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ツナマヨと佃煮

 試合会場となる場所は、二階席から見下ろせる形になっており、その会場の中心で瑞希がロベルを相手に、剣を振るう。

 シャオとチサはというと、シャオが氷をふわふわと何個も浮かべ、チサは魔法で作ったいつもの金魚でシャオが放つ氷に対して水球を当て、迎撃していく。

 シャオもチサの視覚に入りやすい位置の氷を囮に使うなどして、視線を誘導し、死角からチサの首元に氷を当てると……。


「……冷たいっ!」


「これでチサは十回は傷を負ったのじゃ。これではすぐに触られてしまうのじゃ」


「……そんなん言われても見えへんもん!」


「そうじゃな……」


 シャオは瑞希の背中に風球を放つと、瑞希は違和感を感じたのか、ロベルに詰め寄りながら風球を避ける。


「……たまたまやろ?」


 瑞希とロベルが離れたタイミングを見計らい、シャオが再び風球を瑞希に放つと、瑞希は木剣で風球を弾いた。


「……何でミズキにはわかるん?」


「あやつはなんだかんだ人の魔力は感覚的に分かってるようじゃの。ほれ、この前の夜食でうどんを食べてた時もミミカとドマルに声を掛けてたじゃろ?」


「……そう言えば……」


「視覚だけに頼っておると、チサの様に誘導されてしまうのじゃ。とりあえずは細かく魔法も使える様になって来ておるから、そこは合格点じゃな」


「……にへへへ」


 チサはシャオに褒められ照れ臭そうにしていると、瑞希は何も無い所に剣を身構えてしまい、その隙をロベルに打ち込まれ倒れる。


「……またシャオが何かしたん?」


「あれはロベルの技じゃな……とりあえず腹も空いたし、そろそろ休憩にするのじゃ」


 シャオが倒れている瑞希に駆け寄り、瑞希はシャオの手を握ると、回復魔法を自身に掛ける。


「はぁ~……ロベルさん今なんかしたでしょ?」


「ほほほっ! 中々打ち込めなかったので、ちょっとした技を使いました」


「いつになったらロベルさんから一本取れるのやら……」


「ミズキっ! お腹が空いたのじゃっ!」


「もうそんな時間か? ロベルさん、一旦休憩にして貰っても大丈夫ですか?」


「構いませんぞ!」


 瑞希は立ち上がると、置いていた荷物の中からムルの葉に包まれた弁当を取り出すと、シャオ達に配る。


「私まで頂いても宜しいのですか?」


「もちろんっ! 稽古をつけて貰ってるんですから当然ですよ! 中身はペムイを使った簡単な料理ですけどね。チサ、こっちのコップに水を入れてくれるか?」


「……任せて!」


 チサがふわふわと浮かべた金魚にお願いの様な詠唱をして、金魚の口から水をちょろちょろとコップに注ぐ。


「絵面がひどい……」


 普段はシャオの魔法で空中から現れる水をコップで受け止めるので気にしてなかったが、金魚の口から出て来るのを見ると少しげんなりした様子の瑞希に、ロベルが水を飲み、語る。


「魔法で出来た水を飲むのは久しぶりですな」


「経験があるんですか?」


「昔はこの城にも魔法使いは居りましたからな。遠征中等は魔法を使っておりました」


「便利ですよね~……「ミズキ様ぁっ!」」


 瑞希は、瑞希を呼ぶ声に振り向くと、入口の方からミミカが片手に弁当を持ち、大きく手を振り走り寄って来た。

 アンナとジーニャも朝に渡した弁当を片手に歩いて来る。


「お待たせしましたっ! 今からお昼御飯ですか?」


「本当に来たのか。テミルさんは怒ってないのか?」


「大丈夫ですっ! お昼からは私もテミルとの魔法の訓練ですので、場所をここにして貰いましたっ!」


「そうかそうか。じゃあ俺達も今から食べるから一緒に食べようか! シャオ、ちょっとお手を拝借……」


 瑞希はシャオと手を繋ぎ、各々の前に小さな水球を浮かべる。


「手洗い用の水球だからこれで手を洗ってくれ。今日の弁当は手掴みで食べるからな」


「なんか魔法で手を洗うのも久々っすね!」


「野営の時を思い出すな……」


 各々はバシャバシャと手を洗い、瑞希は皆が手を洗い終えた水玉を纏めてから消してしまう。

 手を洗い終えたシャオとチサは我先にとムルの葉を縛っていた紐を解き、瑞希の握ったおむすびと卵焼きの姿を露わにする。


「「いただきまぁす(なのじゃ)!」」


「うちも頂くっす!」


「私も頂きまぁす!」


「ミズキ殿頂きます」


 瑞希達と食事をした事のある面々は手を合わせ言葉を発する。

 シャオは一番手前にあったおむすびを手に取り、大きく口を開けて齧り付く。


「むふぅ! 中から魚とまよねーずを和えたのが出て来たのじゃ!」


「……こっちは甘辛く味付けしたマク(昆布)が入ってる……美味っ。やっぱりペムイは偉大」


「ツナマヨもどきとマクの佃煮だな。ペムイにも合うマヨネーズって凄いだろ?」


 瑞希の言葉にシャオが頷き、ツナマヨおむすびを食べたジーニャが固まっている。


「まよねーずを使った料理……」


「ジーニャ、思わぬ所で食べれたな?」


「どうかしたのか?」


「いえ、ジーニャが以前まよねーずを使ったミズキ殿の料理が食べたいと言っていたので、思わぬ形で食べれたと思いまして」


「なんか複雑っす! でも美味しいっす!」


「マヨネーズは美味いからな~。何にでも使えるしな! 生野菜につけても美味いし、グムグムと混ぜても美味い。炒め物の油代わりに使っても美味いぞ?」


「全部今度食べさせて欲しいっす!」


「じゃあ今度ジーニャに何か料理を作る時はマヨネーズを使った料理にするか……」


「楽しみにしてるっす!」


 ジーニャは嬉しそうに笑いながらツナマヨおむすびに齧り付く。


「ミズキ様、ペムイを押し固めたこの料理にも名前はあるんですか?」


「あるぞ? これはおむすびって言うんだけど、中の具はぶっちゃけ何でもいいんだ。ペムイを使ってこの形にする事が大事だな。おにぎりとも言うけど、俺の中では、海苔が無くて三角形の形をしているのがおむすびで、海苔で巻いたり違う形をしてるのをおにぎりって言うんだ」


「へぇ~……海苔? が、何かはわかりませんが、ペムイに合う物なら何を入れても良いんですか?」


「何を入れても良い。卵焼きを入れても、唐揚げを入れても、糠漬けを入れてもな。こういう定番の具もあるけど、作る人の独創性が現れる。美味けりゃ何を入れても正解だ!」


「確かにこの卵焼きはペムイに合いますね!」


 ミミカは右手に具無しおむすびを、左手に卵焼きを持って交互に口に入れる。


「ほほほ! ミズキ様の料理は簡単そうに見える物でも確かに美味いですな!」


「誰でも慣れたら作れますよ! シャオだって最近は料理上手になってきたもんな?」


「くふふふ。はんばーぐとおむれつなら任せるのじゃっ!」


「米粒を口に付けた奴に任せられないけどなっ!」


 瑞希は笑いながらシャオの顔に付いた米粒を取り、食べる。

 チサもシャオを子供みたいだと笑い、賑やかな昼休憩は過ぎていくのであった――。

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