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閑話 サランの寝室

 食事を終えた各々は当初予定していた部屋割りで二手に別れ、就寝のためベッドに潜り込む。

 大人部屋にはミミカ、アンナ、ジーニャ、そしてサランが。

 子供部屋にはシャオ、キアラ、チサ、クルルが、ベッドに横たわり、そのまま明日の移動のため体を休ませる……訳がなく、サランは他の三人から、シャオとチサはキアラとクルルから質問攻めを受けていた。


◇◇◇


 ここは大人部屋。

 何故か私は領主の娘で、貴族であるミミカ様と同じ部屋での割り当てになった。

 粗相をしたら死刑とかにならないかな……大丈夫だよね? ミズキさんの教え子だもんね?


「ところでサラン様……」


「ひ、ひゃい! サランで構いませんよ!?」


「そう固くならないで下さい! 今夜は領主の娘ではなく、ミズキ様の弟子として扱って頂いて構いませんから。アンナとジーニャも楽にしてね?」


「もうしてるっす。お布団が気持ち良いっす」


「お前、それは気を抜きすぎだろ? 最低限の気は張っておけよ?」


「アンナこそその絵ばっか見てないで気を張るっすよ?」


「み、見ながらも気は張っている!」


 ミズキさんが絵をかけるって知らなかったな……さっきチサちゃんに見せて貰ったけど、簡素な絵なのに特徴を捉えてるから本人ってわかるんだよね。


「サランも旅の道中にミズキさんに書いて貰ったんすか?」


「私は書いて貰ってないですね~、ミズキさんが絵を描けるのも初めて知りました」


「じゃ、じゃあミズキ様には何を教えて貰ってたの!?」


「えぇ~っと……食材とか、栄養とか、配膳の仕方とかですね。私は明日からキアラちゃんのお店で働くのですが、店で起こる色々な状況の真似事をミズキさんとやってました。ミズキさんはろーぷれって言ってましたけど、子供の時にやるお店屋さんごっこみたいな感じでしたね」


「えぇ~良いなぁ~私もミズキ様とやってみた~い!」


「ミズキさんは結構むちゃくちゃな要求もしますよ? 水に虫が入ってた、どうしてくれるんだ~とか、この皿は注文と違う~とか……後は、お姉ちゃんこの後暇だろ? 遊びに行こう~とか」


「そ、それはミズキ殿がサラン殿を誘っているのか!?」


「あ、いえいえ! そうではなくて、もしもそういう状況になったらどうするか、というのを想定しておく訓練なんです。ミズキさんは客にへりくだる必要は無いって言ってて、お客さんはお金を払ってその店の料理が食べたい、店は料理を食べて貰ってお金を稼ぎたい。両者の関係は持ちつ持たれつ半々であるべきだって教えられました。その訓練では色々な状況を想定しておいて、その時にどういう対応をするかっていうのを練習しておくんです」


「あ~……だからミズキさんってお嬢に対しても扱いが普通なんすかね?」


 確かにミズキさんはミミカ様に対して一人の女性として扱ってるみたいだけど、普通に考えたら無礼だよね。


「それがミズキ様の良い所だわ! 私の家じゃなくて、私を見て接してくれてるもの!」


 ミミカ様が嬉しそうに話してるけど、少し気になった事がある。


「あの~……普通ミミカ様にデコピンなんかしたらどうなるんですか?」


 気になった私はアンナさんに質問をしてみた。


「ん? まぁ死刑は無くても牢獄には入って貰うな」


「えぇ!? じゃ、じゃあミズキさんも!?」


「ミズキ殿は大丈夫だ。そんな事をしたらミミカ様が怒りだす」


「そうよ! あれはミズキ様が私を止めるためにした事だもの。……できればもうちょっと優しく止めてほしかったけど……」


「あれはお嬢が悪いっす」


「元はと言えばサランがミズキ様と……その……抱き合ってた様に見えたから……」


「だ、抱き合ってなんかないです! あれはミズキさんがこけそうになった私を支えてくれただけですから!」


 私は首を振りながら必死に否定した。


「旅の道中もそういう事はなかったの?」


「無いですよっ!? ミズキさんは私をからかったりはしますけど、そんな事は一切無かったです!」


「そ、それなら良かったわ! サランはどういう経緯で一緒に旅をする事になったの?」


 私はミミカ様達に事の経緯を説明する――。


「――とまぁ、そこでミズキさんの技術を教えて欲しくなった訳です」


「へぇ~! ミズキ様って接客も出来るんだ!?」


「すっごいやりやすかったんですよ! ミズキさんと一緒に仕事をすると知らない私が知れたというか……こんなに楽しかったんだって思えたというか……この人ともっと一緒に働いてみたいなって思えたんです!」


「うぅ~……私もミズキ様と一緒に働いてみたいぃ!」


「お嬢……それは無理っすよ……」


「何でよ~!」


「ミミカ様は貴族ですから……ここに泊ってる事もバレたら大事になりますよ?」


「でもミズキ様達と別の宿に泊まるなんて寂しいじゃない! それにお父様だってきっと許してくれるわ」


「バラン様は大丈夫っすけど、テミルさんは怒るっすよ……」


 あわあわと狼狽えるミミカ様を見ていると、プッと噴き出してしまった。


「もう~! サランってば笑ったわね!?」


「だって私、貴族の方がこんなにも可愛らしい方だなんて思ってなかったんですよ」


「お嬢は特別っす! 他の貴族の方はもっとおとなしいっすよ」


 ジーニャさんの言葉にアンナさんも思わず頷いているのがまた可笑しくて、再び笑ってしまう。


「もう~! 皆して馬鹿にしてっ!」


「馬鹿にはしてないですよ。ただ貴族の方ってもっとふんぞり返ってるんだと思ってました。私がこの部屋で一緒に寝るって聞いた時は何をされるのかとびくびくしてましたよ?」


「何にもしないわよ! サランには旅の話が聞きたかったの! ねぇねぇ旅ではどんな料理を作って貰ったの? 美味しかった? ミーテルには何があったの?」


「そうですね~……」

 ミミカ様が矢継ぎ早に質問をするのがまた可笑しくて、私は寝るまでミミカ様達とお話をした。

 ミズキさんと出会ってからすごい経験ばかりして来たけど、それも今日で終わりなんだと思うと寂しさを感じる。

 ミズキさんは気付いてないかもしれないけど、ここの部屋の人は皆ミズキさんが好きなんだろうな。

 罪作りな人だと思いながらも、仕方ないとも思う。

 だってミズキさんは誰に対しても平等に、そして優しく接してくれるから。

 次に会った時はキアラちゃんやクルルちゃんと一緒に、成長した姿を見せられたら良いな――。

いつもブクマ、評価をして頂きありがとうございます。

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