! それにこの祭りが終わったらまた旅に出たいしな!」


 瑞希の言葉に一部の者が固まる。


「あら? 次はどこに行くのかしら?」


「俺はドマルに付いて行くだけだしな! ドマル、次の予定はどこなんだ?」


「まだ決めてないけど、次は南に行っても良いかもね! ボアグリカ地方はお酒が有名だし、調理用の油も色々あるんだ! 主食なんかはカパだけど、面白い食材もあるしね! 後は鉱石が有名だからアクセサリーなんかも有名だね。髪飾りなんかも色々あるよ?」


「おぉ~! じゃあシャオに似合う髪飾りを買わなきゃな!」


「べ、別にいらんのじゃ!」


「え~? 俺はシャオが着けた所を見たいけどな~?」


「ふ、ふんっ! 勝手に着けたら良いのじゃっ!」


 瑞希はドマルと顔を見合わせくすくすと笑っているが、固まっていた者達が徐々に落ち込み始める。


「ま、また……ミズキ様達と暫く会えないんですね……」


「寂しいんなぁ……」


「そうは言ってもまた戻って来るぞ? こっちで取れるペムイも気になるしな!」


「……でもそれが取れるの来年やで? 下手したら一年目は種もみだけで、収穫できるのは二年目からや」


 チサの言葉にミミカとキアラが過剰に反応する。


「に、二年間も戻って来ないんですかっ!?」


「それは寂しすぎるんなっ!」


「あははは! そんな事ないよ! 僕は行商人だからね。ボアグリカで仕入れたらまた別の場所で売らなきゃいけないし、すぐ戻って来るとは言えないけど、そんなに長くいるつもりもないから」


 ドマルは苦笑しながら二人を宥めた。

 その言葉にほっとしたミミカとキアラだが、ヒアリーが別の話題を持ちかける。


「それよりミズキ、あんた達街中で魔法を使ってないわよね?」


「ん? シャオが屋台の中では調理に使ってるけど、俺達は詠唱もしないし、人にはバレてないんじゃないか? あ、でもチサがショウレイを使って魔法を使うタイプだから、キアラの屋台で洗い物を手伝わせた時に見られてるかも……」


 ヒアリーはぎょっとしながらチサを眺める。

 チサは何か不味い事をしたのかとそわそわし始めた。


「……え? え? 何かあかんかった?」


「いえ、驚かせてごめんなさい。ショウレイを使う魔法使いなんて会った事もないから驚いたのよ……ミズキの周りには凄い才能が集まるわね?」


「そうか? 才能ってよりも努力してる人が集まってるんじゃないか? チサもシャオから猛特訓させられてるし、ドマルだって商売で苦渋を舐めて来てるだろ? 俺だってそうだし、キアラやミミカ達だって俺と初めて会った時より成長してるもんな?」


 瑞希の言葉を告げられた面々は少し照れ、謙遜しながら返事をした。

 ヒアリーは瑞希の魔法の使い方に呆れながらも、瑞希らしいと思い微笑む。


「調理に洗い物って……あんたって本当に変わってるわ……」


「知り合いの人にも言ったけど、俺に取ったら魔法は便利な調理器具だよ」


「でも気を付けなさいよ? こういう人が集まる時に魔法を使える小さな子は攫われるのよ?」


「物騒な話だな? 何でわざわざ攫うんだよ?」


「子供の魔法使いってそこまで多い訳じゃないのよ。それに、盗賊からしても自由に火や水が出せるなんて物凄く便利でしょ? ドマルだって旅をしてる時にそれは感じるでしょ?」


 ドマルはシャオの魔法を当てにして馬車の積載量を軽くするため生活用水を馬車から抜いているので、嫌でも納得せざるを得ない。


「そうだね……でも子供でも魔法使いなら抵抗は出来るんじゃないの?」


「シャオみたいな子供なら抵抗どころか逆に捕まえるでしょうけど、こっちのチサみたいな子に咄嗟に判断するとか、魔力を練り上げられると思う? 魔法使いは基本的に近づかれたら無力よ」


「……むぅ……できるもん」


「ふくれっ面をしても駄目よ。魔法使いは経験を重ねて魔法を使う事に慣れるの。幸いチサはシャオに教えて貰ってるんだから大丈夫よ。私が保証するわ」


 ヒアリーの言葉にシャオが得意気な顔をする。

 その顔を見たチサは少し誇らしくなり、チサも得意気な表情で笑う。


「……にへへへ」


 瑞希はシャオとチサの顔を見ながら、少し考えていた。


「……グラン、今日屋台で絡んできた奴等はそういう人攫いみたいな事はしてないよな?」


「あいつらは昔からいる雑魚だ。そんな大それた犯罪はしてないはずだ。何故そんな事を聞くんだ?」


「いや、やけにしつこく絡んで来てたから、どこかで俺達の魔法を見ていて、シャオかチサが魔法を使うのを確認しようとしてたんじゃないかと思ってな? でもまぁ考えすぎか……けど用心するに越した事はないから、二人も気を付けろよ? グラン、ミミカはちゃんと守れよ?」


「当たり前だ! それが俺の仕事だからな!」


「キアラ達も魔法使いじゃないけど、何かあったらすぐにこっちの屋台に来いよ?」


「あはっ! わかったんなっ! 頼りにしてるんなっ!」


「とりあえず明日の屋台は洗い物も出ないし、チサは魔法を人前で使わない様にな? シャオは俺が使ってる様に見せれるから大丈夫だろ」


「……わかった」


「じゃあ心配事はこれぐらいにして……もう少し飲むか!」


 瑞希はそう告げ、ルク酒の入った瓶を手に持とうとするが、シャオに取り上げられる。


「お酒は程々にするのじゃっ! 明日も屋台があるのじゃっ!」


「えぇ~もう一杯だけ良いだろ?」


「駄目じゃっ! 飲み過ぎてわしのブラッシングが無くなるのは許せんのじゃっ!」


「がっはっは! ミズキも相変わらず妹の尻に敷かれてるな?」


「シャオ~……」


 シャオは舌を出し、瑞希が伸ばす手を躱す。

 先程迄の凛々しかった瑞希はどこに行ったのか、情けない声でシャオを呼ぶ。

 皆、それが可笑しかったのか、つい笑ってしまい、再び打ち上げが明るく盛り上がるのであった――。

いつもブクマ、評価をして頂きありがとうございます。

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