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閑話 チサの寝室

 うちは旅の道中にシャオの事を聞いてたけど、猫の姿を初めて見たクルルは驚きながらも恐る恐る手を伸ばし、触り始めるとその毛並みの気持ち良さに悶えながら触り続けていた。

 あまりにもクルルが触るから、シャオも嫌になったのかシャーっと怒り出して人間の姿になり、キアラの側に行った。


「ごめんってシャオちゃん!」


「もう触るでないのじゃ! 今日はまだ寝る前のブラッシングもして貰ってないのじゃから!」


「シャオ、ブラッシングなら私がやってあげるんな!」


「良いのじゃ。後でミズキの部屋に行ってして貰うのじゃ」


「……ミズキは今親父さん達と酒飲んどるで?」


「飲み過ぎたらブラッシングをして貰えんのじゃ……」


「だから私がやってやるんな。こっちに頭を向けるんな?」


「ぐぬぬ……」


 シャオはキアラに背を向け、キアラの櫛で髪を梳いて貰う。

 シャオは気持ち良さそうにしているがどこか物足りなそうな顔もしている。


「シャオ、ミズキのとどっちが気持ち良いんな?」


「ミズキじゃ」


「……即答やな」


「ミズキはわしの気持ち良い場所を的確に狙って、合わして来るのじゃ」


「兄ちゃんって凄いんだな?」


 何気ないクルルの一言にうちも即答で返してしまう。


「くふふ。ミズキは凄いのじゃ!」


「ミズキは凄いんな~」


「……ミズキは凄い」


「え? 何だよその団結……じゃあ兄ちゃんの凄い所を順に教えてくれよ!」


 ミズキの凄い所……。


「「「料理!」」」


「それは知ってるって! 他の所は?」


 ミズキの料理以外で凄い所……いっぱいあるけど……。


「ブラッシングと撫でるのが上手いのじゃ!」


 確かに旅の途中でやって貰ったけど、あれは気持ちいいねんな。


「髪の毛を可愛らしくしてくれるんな!」


 あ、そう言えばこの髪形も好きやわ。


「チサは何かないのかよ?」


「……人を助ける所」


 ミズキに助けて貰ったからという訳やなくて、今日一緒に御飯を食べた人は皆助けて貰った人やもんな。


「くふふ。ミズキはお人好しなのじゃ」


「この街もミズキに助けられたんな!」


「オーガの話だよな? 料理をしてる兄ちゃんからは想像できないんだけどな」


「……ミズキは強い」


「あやつは器用なのじゃ! 一つの事をやりながら別の事を考えてるのじゃ!」


「そういやサランちゃんもそんな感じで仕事してたな~?」


「……サラン姉が?」


 サラン姉はミズキにいじられてた記憶しかないけど……そういえばサラン姉はふとした時に手を差し伸べてくれてた様な気がする。


「サランは人を見るのが上手いんな! 皿を下げたり、水を足したりする時に会話の邪魔にならない様に、お代わりが欲しそうな人に声を掛けたりしてたんな!」


「サラン本人は気付いてないのじゃが、ミズキに色々とやらされておったからの。人を見る癖がついたんじゃろ。ほれ、最後にカエラの執事について仕事をしておったじゃろ? ミズキから聞けば執事は仕える人を見るのが仕事だから勉強になるんだと言っておったのじゃ」


「……サラン姉は痒い所に手が届く感じやな」


「あ~そんな感じかも! サランちゃんも兄ちゃんと旅して色々吸収してきたんだな~……チサはこれからも兄ちゃん達と一緒にいるんだろ?」


「……ん。まだまだシャオにもミズキにも教えて欲しい事は一杯ある」


「チサは兄ちゃんにどんな事を習ってるんだ?」


「……食事の栄養の事を教えて貰ってる。それにペムイの料理も教えて欲しいし、トーチャを使ったジャルも気になるし、ミズキが道中で言ってたみそっていう調味料の話も気になる。甘い物の作り方も覚えたいし、ミズキの魔法の使い方も教えて欲しいし……」


 指折り数えながら羅列してたら、ふと視線を感じたので顔を上げると、三人がうちを見てる。


「……どしたん?」


「いや、チサってそんなに喋るんだなって思って……」


「くふふふ。チサは熱中したり、心配したりする時は言葉数が増えるのじゃ」


「チサは楽しそうなんな~? 十二歳で親元を離れて寂しくないんな?」


「……ミズキとシャオ、ドマルとモモもいるから大丈夫や」


 おとんはちゃんと食べてるやろか? 糠床もちゃんとかき混ぜとるかな?

 隣のおばちゃんには様子見る様に言っといたけど、大丈夫かな……。


「……あかん。何か心配になって来た。糠床大丈夫やろか」


「あははは! 寂しさはなさそうだな!」


「チサは心配性なんな。そういえばシャオ達は今月の祭りはどうするんな?」


「何の事じゃ?」


「知らんのな? 今月の終わりに収穫祭があるんな! 名産であるモームや衣料に感謝する、キーリスの大きなお祭りなんな! ミミカからは聞いてないんな?」


「知らんのじゃ。その祭りがわし等に何の関係があるのじゃ?」


「届け出を出せば屋台の出店ができるんな! 私達はそのお祭りでキーリスにカレーを売り込みに行くんな!」


「ミズキが知ったらやりたがりそうな話じゃな」


「シャオ達も一緒に出すんな! 賑やかで楽しいんな!」


「それはミズキが決めるのじゃ。わしはどっちでも良いのじゃ」


「え~。チサは兄ちゃんと出たいよな?」


「……ミズキがやるなら手伝う」


「二人共覇気がないんな~。次の仕事は決まってないんな?」


「知らんのじゃ。どこに行こうともわしはミズキに付いて行くだけなのじゃ」


「……うちも……二人に……ついて……く」


 あかん。眠くなって来た。

 あんまり話が頭に入ってこうへん。


「チサは二人が好きなんな~」


 好き? 誰を? ミズキかな? シャオかな?

 あんまり聞き取れへんかったけど、とりあえず答えとかな……。


「……にへへ。うちはミズキもシャオも大好き……や」


「くふふふ。寝惚けながら――」


 ふわふわした感覚の中で、ミズキとシャオが歩いてる後ろを付いて行く。

 二人は仲が良さそうにしてるけど、時折振り返ってはうちを待ってくれる。

 二人に追いついたらうちはミズキの空いている手を握る。

 シャオが怒るけど、うちも握りたいんやからしょうがないやん。

 シャオはミズキによじ登って肩車をして貰うと、上からどうだと言わんばかりに誇らしい顔でうちを見て来る。

 ミズキが困った顔をするけど、シャオは嬉しそうに尻尾を揺らしてる。

 にへへへ。うちはやっぱりミズキもシャオも大好きやわ――。


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